鹿児島実vs九州学院
気合の入ったピッチングで1失点完投・野田投手(鹿児島実)
左腕同士の投げ合いを制したのは
九州学院・大塚尚仁(1年)と鹿児島実・野田昇吾(2年)。今夏の甲子園でも登板した両左腕の投げ合いは、2年生の野田に軍配が上がった。
初戦(熊本国府)では被安打12で失点10、準々決勝(藤蔭)でも7回失点3ながら10本のヒットを浴びでいた野田。この日は9回を103球、被安打5、奪三振5、失点1。今大会3試合目で初めてらしさを見せることが出来、試合が終わると渾身のガッツポーズを見せた。
鹿児島実の選手にとって、この日の相手・九州学院には特別な思いがある。今夏の甲子園3回戦(2010年8月16日)で対戦し、7対8で敗れているからだ。「選手は3年生の負けを取り返したい気持ちがあったと思います」と宮下正一監督。野田もこの時は5回から登板し、延長で決勝点を奪われている。
「夏は自分のせいで負けたと思っている。3年生からもしっかり投げてこいと言われてきましたし、絶対に九州学院を倒したかった」
と気持ちの強さは普段以上だったことを強調。
大塚投手(九州学院)
この日は序盤から球の走りが抜群で、制球も良かった。準々決勝まではセットポジションで投げていたという野田は「軸がぶれていた」という理由から、1日の休養日の間にワインドアップにすることを決意。この日はそれも効果覿面だった。
甲子園で野田から本塁打を放った九州学院の4番・萩原英之(1年)も、「気持ちが入っていて、甲子園の時とは全然違いました」と脱帽。
4回にこの日初四球から1点を失った野田。その裏、先制打を放ち、守備でも再三の好プレーでエースを支えてきたセカンドの杉山正(2年)が走者と交錯して太ももを負傷。さらに5回の打席で一塁へヘッドスライディングした際に悪化してしまった。
テーピングで固めたが満足に走ることができず、本人から「ダメです」というサイン。無念の途中交代をマウンドから見ていたエースはさらに気合が入った。
「杉山のためにも、何とか自分が頑張らないとと思いました」
と5回裏の三者凡退は気合みなぎる見事なピッチング。これでリズムが戻った野田は6回以降、九州学院打線に二塁すら踏ませなかった。
9回に貴重な追加点を挙げて秋としては15年ぶりの決勝進出を決めた鹿児島実。甲子園を経験した左腕が今度は神宮の舞台を目指す。
(文・撮影=松倉 雄太)