試合レポート

福泉vs布施

2013.07.12

部員14人の福泉が3時間11分の熱戦を制す

夏の日差しが照りつける中、先制したのは部員14人の福泉だった。
初回、1番・幸野裕樹がレフトオーバーのスリーベースヒットを放つと2番・西田の内野ゴロの間に生還。
先手を取った福泉だったが、次のチャンスは布施に訪れる。2回、先頭の4番・竹内がセンター前ヒットを放つと続く5番・高山の打球を福泉のファースト・野口がエラーし無死一、二塁。6番・村岡は打球の勢いを殺した上手いバントをファースト方向へ転がす。先ほどのエラーを取り返さんとする野口は猛チャージをかけたが、ランナーのスタートも良くそれぞれ進塁、一死二、三塁となった。一打逆転のピンチを背負った福泉先発・中澤だったが後続をセカンドゴロに打ち取り得点は許さなかった。3回、4回は中澤と布施先発・村岡が互いに粘りのピッチングを見せる。福泉は盗塁を絡めて、布施は連打でランナーを得点圏に進めるが互いにあと1本が出ない。

 動きそうで動かない試合は、5回に大きく布施に傾く。
5回表、一死二、三塁で上位打線を迎えるというピンチを切り抜けるとその裏、9番・河原のヒットを足がかりに、一死三塁としキャプテン・山田尚のタイムリー内野安打で同点に追いつく。山田尚は盗塁と3番・野崎の外野フライで三塁に進むと、4番・竹内のフォアボールで一、三塁とした後、5番・高山のライト前ヒットで勝ち越しのホームを踏む。さらに5回1失点と試合を作っていた6番・村岡がレフトオーバーのタイムリーツーベースヒットで二者を迎え入れ4対1と逆転に成功した。


 リードする展開が一転、3点を追いかける形となった福泉、もう一度流れをつかみたい6回の攻撃は4番・早川から始まった。
 3ボールからフルカウントとなったが低めのボールを見極めてフォアボールで出塁。続く5番・西端も2ボールとボールが先行する。一気に攻めたい場面だったが西端、野口が連続三振に倒れてしまう。それでも中澤、高浦の連打で1点を返すと幸野裕哉のファーストゴロが相手のタイムリーエラーを誘い1点差に迫る。得点した直後、大事な6回裏を中澤が三者凡退に抑えると、7回表は1番からの好打順。幸野裕樹がフォアボールで出塁すると2番・西田の打席でこの日3つ目の盗塁を決める。西田もデッドボールで歩くと、3番・上谷の打席で幸野裕樹がモーションを完全に盗み、楽々三盗を成功させた。足の揺さぶりが効いたのか上谷もフォアボールで無死満塁。一死後、西端のライト前タイムリーヒットで同点に追いつくと、6番・野口のレフト前ヒットで西田、上谷が生還し2点を勝ち越し。勝利をグッと引き寄せた。

 もう1点もやれない布施・村岡は8回、9回に圧巻のピッチングを見せる。福泉の8番・高浦から3番・上谷まで5者連続三振。9回11奪三振の力投で味方の反撃を信じる。

 2点を追う9回裏、布施は一死から野崎、竹内、高山のクリーンアップによる3連打で1点差に迫ると、二死一、二塁の場面で代打・山本を打席に送る。同点のランナーが二塁に、逆転サヨナラのランナーが一塁にいるという緊迫した場面で、カウントは2球で2ストライクと追い込まれてしまう。1球ファールを挟んでの4球目、打球は福泉のショート・上谷の差し出したグラブを弾き、センター前へと転がった(記録はヒット)。竹内の代走として出場していた佐藤が6点目のホームを踏み、あと1球のところまで追い込まれた土壇場で同点に追いついた。なおも二死一、二塁と今度はサヨナラのチャンス。古川の放った鋭い打球は三遊間を襲ったが、これを福泉のサード・西端がダイビングキャッチ。起き上がるとすぐさま一塁へ送球。
布施の好打に福泉が好守で応える形で、試合は6対6のまま延長戦へ。


 10回裏、布施は一死から2つのフォアボールでチャンスを作るが、ここまでですでに猛打賞を記録していた野崎、代走から出場し初打席となった佐藤から快音は聞かれず、9回に続いてサヨナラ機を逃す。福泉は11回、二死からデッドボールとエラーで一、三塁のチャンスを作ると打席には上谷が入る。フルカウントからの6球目、快音を残した打球は右中間を深々と破る値千金の2点タイムリースリーベースヒット。9回裏の守備で打球を弾いた時は悔しそうに天を仰いでいたが、中心打者としてバットで取り返した。続く早川もセンター前ヒットを放ち、さらに1点を加えた。その裏、粘る布施に一死一、二塁とされたが後続を抑え逃げ切った。

 福泉は1番・幸野裕樹が4度出塁し、4盗塁3得点とトップバッターの役割を果たし、3番・上谷が決勝の2点タイムリー、投げては中澤がイニング数を上回るヒットを打たれながらも完投。限られた部員数のためか延長11回を戦いながら選手交代は無し。スタメン出場の選手がそれぞれの役割を果たし、3時間11分の熱戦を制した。

(文:小中翔太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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