Column

浦和学院を24年間支えた指揮官が城西大城西へ 伝え続ける強者に必要なメンタル

2024.07.02


選手たちへ指導する城西大城西・安保監督

今大会シード校として夏の甲子園を狙う城西大城西。2023年の夏は、東東京大会でベスト4進出を果たすと、新チームになっても、秋と春はともに東京都大会ベスト16入り。安定した勝ち上がりをみせる実力校・城西大城西に今回訪問した。

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真剣勝負を楽しむ

普段は荒川の河川敷にある専用グラウンドで練習をしており、取材当日は主力と控え組で分かれて、各選手が夏に向けて精を出していた。

厳しい練習の中でも選手たちの表情はどこか充実しているように見える。
その理由を安保隆示監督が教えてくれた。安保監督といえば、浦和学院ではコーチとして2013年のセンバツ優勝に携わるなど、24年間、浦和学院で部長やコーチとして支えてきた。そんな安保監督は言う。

城西大城西の練習模様

「真剣勝負を楽しむことが一番だと思っています。大人になってからやる草野球みたいに野球を純粋に楽しむだけではなくて、勝負を楽しんでほしいんですよね。
どうしても日本人の性格は真面目だったり、完璧主義だったりするので、『失敗したらどうしよう』って先のことを考えちゃいますよね。けどそればかり考えていたら楽しくないし、プレーが縮こまってしまいます。だから、真剣勝負を楽しんでほしいんです。
逆に、そういったシーンが見えた時は『ああ、こいつらヤバいかも』っていうのが浦和学院でも指導をしていて感じていました。ここでも、実際、昨年の秋と春を振り返ってみたら、選手たちは勝負を楽しめていなかったように見えます。『負けちゃいけない』とか考えながらやっていたから、結果が出なかったと反省しています」

主将である両角尚樹に話を聞いても、「去年の先輩方も、夏の大会を勝ち上がるにつれて楽しんでやっている姿を見ていて、すごくうらやましかった」と先輩たちの姿を通じて、真剣勝負を楽しむ重要性を感じ取っているようだった。

切り替えて目の前のプレーに集中する

浦和学院時代に指導者として携わる中で、真剣勝負を楽しむことの大切さを学んだ安保監督。と同時に、切り替えることが大切であることを強く訴える。

「例えば試合でエラーしました、三振しました、とかミスしたことって、すぐに過去になりますよね。もちろん試合が終われば反省すべきですけど、試合中は『もうミスしちゃいけない』とか『負けたくない』とか引きずっている場合ではないんですよ。真剣勝負は続いているわけですし、切り替えないと真剣勝負は楽しめない。もしかしたら、そこがきっかけで試合に勝てないこともあると思うんです。だから『勝ちたいんだったらやれよ』って、目の前のことに集中して切り替えて欲しいんです。
そのためにも反省する時は、『おまえのせいだ』とかを私も、選手も言うことはなしにしています。負けた責任は私にあるので、選手たちは敗因を追究することをして欲しい。だって野球はチームスポーツなわけで、個人のせいにしても、試合にはチームで負けているんで」

城西大城西の練習模様

真剣勝負との関わりに触れながら、切り替えることの大切さを訴える安保監督。真剣勝負と切り替えは、セットで大切な要素だということだろうが、そこに付随するピースが考えることだという。

「選手は機械にならずに、考えてプレーして欲しいんですよね。勝ちたいから、『じゃあ今後どうするの』って考えて反省するし、グラウンドでプレーをする。そうやって感情を持つから、グラウンドでプレーしていて気付くことがあるはずです。
そうやっていくと、次第に自立心が芽生えることにもつながると思っています。だから、自分の意思を持つことは、選手たちにやってほしいです」

切磋琢磨し合って、夏の上位を狙う

こうした意識を根付かせるのは、時間がかかることだが、「森監督にも『とにかく根気強くだよ』と選手たちを変えようと、伝え続けることを教わりました」と名将から学んだことを胸に、安保監督は日々選手たちと向き合っている。

これには主将・両角も、「たとえ試合で良い雰囲気が出来ていても、流れに乗るのではなく、切り替えてプレーしていくことを指導してもらっています」と話す。

そんな城西大城西だが、このオフシーズンは攻守ともに練習量をこなしてチーム全体のレベルアップを図ってきた。
その成果もあり、春季東京都大会では、2回戦・淑徳、3回戦・東京実と順調に勝ち上がった。夏の大会のシードを獲得し、さらなる上位進出を目指した矢先。4回戦で國學院久我山に5対12で敗れた。

この敗戦には「ピッチャーがリズムを作れず、打線も援護できなかったので、夏に向けてもう少し上げていかないと勝てない」と両角主将のなかでも強豪との差を痛感していた。

城西大城西・両角尚樹主将

とはいえ、夏の大会はシードで迎える。前回は東東京大会でベスト4で終わり、悔しさを残した。その借りを返す戦いになる。安保監督は、「去年の夏、ベスト4の経験ができたのは大きな財産だと思います。良い刺激になりました。だからまだ覚悟みたいなものはないですが、去年も春季大会で東海大菅生に負けて変わってきたので、今年も國學院久我山の敗戦をきっかけに、もっと変わってくれることを楽しみにしながら戦いたいと思います」

両角主将は「仲間同士で競い合って、夏の大会まで全体のレベルを上げていきたいです」と夏に向けて士気を高めている。東東京でも上位進出することが増えはじめ、強豪の仲間入りまであと一歩といったところまできた。この夏、再び躍進を見せて東東京の勢力図を変えるか。城西大城西の見せる野球に注目したい。

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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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