星稜vs東海大諏訪
北信越の雄・星稜、貫禄示すベスト4進出
星稜・寺沢孝多君
北信越という括りは、地理上では公的には示されていない。具体的には北陸3県(福井、石川、富山)と信越と言われている長野県と新潟県が加わっていく。実は、北信越という地域の括りは高校野球と高校総体など、高校スポーツの中だけで成立しているものなのかもしれない。だけど、何となく、その語感が心地よく、北信越大会という言葉に高校野球らしさを感じさせてくれる。
その北信越の雄とも言える存在が星稜である。北信越大会にも今大会で60回目の出場となり、昨春の大会から3連覇を狙う。過去2年は、春秋すべてに決勝に進出している。甲子園でも、今や伝説とも言える箕島との延長18回のサヨナラ負けや、松井秀喜選手が5敬遠となった明徳義塾との試合など幾多の甲子園の球史に残る戦いを残してきている。
今春の県大会1位校同士の対戦となったこの試合。おなじみイエロー地にタテに漢字で「星稜」と、東海大グループおなじみの筆記体で「Tokai」と表記されたタテジマユニフォームの東海大諏訪。今大会から、ユニフォームの色がグレーがかったブルーのものになった。
この試合が初戦となる東海大諏訪はエースの横田君が先発。星稜は、前日にエース奥川君がセンバツ後では最長となる6イニング投げたということで、この日は前日もリリーフのマウンドで3イニングを無難に投げた荻原君が先発。
先制したのは星稜で2回、失策で二塁まで出た走者を飛球で三塁まで進めると、6番福本君が痛烈に左前打して、これが初安打になるとともに先制タイムリーとなった。ただ、前日と同じような展開で星稜は先制の後の追加点がなかなか奪えない。それでも、荻原君が好投しており、6回までは初回の原君に打たれた二塁打一本のみという内容。制球もよく、ストライクを先行させていく投球は安定感は抜群だった。
また、横田君もやや球数は多くなってきてはいたものの、しなやかなフォームから投げ込んでくる球は伸びもあった。投球としては、決して悪い内容ではないと言えよう。
3回の無死一二塁という好機を逃した星稜。横田君の踏ん張りの前に、次の1点に苦労していたが、6回先頭の山瀬君が左前打してバントで進むなどで二死二塁というところで、8番に入っている荻原君自身が左前へはじき返して二塁走者が帰る。これで勢いづいた星稜は9番山本伊織君も右越三塁打し、さらに東海林君も三塁へ内野安打して、この回3点が入った。このあたりの後半になって一気に畳みかけてくる攻撃は、前日もそうだったが星稜はさすがである。
しかし、東海大諏訪もそのまま引き下がってはいなかった。直後の7回、先頭の早川君が左前打で初回以来の久々の安打が出ると一死後、フルカウントと粘った五味君が一振した打球は右翼芝生席に入る2ランとなった。これで、東海大諏訪も追い上げムードとなってきた。星稜の山下智将監督は、ここですぐに荻原君を下げて左腕寺沢君を投入した。
寺沢君は、代わった直後は少し硬く、腕も振り切れていないようだったが、一旦タイムを取って山下監督は奥川君を伝令として送る。「もっと腕を振って投げていこう」ということを伝えさせた。それが功を奏したのか、その後の寺沢君はきちんと投げ切り、結局星稜が逃げ切ってベスト4進出を決めた。
山下監督は、「もともと荻原はコントロールはいいんです。今日の先発は昨日決めました。なかなか追加点が取れなくて苦しい展開でしたけれども、よく我慢して投げていたと思います。7回の本塁打は、(荻原投手が)この回までかなと思っていたところだったので、あれで踏ん切りがついて代えました」と語っていた。
東海大諏訪の藤井浩二監督は、「横田は、本来もっとコントロールがいいはずなんですよ。県大会でも100球前後で完投できていましたから…。それでも走者を背負いながら、よく踏ん張っていましたが、これだけ打てなかったらいけません。まだまだですね」と、敗戦を認めていた。
(文=手束 仁)