中京大中京vs愛知産大三河
中京大中京、先制~中押し~ダメ押し本塁打と盤石の戦いで4強進出
この夏の大会を前に、白地に立襟でブロック体の「CHUKYO」というユニフォームとストッキングも紺地に白の3本線のという伝統のものに戻して話題になった中京大中京。平成時代、厳密には全国では1997年の準優勝を果たしたセンバツ大会以来23年継承していた丸首で筆記体の「Chukyo」でトリコロールカラーが袖口とストッキングに入っているスタイルのモノを令和時代になったことを機に、昭和時代に一時代を作っていたユニフォームに変更したという。もっとも、まったくの復刻スタイルかと言うとそうでもなく、新3本線はラインの位置が以前よりもやや下にあり、ラインそのものも従来のよりも細い。そして、左袖はかつての中京商時代の輝かしい伝統を示していたという意味も込めて「中商」という旧校章を残していたが、それが今の中京大中京の大陸型とも言われているカラフルな色合いの「C」マークを花型で象ったものとなった。
史上最多の甲子園勝利数と春夏合わせた優勝回数11を誇っている、全国的な伝統校でもあり名門校である。それだけに、長らく中京大中京を応援し続けてきているという古くからのファンやOBなどからも、賛否両論さまざまあるようではある。たかだかユニフォーム変更と言われればそれまでかもしれないが、そのことがメディアも含めて話題となっていくところに高校野球文化の奥の深さもある。
また、それが中京大中京で起きているからこそのことで、さすが名門校とも言えるし、その責任もあるのだとも言える。とは言え、この日、中京大中京が昨夏の東愛知代表の愛産大三河も下してベスト4に進出を果たしたということで、このユニフォームはまだ負けていない。もう半世紀以上も愛知県内の高校野球の勢力構図としては言われ続けている“私学4強”。それが、今年はベスト16を前にそのうちの3校が崩れたのだが、ここで中京が残ったことで「さすがに、このユニフォームは、そんなに簡単に負けれんでね」と見ている高校野球ファンもいる。
そんな中京大中京だ。この大会は春季県大会のベスト8に与えられるシード校として3回戦から登場。初戦の名東から、4回戦の刈谷工、5回戦の国府に対していずれも5回コールドゲームという圧倒的強さで勝ち上がってきている。そして迎えた準々決勝、ここへ来て調子もさらに上がってきているという2年生のエースの高橋宏斗君が先発してきた。これに対して、愛産大三河はこの大会に入って実質エースという立場になっているというやはり2年生の高橋一壮君が先発。
まずは先取点がポイントとなるかなと思われたが、初回に中京大中京はあっさりと先制する。二死走者なしから、四球で中山君が出塁すると、二塁盗塁して送球がそれて三塁まで進めたところで、今泉君が左翼へ強烈なタイムリー打で帰す。この打球を見ても、中京大中京の打線は強烈だなと思わせるに十分だった。
打順が2廻り目になってきていた4回、中京大中京は3番中山君が中越二塁打を放つと、今泉君死球後バントで一死二三塁。印出君の中犠飛と、7番佐藤啓介君の一二塁間を破るタイムリー打で2点を加えた。試合展開としても、中京大中京としては、ちょうど欲しかったというタイミングでの2点だったとも言えよう。
愛産大三河は、これまでもそうしてきたように、途中で捕手の櫻井君が投手となり、2イニングつないだが、8回に中山君の右翼へのソロアーチが出て、これがダメ押し的になった。
結局中京大中京は先制~中押し~ダメ押しとして万全のしいの流れ。守っても、高橋君が何故か6番の石原一馬君にだけ4安打されたものの、都合6安打。三塁へ走者を進められたのも初回と5回のみ。ほぼ盤石と言っていい試合内容だった。
「全国で戦えるということを意識してチームを作っている」という高橋源一郎監督は、今日の高橋宏斗に対して、「0に抑えたということを考えれば合格点なのでしょうが、彼の伸びしろということを考えたら、まだまだ満点ではありません」と厳しく、冷静に見ていた。ただ、チームに関しては、「西村、中山という、1番3番に置いている2年生がいい働きをしています。4回の二塁打、8回の本塁打いずれもほしいところで出してくれた。中山は、センスの良さというかある程度は天性のものもあるのではないかと感じている」と、評価していた。「(優勝までは)あと2つだけれども、ここまで来て一つひとつを、これまで通りにしっかりと戦っていくだけ」と、改めて引き締め直していた。
昨夏の東愛知優勝校であり、ある意味ではディフェンディングチャンピオンという立場ででも戦わざるを得なかった愛産大三河の櫻井春生監督は、「今年のチームは、秋季大会の結果などを見られてもわかるように、甲子園系犬種がいるとはいえ力はありません。そんな中で、この大会に入ってからは、戦いながらようやく少しずつ力は上がってきたかなと思います。だから、ここまで来られて、このチームでは正直、よくやった方じゃないかなと思っています」と、さばさばとしていた。
(文=手束 仁)