浦和学院vs仙台育英
浦和学院が仙台育英に快勝!5年前の因縁の相手にリベンジを果たす!
浦和学院にとって仙台育英は春夏連覇を狙った5年前、初戦で敗れた因縁の相手。雪辱しようという執念が1回表の攻撃によく見えた。四球で歩いた1番・中前祐也(2年)を2番打者がバントで送ろうとするが失敗。1死一塁の場面で打席に立った3番・蛭間拓哉(3年)が1ボールからの2球目低めストレートをしっかり上から捉えてセカンドの頭をライナーで超えるライト前ヒットを放ち一、三塁、さらに4番打者の3球目に二盗に成功して二、三塁とし、2死後、5番・佐野涼弥(3年)が138キロのストレートを右中間に弾き返して2人の走者を迎え入れた。
ここまでの中のどこに「雪辱しようという執念」が見られたかというと、1回の1~6番までの各打者が見逃したストライクは全27球中3球だけ。さらに蛭間の二盗にも攻撃的精神が垣間見られた。試合前、選手たちは5年前に敗れた仙台育英戦の録画を見たという。先輩たちの痛みを自分の痛みに置き換え、死に物狂いでボールに向かっていくという精神はこういう部分によく表れる。2回は三者三振に倒れるが三振はすべて空振りで、ストライクの見逃しは1つだけだった。
打者走者の全力疾走にも見るべきものがあった。私が俊足の基準にする「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは4人6人(仙台育英は3人5人)。例年、浦和学院はこれほど走らない。
投手に目を向けると、先発の渡邉勇太朗(3年)が素晴らしかった。左肩の早い開きを抑え、投げ始めから投げたボールがキャッチャーミットに収まるまでの投球タイムが約2秒。このゆったりとしたフォームからストレートは最速149キロを計測し、カットボールを含めたスライダー系にバリエーションがあり、コントロールも抜群だった。
南埼玉大会から評判で私は準決勝の聖望学園戦のピッチングを見たが、このときはストレートが143キロ止まりで、変化球もこの日ほどキレがよくなかった。4万1000人が押し寄せた甲子園の雰囲気が渡邉の成長を促したと言ってもいい。もし渡邉がドラフト会議前にプロ志望届を提出すれば2、3位くらいの上位指名があってもおかしくないと思っている。
仙台育英では先発の田中星流(3年)が面白かった。ストレートは最速140キロで今の高校野球では速い部類に入らない。実際に1回は捉えられるのだが、そこからの投球の変化が目を引いた。1回から2回にかけて浦和学院の下位打線から4者連続三振を記録するのだが、その結果球がフォークボールを思わせる激しく大きく落ちる変化球。どうもそれはカットボールらしいのだが、これを初球から投げ、勝負球でも投げるという徹底ぶりで浦和学院の強打線を惑わせた。
結果は2回3分の2を投げ4安打、4失点で降板するのだが、ストレートを中心に投球を組み立てるという高校野球における前提が崩れかけている様子が見て取れる。
(記事=文:小関 順二)