Column

効率化について

2014.02.01

遠藤友彦の人間力!

 野球だけじゃなく勉強も大切にするのが高校野球。よって、野球だけではないので部活の時間も限られている。そこでどのチームも考えるのが「効率化」です。

 効率化を考えるときに、一番重要なことは「成果に繋がるかどうか」です。成果に繋がらなければ、効率化の意味はなく自己満足の世界になります。様々なチームの練習を見る機会がありますが、効率化の名のもと成果の出せない練習になっている場合もあるので注意が必要です。

成果に繋がるスイングのやり方は?

【試合記事】2番セカンド・中野 拓夢(日大山形)より

 効率化の先には「量をやる」という流れになりがちです。数はこなしているけど結果が伴わないという流れになります。ちょっとした効率化の落とし穴です。

 例えば、冬の時期は1万本スイングしようというチームもたくさんあります。私はたくさん練習すれば成果に結びつくという考えは否定します。
 量をすることは大事だと思いますが、「その内容」(質)が大切なのです。なので、【質の伴った量】が理想になります。

  1万本のスイングをするときに、大抵のチームは1人でスイングをします。
 全体でスイングの時間を設けるにしても、掛け声をかけながら一定リズムで「こなし作業」のようにやります。そのほうが本数は増えていきます。

 本番で成果を出せるエントモ流スイングは、細かいイメージをします。

 本番のような感覚を描くために、18.44メートル先にいるであろう投手を見ます。そこから球が自分の方向に来るような目線で、ヒッティングポイントに来たらスイング(打つ)という感じです。

 目線だけじゃなく、頭の中で意識することはたくさんあります。

 【1】投げているのは右投手か左投手か明確にする(上投げ・横投げ・下投げ)
 【2】3パターンの場面を想定する
  1)ランナーなし
  2)二死二塁
  3)無死満塁
 【3】2パターンのカウントを想定する
  1)追い込まれる前(カウント0-0、1-1)
  2)追い込まれた後(カウント2-1、2-2)
 【4】打つ方向を決める(ゴロなのか、フライなのか)
 【5】ボールを見極める形を意識する(見る時間を意識)

市立川越高等学校(埼玉)のフリー打撃

 試合のように場面想定して振るということが重要です。
 よって【1】の投手については、できれば予選で対戦する「県下ナンバーワンの投手」を意識するべきです。
 【2】の3パターンの場面はランナーなしであれば、打者の役割は出塁することになります。理想はフライを上げることなく、速いゴロで野手の間を抜くことです。
 やるべきことが明確になれば、ボールの見極めと、速いゴロを打ちやすいベルトから低めの高さを振ろうと意識するはずです。

 成果を出すためには、何となくスイングしても効果は薄いのです。

 【3】のカウントも、追い込まれる前と追い込まれた後では打席内での考え方も変わります。
 追い込まれる前は、ある程度思い切って球種を絞って打てます。逆に追い込まれてからは、ストレートイメージの変化球対応が一般的です。
 カウントが変われば意識することもかわるのです。

 【5】の打ち方もスイングしている自分は自分を見ることができないので、もうひとりが正面や横、様々な角度から見てあげます。横から見て”タメ”が少ないのであれば指摘してあげます。体重移動のときに突っ込んでいるのであれば指摘するのです。

 私が推奨するスイングは、基本的に2人一組(振る人・見る人)です。1人で黙々と振るスイングはしません。
 本番想定をしながら打ち方の指摘修正をしながらスイングをします。これが成果に繋がるスイングなのです。

 このように本番想定しながらフォーム修正をしながらやるスイングは時間がかかります。
 私のやり方は、今回コラムテーマの効率化とは程遠い感じでしょう。単純に効率化を考えると、数を数えながら黙々とやるスイングのほうが量はこなせます。
 しかしながらここまで読むと、成果に繋がるのはどちらかということはお分かりだと思います。

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[page_break 守備練習は「ゆっくり」が基本]

守備練習は「ゆっくり」が基本

【試合記事】白鴎大足利 周東貴人より

 守備練習でも同じことが言えます。ノックの仕方を工夫して、数を取らせるやり方をしているチームばかりです。
 見た目は「作品」のように芸術的なシートノックするチームがありますが、私からすると「成果に繋がるかな・・」と思います。
 数を否定するわけではありませんが、エントモ流守備練習は「ゆっくり」が基本となります。

 何かミスが起きると、必ず全体を止めて「何が原因だったのか」を明らかにします。
 例えば、カットプレーでうまく外野から内野のカットマンへ繋げなかった場合、すぐに次の球をノッカーが打つのではなく原因追求に時間をかけるのです。

 ・外野手の軸足はしっかり強く踏めていたのか
 ・カットマン一枚目(外野寄り)の選手の場所はベストだったか(追いすぎ・追わなすぎ)
 ・カットマン二枚目(内野寄り)は一枚目の選手と距離を7mにキープできていたか(7m・・外野手の暴投時にちょうど二枚目がカバーできる距離だから)
 ・カットしたときのカットマンの軸足の踏み方は強かったかどうか
 ・カットマンの外野からの送球を呼ぶ声の大きさと動作が良かったか

【野球部訪問】近江兄弟社高等学校(滋賀)より

 ひとつのミスを掘り下げてチェックしないと、同じミスを繰り返します。同じようなミスを繰り返す守備陣は、「何がミスの原因か」を特定しないで、とにかくたくさん経験することばかり考えます。
 簡単にいえば、急いでノックを打っても結果的に身に付いていないのです。

 何となく感覚で動くのではなく、自分の身体をどう動かすかを考えながら、そして状況判断をしながら動くのかが守備陣です。
 ひとつひとつ整理しながらやる守備練習は、時間がかかります。ひとりの選手が受けるノックは必然的に少なくなります。

 今一度考えてみてください・・

 繰り返しになりますが、練習の先には成果がないといけないのです。
 自己満足な芸術的なマニュアルのようなノックをしても、本番では「想定外のこと」もよく起きます。それに対して慌てているようではミスが多発します。

 2歩進んで3歩下がるのではダメなのです。

 遅々としても後退することなく一歩一歩前進する練習をしたいものです。

 とにかく私の練習は「ゆっくり」で時間がかかります。
 守備機会でも「どのような場面なのか」「打者走者の走力はどの程度あるのか」などを考えながら捕球しないと、本番で慌てる選手になることでしょう。プレッシャーをかけての守備練習じゃないと意味がありません。

 理解して進む、本番を意識しながらイメージして行う。これ成果を出すためには鉄則なのです。

 見た目派手な練習は、本番で使えないものばかりです。効率化の名のもとに成果から遠ざかってはいけません。

 ・本番で使えるか
 ・成果に繋がっているか

 この2点を考えながら効率化をしていく必要があります。
 スイングは2人一組(振る人、打ち方を見て指摘修正する人)、ティーバッティングは3人一組(打つ人、投げる人、打ち方を見て指摘修正する人)が基本です。
 ノックは理解しながら普通のチームが5本打てるところを1本程度しか打たないゆっくり型です。

 やっぱり、どう考えても効率化とは程遠い感じです(笑)

 効率化の落とし穴に気を付けながら、今一度練習を見直してください。特に自主練習は、本番思考ですべてやらないと意味がなくなります。

 成果の出せる夏を目指して、実りある冬にしたいものです。

(文=遠藤 友彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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