ふじみ野vs武蔵越生
ふじみ野、最後まで流れを渡さず、7回コールド勝ちで県大会へ!
大野竜也(ふじみ野)
2015年春、現在では休部となった東京成徳大深谷を春4強に導いた泉名 智紀監督により強化中の武蔵越生と、昨秋ベスト16の[team]ふじみ野と[/team]の一戦。ふじみ野は、この4月から市立川越OBで、川口工の顧問だった高橋良氏が監督に就任。高橋監督はふじみ野に赴任して公式戦の初采配となった。
試合はふじみ野が優位に進めることとなる。
1回表、ふじみ野は一死から2番松尾がセンターの頭を超える三塁打を放ち、3番大野 竜也(3年)が中前適時打で1点を先制。二死一、二塁となって、打席には6番斎藤 大輔(3年)。斎藤は「次につなぐつもりで打席に入って、何としても食らいつこうと思っていました」と、無心で振り抜いた打球はライトスタンドへ飛び込む3ラン。これが斎藤にとって練習試合・公式戦通じて初の本塁打となった。「まさか入るとは…」と本人も驚きの一発は試合の主導権を握る大きな一打となった。
2回表もバッテリーミスの1点と4番福室の犠飛で6対0とリードを広げたふじみ野。さらに4回表、一死一、三塁から4番福室の内野ゴロで7点目を入れる。
大量リードを奪ったふじみ野だが、決してセーフティリードではない。一瞬の気の緩みが大量失点につながるのが高校野球だ。しかしふじみ野の正捕手・大野は冷静だった。
「武蔵越生の打者陣は速球に強い打線。変化球をうまく使ってリードすることがこの試合のテーマでした」
大野がポイントに挙げたのは5回裏だ。4回裏、6番富澤の犠飛で1点を返され、5回裏には、二死一、二塁で4番岩上啓人(3年)を迎えた。岩上はここまで2打席連続安打を放っており、武蔵越生としては4番の一打で試合の流れを変えて後半勝負にしたいところ。
だからこそ絶対に抑えなければならない場面だと感じていた大野は、変化球中心で攻めていき、岩上を二飛に打ち取り、ふじみ野バッテリーはガッツポーズを見せた。
岩上敬人(武蔵越生)
ピンチを切り抜けたことで、試合の流れはふじみ野ペース。7回表、一死一、三塁から8番杉浦の適時打で8対1と点差を広げる。7回裏、走者1人を出したが、最後の打者を左飛に打ち取り、試合終了。8対1と7回コールド勝ちで県大会出場を決めた。高橋監督は「武蔵越生さんは投打ともに良いチームで、接戦の展開でしたらわからなかったです。立ち上がりに4点取ったことで、うちの流れになったと思います」と先制攻撃ができたことを勝因に挙げた。
磐石な試合運びができた要因として高橋監督は大野の働きを評価する。「大野はうちの攻守の中心です。肩も強くなってきましたし、相手チームからすれば嫌な選手です」
打者・大野は構えに癖がなく、コンパクトな体の回転、スイング軌道から的確にボールを捉えることができる右の好打者だ。スローイングはベース上にしっかりと伸びていく球筋で、大野も「この春から自分でも強いボールが投げられるようになったと思います」と胸を張る。加えて相手打線の得意球・試合の流れを読んだ冷静なインサイドワーク。県大会でも注目を浴びる捕手となりそうだ。
一方、敗れた武蔵越生も選手一人一人のポテンシャルは高かった。その中でも、4番岩上 啓人は期待の大型外野手だ。179センチ78キロと恵まれた体躯を誇り、一発長打を秘めた強打と、ライトの深い位置からダイレクト返球できる強肩が持ち味だ。岩上は毛呂山中学時代、Kボールの埼玉選抜(埼玉スーパースターズ)に選ばれ、第15回U15全国KWB野球選手権大会で優勝を経験。当時は控え捕手で、そのときの正捕手が同じく武蔵越生に進み、主将を務める中村 藍人(3年)である。
岩上は第1打席は左前安打、第2打席は三塁線を破る二塁打を放ち、2安打を記録。打球は非常に速く、角度さえつけば、オーバーフェンスも期待できる打者だ。だが岩上は「5回裏、二死から一、二塁のチャンスを作ったのに、凡退してしまったことが悔しいです。夏ではああいう場面で打てる選手になりたいです」と勝負強い4番になることを誓った。
泉名監督は岩上に限らず全選手に対し、良い選手になることではなく、試合に活躍できる選手になることを求めている。
「冬を越えて、だいぶ振れるようになってきましたし、成長は見えます。でもうちが求めているのは『良い選手』ではなく、『試合で活躍できる選手』です。残りの期間でそうなってくれることを期待しています」
泉名監督が語る言葉こそ、この夏、ノーシードから躍進するためのキーワードとなる。
(取材・写真=河嶋宗一)