試合レポート

桜丘vs安城東

2019.07.25

中盤まで凌いで我慢の桜丘が4強、唯一の公立校安城東の夢砕く

 ベスト8進出が決まった段階で、愛知大会は再抽選となる。
 そんなこともあって、「愛知大会は、実は準々決勝の組み合わせが決まった段階で、新たに別の大会が始まる意識だ」ということを言う人もいるくらいだ。西三河地区の連盟役員も務めている安城東の大見健郎監督は、「いつもは、大会終盤にここへ来るときは、連盟役員としての仕事のために来るのだけれども、今日は試合としてこられたことが嬉しい」と、改めて、ここまで残ってきてくれた選手たちへの感謝の気持ちを表していた。

 188チームという全国最多数で始まった大会だが、二週間足らずで64校となり、そこから32→16→8と試合ごとに残りが少なくって行く。それがトーナメント大会の見る側としての面白さでもあるのだが、現場としてはまさにここから、また一つひとつ、負けられない今までよりももっと厳しい戦いがプレッシャーとともに続いていくということになるのだ。とは言え、大会参加者としては、ここを一つの目標にもしている。だから、厳しいけれども、やり甲斐のある戦いということも言えよう。

 ベスト8の中で唯一の公立校となった安城東だったが、東三河の強豪私学の桜丘に臆することなく立ち向かった。先制したのは安城東だった。3回、安城東はエースとしてここまでの進撃を引っ張ってきた8番の河合君からだったが、都築君、稲垣君と3連打して無死満塁という絶好機を作る。桜丘の堀尾君としても、安易に入っていったわけではなかっただろうが、ちょっと止められずに連打された。そして2番中村君の一打は投ゴロで1~2~3という絶好の併殺かと思われたが、一塁への送球がそれて本封のみで一死満塁。3番大見君には死球で安城東が押し出しの先制点。さらに、二死満塁から5番奥田君が右前打して2者が帰り、この回3点。なおも一二塁だったが、二塁走者がけん制で刺された。それでも、3点は試合展開としては大きいかなと思われたが、愛産大三河もすぐにその裏反撃した。

 先頭の9番藤野君が内野送球エラーで出塁すると、バントは失敗するも、2番杉浦貫太君の中前打で二、三塁。森君の犠飛と、4番堀尾君の中前打で2点を返した。桜丘としては、同点には届かなかったものの、すぐに1点差としたということで試合の流れとしてはほとんど五分という雰囲気になれた。

 こうなると、次のアクションがどうなるのか、それが大きく試合展開に影響しそうだが、4、5回を3人ずつで抑えられていた安城東は6回、四球と死球で二死一、二塁とするが、ここで桜丘は定番ともいえるパターンの継投に入る。堀尾君が一塁に回り、二塁手の吉見君がマウンドへ。そして二塁手に新たに近藤君が入る。これがまんまとハマり三振で切り抜ける。

 そしてその裏、4番堀尾君が右前打してバントで二進。二死となったところで7番吉見君が左越二塁打して同点。吉見君は、前の回にいい感じでリリーフができ、そのいい気持ちを持って打席に入れて、それが好打に繋がったようだ。続く伊藤君も右越二塁打で逆転。結局、このリードを吉見君がキープし続けて逃げ切った。

 桜丘の杉澤哲監督は、「3回の点の取られ方がよくなかったので、ちょっと嫌な感じもしていた。特に、相手の投手は変則気味のフォームだし、焦ってハマると嫌だなと思ったのだけれども、裏にすぐに追いかけられたのはよかった」そして、6回に抑えて打っての吉見君に関しては、「今日の吉見はリリーフとしては100点。今年のチームは、これと言って抜けた選手がいて引っ張るというのではないけれども、藤代中心に上級生がよく声を出していってまとまりは例年以上かもしれない。学校としても夏のベスト4は初なので、これからは未知のゾーンに入っていくけれども、楽しみもある」と、ここまでの戦いを評価しつつ、先への希望も見ていた。

 安城東としては34年ぶりのベスト8の場での戦いとなった。大見監督は、「同地区で西尾東や若い指導者たちが頑張っていて、結果を出しているので、先が見えてきていますけど、私もまだ負けていられないぞと刺激にもなっています。今年の夏は本当にいい夏として過ごすことが出来ています。あと1点が届きませんでしたが、選手たちもよくやったと思いますし、持てる力は十分に出せたと思います」と、この試合だけではなく、この大会そのものの戦い方に対しても、大いに納得していた様子だった。
 そして、「これからはすぐ、大会役員として仕事します」と切り替えていた。高校野球は、こういう指導者たちの思いや活動の積み上げによっても成り立っているのだ。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.22

【鹿児島】神村学園は鹿児島商と沖永良部の勝者と対戦、鹿児島実は大島と初戦で対戦<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.22

【岐阜】県立岐阜商は高山西と対戦、同ブロックに中京<2024夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.22

南北海道室蘭支部が開幕!北海道栄、苫小牧中央がコールド発進【2024夏の甲子園】

2024.06.22

【愛媛】23日に抽選会!名門・松山商が1歩リード、済美、今治西が追う展開か<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.22

奈良の組み合わせ決まる!天理と智辯学園が同ブロック、春秋Vチームが4強かけて激突も【2024夏の甲子園】

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.18

今夏埼玉の注目野手18人! ドラフト1位級の花咲徳栄スラッガーを筆頭に浦和学院・昌平らに大型選手が揃う【埼玉注目野手リスト】

2024.06.18

昨夏甲子園出場の東海大星翔進路紹介!遊撃手は阪神、エースは専修大、主将はレギュラーとして大学選手権出場!

2024.06.19

夏の兵庫大会のヒーロー候補21人!報徳学園・今朝丸、神戸弘陵・村上の「151キロ右腕二人」が筆頭格!投打にタレント揃いの東洋大姫路にも注目

2024.06.18

激戦区・兵庫の組み合わせ決定!センバツ準V報徳学園は舞子と明石北の勝者と、3連覇狙う社、プロ注目右腕・槙野遥斗擁する須磨翔風など注目校の初戦は!?【2024年夏の甲子園】

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.24

春季近畿大会注目選手17人! 智辯和歌山の大型右腕、大阪学院大高の全国トップレベル遊撃手、天理のスラッガーコンビら逸材がこぞって出場!

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.05.25

【長崎】長崎北、長崎日大、創成館などが勝利<NHK杯地区予選>