試合レポート

倉敷商vs宇部鴻城

2011.06.07

倉敷商vs宇部鴻城 | 高校野球ドットコム

優勝した倉敷商ナイン

新しい境地

好調だからこそ粘り強さも発揮できる。

5回裏、1点ビハインドの倉敷商は、宇部鴻城の先発・金丸将から3つの四球を選び、1死満塁。ここで登場したのはプロ注目の4番・川合祐太朗である。

この日の川合は、1打席目で「詰まったんですけど、ある程度は手応えありました」というあわやセンターオーバーかと思われる大飛球を放つと、2打席目では、インコース低めのストレートをマスカットスタジアムの右翼スタンドへ突き刺さる高校通算21号本塁打を放り込んでいた。そのスイングからは、打てるオーラが漂っており、いわば好調であるいうことがみてとれるかのようだった。

そして、これほどの見せ場はないといえるほどの場面を迎えた。

それに対し宇部鴻城ベンチも動いた。先発の金丸に代えて、今大会2試合17イニングを投げてわずか1失点、さらに最速143キロもマークしている2年生エース・笹永弥則をマウンドに投入した。

倉敷商ベンチからの指示は「次のバッターもいるから繋げるように」。

そんな指示に川合もこう思った。

「自分だけでやっているのでない。5番の大山(貴広)も打つバッターなので、繋げばなんとかなると思いました」


倉敷商vs宇部鴻城 | 高校野球ドットコム

ファールで粘る川合(倉敷商)

カウント、3ボール2ストライクになってからも必死で食らいつき、計4つのファールを打つなど、代わったばかりの笹永に計9球を投げさせ、同点となる押し出しの四球を選んだのだ。

本塁打のあとに粘りに粘って四球を選ぶことができることも、ある意味、さすがプロ注目の4番打者である。
そしてその直後、5番・大山の三塁ゴロで1点、さらには6番・岡田聖司が左前へ2点適時打を放ち、この回に一挙4点を奪った。これで試合の主導権を握った倉敷商は、5回から笠原浩平をリリーフした西隆聖が5回を被安打1の無失点に抑え、2年ぶり2度目の中国大会優勝を果たした。

試合後、倉敷商の森光淳郎監督は「相手の先発・金丸投手はいい投手でした。打てなくてもバントと走塁、それに守備ですね。それをしっかりとやる意味でも明後日から始まる合宿では、精神力の向上を含め、一から基本を徹底的にやります」と気を引き締めた。

それは本塁打を打っても、おごらず、次の打席で粘って四球を選んだ4番が示してくれたように、どれだけの成績を残しても新しい境地を見出そうとしているチームの向上心が垣間見えた瞬間でもあった。

(文=アストロ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.26

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.25

昨夏甲子園16強・北海の卒業生進路紹介!元巨人外野手の息子らが中央大、147キロ右腕は社会人へ

2024.06.25

【南北海道】函館支部では第3シードの函館西と函館大有斗が初戦に挑む【2024夏の甲子園】

2024.06.25

【南北海道】室蘭支部では、第2シード苫小牧工が代表決定戦進出を狙う【2024夏の甲子園】

2024.06.25

【滋賀】組み合わせ決まる!近江がいきなり彦根東と対戦<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.26

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在41地区が決定、長崎、高知、新潟、大分などでシードが決まる〈6月10日〉

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】