試合レポート

銚子商vs成田

2020.08.09

タレント揃いの銚子商vs成田の一戦は前評判通り死闘に!銚子商・常世田が試合を決める2ラン

 成田vs銚子商の第6ブロックの強豪校同士の対決は前評判通りの好試合となった。同時に両校の人材の豊富さに驚かされる試合だった。

 成田の右サイド・石田慶一。昨秋よりも格段にレベルアップした投球が見られた。右サイドから常時120キロ後半~136キロを計測。コンスタントに135キロを計測しており、非常に力強くなった。120キロ前後ののスライダーの切れも良く、大学でも活躍が期待できそうな投球だった。

 そして銚子商宮内陸。躍動感あふれる右の本格派右腕だった。セットポジションから始動し、左腕のグラブを高く掲げて、半身の体勢を作り、内回りのテークバックから大きく胸を張って振り下ろすオーバーハンド。常時130キロ~136キロの直球(最速139キロ)は角度が良く、120キロ前後のカットボール、フォークの切れも良く、高めに浮くところはあるが、ストレートの切れとともに申し分ない。近年では140キロを超える速球を投げ込む本格派右腕・林桂大(国際武道大-JFE東日本)以来の逸材だろう。宮内は「絶対に負けたくない相手でした。以前は高めに浮いたボールを打たれていたので、速球、変化球とを低めに集めることを意識しました」とその言葉通り、要所では精度の高いストレートを投げて抑えることができていた。

 まず先制したのは成田。4回表、成田は6番・篠田隼の中前適時打で1点を先制。しかしその裏、銚子商は4番・常世田翔太が二打席連続となる二塁打でチャンスを作る。ここから成田の石田がペースを崩し、二者連続四球で無死満塁。ここで投手が交代し、安定感の高さを買われて背番号1を勝ち取った片岡海都が登板。しかし片岡も勢いを止めることができず。7番・久我陸人の2点適時打、8番・宮内のスクイズ。二死二塁から1番・加瀬泰雅の左越え二塁打で4対1とビッグイニングを築いた。

 成田の片岡は立ち直り、右スリークォーターから常時130キロ中盤~最速139キロの直球、スライダーを投げ分ける投球。ストレート、変化球ともに低めに集まっており、スライダーの切れも良く確かに背番号1を任されているのもうなづける投手だった。将来的には145キロ前後も狙えそうな逸材だ。


 そして6回表、成田は4番・松本憲信がスライダーをとらえ、レフトスタンドへ消える2ラン。タイプは違うが、打撃技術の高さは一級品。外角球をしっかりと叩いて、最短距離のスイングで持っていた打撃は素晴らしいものがあった。また、遊撃守備に注目すると、以前よりもグラブ捌きが安定。投手としても130キロ後半の速球を投げるように強肩。松本よりもスピーディな遊撃手はいるが、ただ打力ということに関しては県内ナンバーワンだろう。本質的には三塁手タイプの選手だと考えている。

 6回表、一死一塁から6番・篠田の中前安打で一、三塁で、相手のミスが飛び出し、成田が4対4の同点に追いつく。しかしその裏、成田は敵失とボークから2点の勝ち越しを許してしまう。

 6回途中からマウンドに登った3番手は最速143キロ右腕・斎藤颯人。前評判通りの快速球を披露。走者がいないところからセットポジションで始動。勢いよく腕を振っていき、常時135キロ~140キロ(最速142キロ)を計測。何度も140キロを超え、威力ある球威は県内でもトップクラスだろう。さらに120キロ後半のスライダーの切れ味も素晴らしく、立命館大に進んだ荒張 直也と引けを取らない速球投手へ成長した。

 そして8回裏、銚子商の4番ショート・常世田翔太が高めに抜けたスライダーを逃さず、ライトスタンドへ弾丸ライナーで2ラン。この試合、4打数3安打8塁打2打点と大活躍。細身ではあるが、構えに大きな癖がなく、最短最速でインパクトを迎える打撃技術は素晴らしい。体幹を使って遠くへ飛ばすことができている。そんな常世田が打撃で意識していることは自分の狙い球・コースを張って、タイミング通り打ち返すこと。そのためタイミングが合わなければストライクコースを見逃す割り切りもできる。

 「第1打席は外側のボールを狙い通り、第2打席もコースが狙い通り、第3打席もやや高めだったのですが、コースを張っていたので、打ち返すことができました。宮内が頑張っていたので何とか楽にさせたいと思いで打席に立ちました」と語るように、自由自在のバッティングを見せていた。金属の反発力に頼ったスイングではないので、木製バットでも早く順応し、長打も打てる内野手になるのではないだろうか。 

 いわゆる常世田の打撃は迷いがない。それにしても高校2年の時と比べると発言もプレーぶりも自信が満ち溢れたものとなっており、1年でこんなに成長するのかと実感させられた。

 守備の動きも見ても昨年よりも軽快になり、攻守で磨きがかかっている。攻守の総合力、将来性という点では県内トップレベルの遊撃手だといっていい。


 そして9回表、成田の副主将・坂本涼が2ランホームラン。第1打席の二塁打に続き、2本目の長打。がっしりとした体格に加え、重心を少し沈め力みのない構えから振り幅が大きいスイングで長打を飛ばす右のスラッガーだ。これが今大会2本目。非常にパワフルなスラッガー。また主将・古谷が抱え込んでいるときに救いの言葉を語りかけた頼もしい選手である。

 試合は8対6で銚子商が勝利し、昨年の雪辱を晴らした。

 第6ブロックを代表する強豪校同士の対決は最後まで手に汗握る一戦だった。

 常世田は「昨年成田に負けてから絶対に負けまいと練習に取り組んできました。それが達成できてよかったです」と喜んだ。

 敗れた成田は投打ともに千葉県どころか全国レベルの選手が揃っていた。投げた投手は全員が135キロ超え。プロ注目の古谷、古谷とともに活躍を見せてきた左のスラッガー松本以外にも能力が高い打者が多くいた。レギュラーは次のステージでもプレーできる能力は秘めている。

 古谷は涙ながらにこの試合を振り返り、「非常に悔しいです。自分の焦りもあってミスもあって、みんながつないでくれたチャンスも打てなくて、自分はまだまだだなと思いました。この悔しさを生かしていきたいです」。打撃、捕手としてのポテンシャルの高さは全国トップクラスのものがあるだけに、ぜひこの悔しさを生かしてほしい。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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