市立呉vs広島工大高
柏尾篤哉(市立呉)
柏尾、ケガを乗り越え12K!呉が初戦突破
序盤の三振ラッシュは想定外のできごとだった。「僕は打ち取るタイプなんで…」。満足感に浸ることはなかった。市立呉のエース右腕、柏尾篤哉投手(2年)は苦笑いするしかなかった。
3回まで8奪三振と飛ばした。直球、変化球ともに切れていた。MAX141キロの直球、スライダーに縦のカーブを有効に使って、相手打者のバットの空を切らせた。三振奪取のハイペースぶりは、今夏の大会で熱中症の影響から没収試合となり初戦敗退した広島工大高の闘争心を削ぐような勢いだった。
その反動が4回以降にくる。スタミナが切れてから連打を浴びて失点につながった。何とか完投しながらも3失点。三振の数も12個に終わった。「チームに助けられて勝てました。みんなのおかげです」。柏尾は申し訳なさそうに試合を振り返った。
新チームになってアクシデントが続いた。柏尾は8月中旬、左すねに打球を当てた影響で一時的に走り込みができなかった。また、捕手で4番の長内匠(2年)も足に違和感を抱えたまま今大会に臨んでいる。「柏尾は走り込みができなかった。リーグ戦でも無理して投げさせた。調整がうまく行かなかった部分がある」。尾道商を甲子園に率いた経験のある中村信彦監督の表情もスッキリしなかった。
柏尾は1年生夏から試合で投げ続けた。1年秋からエースとして君臨したものの、秋は広島国際学院(3回戦)、春は広陵(3回戦)、夏は広島新庄(準々決勝)と強豪校の壁を乗り越えられなかった。期待された逸材も最上級生になった。「この秋は中国大会が広島で行われるので、絶対に県でベスト4に入って中国大会で勝ってから甲子園に行きたいです」。経験豊富なエースは前を見据えていた。
(文=中牟田 康)