試合レポート

海星vs清峰

2010.07.13

2010年07月12日 長崎県営野球場  

海星vs清峰

2010年夏の大会 第92回長崎大会 1回戦

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永江(海星)

打撃の清峰

 全国を見渡してみても、1回戦からこれほどの好カードが実現する地域も珍しい。

新チーム発足の時点で、ライバル校の多くが「個々の能力では県最強」と評する力を有する

長崎海星

。野球に必要な走攻守のすべてを高い次元で備えた江越大賀、豪快さと柔軟さで長短打を巧みに打ち分ける大山仁也、原田卓、平山巧基。背番号6の4番・永江恭平は2年生で、ストレートのアベレージが140キロの豪腕だ。前哨戦のNHK杯を15年ぶりに制し、8年ぶり16度目となる選手権出場に向けて、いよいよ機が熟してきた感すらある。

 一方、ここ5年間の甲子園成績が春夏5度の出場で13勝4敗。センバツは2度の出場で準優勝、優勝と、華々しい実績を楯に台頭を続けてきたのが清峰である。
 そんな清峰が、日本一達成から今日に至るまでに味わった苦悩とジレンマ。そこに同化しながら、注目の初戦を見つめてみた。

昨年はセンバツ優勝後の夏が準々決勝敗退。秋は佐世保地区の1回戦で

佐世保高専

に敗れ、今春も

島原中央

に初戦敗退。ポスト今村猛(広島)と目されていた中野浩平が長期のスランプに陥るなど、九州大会にすら駒を進められない苦しい戦いが続いていた。

秋に地区初戦で破れた清峰の冬は、とにかく長かった。その間はもちろん、自慢の丸太を用いたスクワット、ダッシュを繰り返す日々だ。その“怪我の功名”は例年以上のビルドアップに繋がり、打球の速さ、飛距離には格段の成長が見られた。しかも、投手陣の不調を考えると、ある程度の失点を計算した上で、その上を行く得点力を身に付ける必要もあったから、各打者の飛距離向上は吉田監督にとっても嬉しい副産物となった。主砲の宮原大輔にいたっては5月以降に“打ち出の小槌”状態に突入。不得手としていた内角球の処理を克服しながら宮原が本塁打を量産していく姿が、そのまま「新しい清峰」のチームカラーとなっていったのだ。

両者は前哨戦のNHK杯でも対戦し、この時は

長崎海星

が9-5で勝利している。したがって、戦前の予想は

長崎海星

有利が多数を占めた。しかし、甲子園優勝を経験している清峰・吉田洸二監督の戦前分析は「皆さんは5・5:4・5で

長崎海星

が有利と仰いますが、夏の初戦という独特な雰囲気と経験値を加味すると、五分五分か、もしくはウチが有利だってことも言えると思うんです」としていた。
その打棒によって、5月の佐世保地区大会、NHK杯佐世保地区を制した。また、練習試合でも

南陽工

・岩本輝、

明豊

・山野恭介といった西日本屈指の投手を打ち崩してきている。5点を失えば6点を取り返せばいい。

清峰はこの試合で

長崎海星

を上回る10安打を放った。長打数も

長崎海星

の2に対し、清峰は3。連打数も清峰

長崎海星

を凌いでいる。2-10とコールド負け目前から一挙6点を返した7回のビッグイニングも、現在の清峰を象徴しているといっていい。

 しかし、清峰は三振、失策、残塁、与四死球の数でも

長崎海星

を上回ってしまった。これが最終的に8-11というスコアに結びついてしまったのだから、じつに皮肉で残念な結果と言わざるを得ない。

「去年までのチームであれば、考えられないような守備のミスや二死からの失点もありました。パターンで言うと“自滅”です。いくら点を取ろうと、ミスが多いチームは勝たせてくれない。野球とはよくできたゲームです。ただ、去年まででは考えられないビッグイニングも作れた。今年のチームの持ち味が出すぎた試合でしたね。しかし、ハンマーで殴りつけられたような痛みを味わった秋の敗戦から、現実的に甲子園が狙える位置まで、選手たちはよく成長してくれました」――吉田監督

 先発の中野は5失点ながらも自責は2。その後の5投手も6失点ながら自責は5である。最終回に145キロを記録するなど、力勝負を最後まで挑んできた永江から8得点と持ち味を発揮しただけに、すべてが失点に絡んだ要所でのミスが勿体なかった。
灼熱の夏に笑顔の猛練習を重ねていくであろう清峰。吉田監督が巻き返しに備えて見出す色とは投手力か、打撃力か、守備力か、それとも機動力か。はたまた、別の何かか?
秋にはどんな方向性を打ち出してくるのかが、早くも気になるところだ。

(文=加来 慶祐


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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