広陵vs如水館
有原が好投!
故障明けの有原が好投!広陵野球の幅を広げる新戦力も
2年連続同一カードによる決勝戦。広島広陵がリベンジを果たし、2年ぶり20回目の甲子園を決めた。センバツ4強右腕・有原航平投手(3年)が、被安打4安打、無四球完封。多彩な攻撃と抜かりない守備力の高さも見せつけた。
「有原が、大会前にひじを痛めまして。万全ではない中で、よく投げました。甲子園までゆっくりさせてあげたいです」。
優勝インタビューの中井哲之監督の言葉に、耳を疑った。有原のピッチングが、けが明けとは思えぬ内容だったからだ。1試合平均9得点の
如水館を相手に、カーブでカウントを取りながら、常時130キロ台後半のストレートで攻め続けた。最終回の126球目に最速143キロもマークした。3ボールになったのは4度だけ。見事な無四球完封だった。
6月20日の
との練習試合を最後に、約2週間ノースロー。初めてのひじ痛に動揺し、「珍しく本人から」(監督)、痛みを訴えてきた。
「ストレートを投げるときが一番痛かった。大事な大会前なのに黙っていたら、いつか迷惑をかけると思って、言いました」(有原)。
後の検査で骨に異常はないと知って一安心。今大会初登板は21日の3回戦。以降、リリーフを中心に少ないイニングを投げながら調整してきた。大一番の今日が初完投だった。
「今は痛みはありません」(有原)。
「今日は痛みの怖さも無くなって投げていましたね」(監督)。
福田周平主将(3年)は「甲子園ではもっと有原を援護したい」と、力強く語った。
点差は2点。それ以上に差を感じる試合だった。
広陵は簡単に1アウトを与えない。印象的だったのが4回1死一塁。打席の渕上真遊撃手(3年)は、最初から送りバントの構えだ。ところが、ボール球を2球連続で見送った。いずれも、ストライクゾーンから大きく外れるような球ではなかった。それでも低姿勢でしっかり見極めた。そしてカウント1-2からの4球目、ヒッティングに切り替える(ファール)。エンドランだった。如水館の内野手は、この揺さぶりに中間守備。5球目、追い込まれたこともあり一走が盗塁を仕掛ける。このように、わずか1打席の中でありとあらゆる攻めを見せて、相手にプレッシャーをかけていく広陵。先制点もエンドランでもぎ取ったもので、5回には2死から徳田真優三塁手(3年)がセーフティ(内野安打)でチャンスを作っている。
攻撃だけではない。8回の守備だった。無死一塁で、
如水館の森兼堅二捕手(3年)の打球は丸子達也一塁手(2年)の前へ。ところが、併殺を狙った丸子の送球が逸れ、渕上が二塁ベースから3歩ほど離れて捕球。誰もがオールセーフだと思った。すると、渕上。一塁走者がスライディングの勢いでベースから一瞬離れたのを見逃さなかった。すぐにタッチアウト。走者を含め
如水館側が離れていないとアピールするのが、分からなくもなかった。それぐらい、わずかな離塁だったからだ。
渕上は、センバツの後に初めてベンチ入り。守備力を評価されてレギュラーも奪った。7番打者ながら、今大会18打数8安打。前述のような攻めもできる嫌らしい選手だ。新戦力の台頭が、広島広陵を一回り大きくさせている。
(文=矢島 彩)