北海道日本ハムファイターズ 陽 岱鋼選手
2013年、47の盗塁を積み重ね、北海道日本ハムファイターズ、球団史上初の盗塁王を獲得。それだけではない。自己最多の18本塁打を放つパワーを見せつけ、さらに驚異的な守備範囲を武器にチームの外野を全試合守り抜いた、陽 岱鋼。
その圧倒的なスピードはどのように生み出されているのだろうか。彼のスピードを象徴する大胆な一歩目の飛び出しの裏には、綿密な準備と、道具への徹底したこだわりがあった。
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盗塁王獲得の秘訣
――それでは前回に続き、走攻守の走についてお聞きします。2013年は47盗塁で盗塁王を獲得。何か意識をしたことはありますか?
北海道日本ハムファイターズ 陽岱鋼選手
陽 タイトルを獲ることに対しては、誰からのプレッシャーも特になかったですけど、プレーする上での目標でもありましたし、自分の名前を球団に残したいなという意識は強かったです。球団初ですからね。シーズンの最初は、チームの後輩の西川 遥輝がずっと盗塁をしていて、彼がトップだった。その盗塁を見ていて楽しそうだなと思って、実際に自分で走ったらやっぱり快感でした。チーム内にライバルがいて嬉しかったし、良い雰囲気でした。
――技術的な面で工夫はしましたか?一歩目がすごく速いなという印象ですが。
陽 一歩目のスタートは大事にしましたけど、そのためにも構えを大事にしました。自分が一番切りやすい形を探さないと、一歩目のスタートは踏み出せないと思います。
その形は色々探しましたね。右肩を下ろしてみたり、左肩を下げて腕を下ろしてみたり。でも片方を下げるとバランスが崩れると感じたので、僕の場合、両手を腿の上に置くようにしました。そうするとバランスもとれるし、キャッチャーから見て「あ、これは走る雰囲気じゃないな」って思わせることが出来るんです。片側に体重をかけるようにして「行くぞ!」と見せかけて揺さぶりをかけるのも良いけれど、それよりはバランスや、自分の中のスタートの切りやすさを重視していきたいです。
――切りやすいスタート、というのは練習で習得できるものですか?
陽 そのスタートの切りやすさは、自分にしかわからないので色々探してほしいですね。高校生であれば、他の人の真似をするのも大事です。でも、その構えやスタートを自分の体、筋肉で出来るかどうか。そこはそれぞれ違っていて自分にしかわからないので、色々練習して探してみて、自分の形を見つけてほしいです。
――それでは走攻守の守。守備でも一歩目が速い印象ですが、それも練習で鍛えられますか?
陽 そうですね。練習から意識をする、ということが大事です。そうでないと、試合ではスタートの反応が出来ないと思います。どうして僕の一歩目のスタートが速いのかというと、しっかり準備が出来ているからなんです。スタートを切る前の準備が大切。
――どういう準備をするんですか?
陽 予備知識を入れる、ということをします。このピッチャーはこういうボールを投げる。だから詰まりやすい。このバッターは引っ張りが多い、このバッターはこの場面だと流し打ちをしてくるだろう、とか。そういう情報を自分の中に入れておかないといけない。それを知っていれば一歩目のスタートが切れる。ピッチャーが投げる前に考えて予測しないと。それが無いと、「あ、投げた」と思った時にはもう遅いですから。
[page_breakスピードを出すために必要なこと]スピードを出すために必要なこと
――知識を入れて準備をする。参考になります。それでは、スピードをさらに引き出すために、道具にはこだわりはあるんですか?
陽 足は大事なものなので、スパイクには何よりもこだわりがあります。インソールは特にこだわっています。ナイキさんに、ここをもう少し薄くしてほしいだとか、厚くしてほしいだとか色々言って、色んなものを持ってきてもらっています。地面を蹴る時の感覚が大事なので、球場によってインソールを変えます。土の球場、人工芝の球場。人工芝でも短い、長い、色々ありますよね。そこはこだわりがあるので使い分けています。
土であれば柔らかいので、インソールは薄い方が地面をつかみやすい。人工芝だったら硬いし、自分の足を守らなきゃいけないからちょっと厚めのものにするとか。
――こだわっていますね。そんなこだわりのスパイクに一番求めるものは?
北海道日本ハムファイターズ 陽岱鋼選手
陽 蹴る感覚とかフィット感…こればっかりは僕しかわからないですね(笑)。ここ、もうちょっと噛む感覚がほしいな、とか。でもそういうものもナイキさんに言うと細かく答えてくれるんです。足のサイズもきちんと計ってもらいました。やっぱり右と左とサイズが違うんですよ。そういうのもわかって、一生懸命やってくれるんです。だから感謝してます。注文にも答えてくれるし、「どうですか?」って聞いてきてもくれるので、僕も遠慮なく言ってますね。だから相棒みたいな感じです。ナイキさんと一緒にやれてうれしいですね。
――スパイク選びのポイントってありますか?
陽 自分で色々履いてみてほしいです。高校生だと値段のこともあるし難しいと思うんだけど、でも自分が気に入った良いものを買うっていうのも良いですよね。そうすれば絶対大事にするし。僕もそういう経験あります。毎日スパイクを磨いてました。
ナイキのスパイクって重たいイメージがあるかもしれないんですけど、そういうのももう無くなりました。実は僕も昔、履いていて合わなかった時もあったんですけど、改良して改良して、どんどん変わっていって。今はもう世界でもナンバーワンのスパイクじゃないかなって思ってます。軽さもあるし、高校生にもお勧めできます。それにナイキって、高校生もそうだけど大人も、カッコいいってイメージあるし好きな人多いと思いますしね。
――それでは、スピードを出すための肉体的なトレーニングって何かしましたか?高校生はどうすればいいでしょうか?
陽 自分が高校生の時は、走れ!って言われました。それも大切だと思いますけど、僕は柔軟性が大事だと思います。だから僕は常にストレッチをしていますね。空いている時間だとか、ちょっとしたときにはいつもやっています。身体が良い状態、リラックスした状態になれますしね。身体が硬いとケガもしやすいですし。
(ストレッチを)することで、自分がどこまで走れるのかっていうのもわかるんです。今日の自分の限界はここまでだなって、自分の筋肉、身体を知ることでわかる。それを知るにはストレッチが一番いいんです。だからどうしても走るのを速くしたいんだったらストレッチ。これはもうしっかりしないとダメですね。それをすればケガも減ってきます。技術の前にカラダ作りですね。
――守備も盗塁もそうですが、道具をこだわるのはもちろん、肉体的にも頭脳的にも準備をすることがスピードを出すためには必要ということですね。
陽 そうです。それと、リラックスをすることですね。リラックスをすると物事を冷静に考えられますし、スピードを出すための力を出しやすいと思います。
――リラックスをする、というのもなかなか難しいですよね。
陽 難しいですね。練習に集中するのも大事だけど、あとは、ちょっと遊びの感覚を持った方が良いかなと思います。そうすればカラダもリラックスできますし。僕もそうやってみたらリラックスできて、プレーも良くなったので。そうやって野球の楽しさを知っていってもらえたらいいなと思います!