試合レポート

石巻vs登米

2010.07.17

2010年07月16日 愛島球場

石巻vs登米

2010年夏の大会 第92回宮城大会 2回戦

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HRを放った熊谷(登米)

気持ちが乗った放物線

「3年生が3人しかいなかったので一人ひとりとの思い出が多くて、悔しい。3年生ともっと野球をしたかった」。
試合後、登米の熊谷亮太(2年)が、目も顔も赤くして心境を語った。

 

3回表に2点を先行したが、その裏、あっさりと逆転を許した登米。4回裏にも1点を失う。
5回が終了し、2-4。グラウンド整備が入る。点差は2点。試合はまだ半分だ。
6回表、登米の攻撃。3番・大立目裕也(2年)は初球をファーストゴロ、4番・渡邉純(3年)は2球目をセカンドライナー。3球で2死を奪われた。

その様子をネクストバッターズサークルから見ていたのが、5番・捕手の熊谷だ。「とにかく、後ろにつなごう」。4、5回と三者凡退に抑えられ、走者を出していなかった登米。塁に出れば、チャンスは絶対にやってくる。そう信じて、この日3回目の打席に向かった。

 その初球。思いっきりバットを振りぬいた。打球は高々と上がった。「伸びてくれ」――。そう思いながらも「レフトに捕られるかな?」。悪い結果も頭をよぎる。
1塁ベースを回り、2塁ベースに到達する時、なんだか、周囲が盛り上がっている。レフト方向を見ると、ボールが柵を越えているのが分かった。人生初の柵越えは、1点差に迫るソロアーチ。3塁ベースを蹴ると、雄叫びを上げた。

 登米の3年生は、4番の渡邉と8番・レフトの大久保聡、背番号10の二戸博の3人だけ。レギュラーは7人が2年生というチーム構成だ。その中の扇の要を担う熊谷。
「どうやって引っ張っていくか、指示を出すのにプレッシャーがあった」。
2年生が中心でも、やっぱり、3年生がいる以上、自分が指示を出していいのだろうか――。
仲はいいけど、その3年生にだって言っていいのかな――。
頭の中をグルグルと駆け回る。それを解決するために、佐藤克行監督に相談した。「チームが俺にかかっているという気持ちで、思いポジションだけど、視野を広くしてプレーしなさい」。
その一言で気持ちが楽になった。打撃も甘い球が来たら強振していたが、チームを思うとつなぐためのスイングをしなければならない。佐藤監督と佐藤和之部長からアドバイスをもらいながら、シャープなスイングが出来るフォームに変えていった。持病の腰痛のためにも、シャープなスイングは効果的だった。打席ではボールカウントを考えて、冷静に対処できるようになった。

 「(熊谷は)2年生になって、伸びてきた。クリーンナップを決めかねていたところに伸びてきたから」と佐藤監督。堂々の5番に座り、この日、大きな放物線を描いた。
 気持ちが優しい分、捕手としてチームをどうまとめればいいか悩んだが、今は自信を持って要でいられる。常にフルスイングだったバッティングは、状況に応じた打撃ができるようになった。自信を持って、夏の初戦(2回戦)に臨んだ。
試合は熊谷が本塁打を放った直後の6回裏に2点、7回裏に3点を失った。3-9で迎えた8回裏には2死からライト前ヒットで走者を出すと、石巻の3番・高橋拓史主将が右中間を真っ二つ。1塁走者がホームを踏み、7点差がついたため、コールドで試合は終わった。

「3年生と一緒にやっていて、果たせなかった目標が次の目標。100%のキャッチボールと100%のバントと100%の自分たちの野球をすること。これからは1戦、1戦、3年生の思いと共に勝っていきたい」。
決意新たに、熊谷はラスト1年のスタートを切った。

(文=高橋 昌江


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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