時習館vs滝
逞しさ増した時習館、攻守に滝を上回って快勝
2回にタイムリー二塁打を放った時習館・伊藤耕平君
昨年からのメンバーが多く残り、チームとしての経験値も高い時習館。ことにバッテリーとセンター木戸脇のセンターラインはしっかりとしている。選手個々の体格もよく、能力も高そうだ。そして、そんな選手たちがそれぞれに自覚を持って、しっかりと鍛えられているという印象である。県内屈指の進学校でもある時習館なので、平日の練習時間なども、なかなか十分には取れない環境だが、そんな環境も十分に承知で、それぞれの意識が高い。だから、その分濃度の高い練習ができているようだ。
また、滝も尾張地区の私学進学校としての実績は高い。かつては、野球部を強化していた時代もあったが、現在は必ずしも恵まれた環境ではないようだ。それでも、毎年ある程度の力のあるチームを作ってくるのはさすがと言っていい。
この日の試合を見ると、時習館は確実に3月の東三河地区大会の時よりもたくましくなっているという印象だった。2月から3月初旬まではコロナ禍で十分に練習も積めなかったということもあったが、試合を重ねていくうちに、本来の力を示していけるようになってきたようだ。そして、公式戦を通じて見つかった課題をそれぞれがしっかりと克服していっている成果でもあろう。ことに、打撃に関しては、彦坂祐志監督も、「徹底的に打撃練習はやってきました」と言うように、はるかに打球も鋭くなってきていたし、打球音も違っていた。
そんな時習館、初回に失策で出た走者を2死一、二塁から5番持田の中前打でかえして先制。そして、2回には栁田が中前打で出るとしっかりとバントで送り、9番伊藤耕平が左翼線へ二塁打してかえす。さらに、1番木戸脇は右中間深いところへ三塁打で追加点。続く中根も左前へ痛打で滝の先発大津を引きずり降ろした。このあたりの打球の鋭さは、まさに彦坂監督の言う練習の成果と言っていいであろうと思わせた。滝の後藤文彦監督は、ここで1番をつけている平井を送り込む。
しかし、平井に対しても時習館は4回、伊藤と木戸脇の連打でチャンスを作ると、2死後4番森田の中前打で5点目。そして、6回にも先頭の中根の右前打と、森田以下、持田、山田と3連打などでさらに2点を追加。こうして、毎回のように安打をして、得点を追加していく。
7回にも滝の3人目となった臼井に対して伊藤、片桐、森田の安打などでさらに2点を追加。少しでも甘いと確実に捉えていく打線の力強さは、3月の東三河地区予選の頃からは格段の成長と言っていいであろう。中軸を打つ選手たちは、体幹もしっかりしているなと言う印象で、いわゆる進学校のひ弱さなどは微塵も感じさせられないくらいにたくましい。
ただ、課題としては、エースの安田がもう一つ本調子ではないかなと言うところかもしれない。それでも終わってみたら6回までは無安打。7回に臼井に初安打となる二塁打を喫して、そこから2点を失ったが、それでもコールドゲームとしてまとめたところはさすがだった。ただ、今日の安田は制球にいくらか甘さもあって、5四球を与えて自ら苦しくしていた。スピードそのものは、そんなに出ているというものではないが、彦坂監督は、「上(大学野球)でやって成長してもらいたい投手でもありますから、無理にスピードを上げていくことは望んでいません。スピードに関しては、そこで自然について行くと思います。それよりは、投球術というか、そういう面をしっかりと学んでいってほしいと思う」と、素材力の高い安田と木戸脇に関しては、この時習館での高校野球ということだけではなく、本人たちが希望している東京六大学の舞台などで活躍できるように導いていってあげることも大事な要素だという考え方でもある。
それでも、次の愛工大名電との試合に関しては、「こうした相手に対して、どこまで対等にやれるのかということを思いながらしっかり練習してきました。それを試したい」と、強い思いでぶつかっていく決意である。この春から夏へ向けて、第1回大会の地区大会から参加し続けている超名門の時習館の動向を注目していきたいところでもある。今年はそんな時習館の、104回目の夏からも目が離せない。
(記事:手束 仁)