Column

トレーニングにまつわる疑問

2014.01.30

トレーニングとストレッチは常にセットで考える

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

春のセンバツ甲子園の出場校も決まり、野球シーズンが待ち遠しい季節となりましたね。甲子園出場を決めた選手の皆さん、おめでとうございます。今までの練習の成果を思う存分発揮して、甲子園という大舞台で活躍してくださいね。

さて今回は基礎体力強化のためのトレーニングやランニングについて、よく尋ねられる疑問・質問についてお答えしたいと思います。

【トレーニングを行うと身長が伸びない?】
重い負荷を使って行うウエイトトレーニングを繰り返すと「身長が伸びなくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。成長期にある皆さんの身体は適度な負荷をかけることによって、骨が長軸方向に伸びると言われています。身長が伸びなくなると誤解されている理由の一つとしては、重い負荷を使ってトレーニングした後にストレッチなど筋疲労への対応を怠った結果、骨と筋肉の付着部付近を中心として痛みを生じることなどが挙げられるでしょう。適切なトレーニングと適切なセルフコンディショニング、十分な栄養と睡眠というバランスの良い生活は、骨に刺激を与えて成長を促します。また身長がとまる時期は個人差があり、トレーニングを行うことそのものが、骨の成長をストップさせることにはつながりません。レントゲンなどで骨の上部、下部に骨端線が見られるときは、まだ骨が成長段階であることを示しています。

【トレーニングを行うと筋肉が硬くなる?】
トレーニングを行うと筋肉がパンパンに膨らむ「パンプアップ」という一時的に肥大した状態になります。この状態でそのまま放置しているとやはり筋肉は硬直し、硬くなってしまうことが考えられます。こうしたことを防ぐためには、トレーニング後にストレッチを行うこと。トレーニングとストレッチは常にセットで考えると、ケガ予防にもつながります。パートナーストレッチを行う時、伸ばしたい筋肉をあらかじめ軽く動かし、そこからストレッチを行うとより伸びるようになります。トレーナーは柔軟性を高めるために、こうした徒手抵抗(手で抵抗をかける)ストレッチをうまく利用することがあります。


走り込みと同時に下肢筋力も鍛えよう

【トレーニングを行うとスピードが落ちる?】
トレーニングにはさまざまな原理原則がありますが、その中の一つに「特異性の法則」というものがあります。選手の皆さんがトレーニングを行う目的は、野球がうまくなるためであり、ケガを予防するためであると思います。こうした野球の動作に結びつくような基礎筋力の強化であったり、適切な時期にスピードトレーニングを行えば、スピードはむしろ向上するのではないでしょうか。ただし筋肉は脂肪よりも重いため、筋力強化によって体そのものが重くなるということは考えられます。この場合は、重くなった体を支え、コントロールできるための体力要素(たとえばバランス能力や敏捷性など)も筋力同様に鍛える必要があります。

 
【投手は走り込みさえ行えばいい?】
オフシーズンを中心に投手は特により長い距離を走る傾向があります。これはどのような体力要素を鍛えるかということによります。長い距離を走ることは全身持久力や下肢の筋持久力の強化につながります。心肺機能の強化であったり、試合後半でも下肢が安定する土台作りといったところでしょうか。一方で「走り込みをやっているから下肢のトレーニングは必要ない」と考えるのは間違いです。走り込みで筋持久力は強化できても、筋力そのものを鍛えるには不十分だからです。オフシーズンを中心に走り込みを行うのと同時に、ウエイトトレーニングなどで下肢筋力を鍛えることも行うようにしましょう。

【トレーニングにまつわる疑問】
●適切なトレーニングと適切なコンディショニングは骨に刺激を与えて成長を促す
●骨に骨端線が見られるときは、まだ成長段階にあると考えられる。
●トレーニングとストレッチをセットにして行うことでケガ予防につながる
●特異性の法則に則って適切なトレーニングを行うとスピードは向上する
●筋肉は脂肪より重いため、重い体を動かすための体力要素を同時に鍛える
●長距離の走り込みは主に全身持久力と筋持久力の強化。筋力はトレーニングで鍛える

 (文=西村 典子

次回、第86回公開は2月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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