大社vs広島観音
水師俊樹(大社)
小さなエース水師が完投!大社が逆転勝利で初戦突破
身長166センチと167センチの小さなエース対決を制したのは、166センチの大社・水師(みずし)俊樹(2年)だった。最後の打者を打ち取った瞬間、「よっしゃ」と声を張り上げて喜びをかみ締めた。
立ち上がりは悪かった。直球が高めに浮き、変化球も上手く操作できない。初回2死3塁から、広島観音・藤後佑基に左翼席中段に2ランを浴びる最悪のスタートだった。
それでも慌てない。「緊張しました。悪いときもある。今までも先制されても打線が逆転してくれた。今回も逆転してくれると信じていました」と水師は振り返る。
2回以降に打たれた安打は6回の1安打のみ。直球が低めを突き、緩いカーブで相手打線のタイミングを狂わせて、相手の闘争心を奪い取った。初回の2失点だけに抑えての完投勝利だった。
166センチながら、中学生のときから投手1本でやってきた。「身長のない分、技術で他の投手に負けても、気持ちでは誰にも負けません」。昨年は中国大会のマウンドも経験済みだ。そんな強気な姿勢は今大会のマウンドでも失うことはなかった。打線も島根大会から逆転勝ちを積み重ねて、20年ぶりに秋を制した。水師の強気はナイン全体に乗り移っていた。4安打を放った廣戸剣太(1年)は「投打のバランスが取れたチームです。先行されても慌てることはないです」とナイン全体の気持ちを代弁する。
板垣悟史監督は「ここへ来て成長してくれた。自信もつけている」とエースの成長を手放しで喜ぶ。左腕・片山翔太(1年)と切磋琢磨しながら競ってきた成果が徐々に出てきた。「水師は何も言わなくてもよく走るんです。自覚のある選手」。小さなエースには、ランニングから培った体力と精神力があった。
ベスト8では尾道(広島)と対戦する。「(石見)智翠館が完全にやられました。投手(沖田)がいいですね。簡単には打ち崩せない。これから研究します」。慎重な言い回しながらも、板垣監督の目は自信にあふれていた。
(文=中牟田康)