淡路vs関西学院
北坂智久投手(淡路)
あっぱれ!2安打完封!!
前半は関西学院の木村聡司(3年)と淡路の北坂智久(3年)による投げ合い。木村は毎回のように走者を背負いながら、北坂は関西学院打線をほぼ完璧に抑えるなど、両エースが持ち味を存分に生かして無失点に抑えていた。
均衡が破れたのが5回裏。淡路は1死から8番大黒周平(2年)がヒットで出塁すると、9番正司京也(2年)の1球目が暴投となり二塁に進む。正司は3球目を三塁線へバントしこれがヒットに。そして1番高鍋康資(2年)がレフト前へタイムリー。打った瞬間にどや顔でベンチに目をやったのが、この先取点の持つ意味を物語っている。さらにスタートを切っていた正司がこの打球で三塁まで陥れた。「あれが大きかった」と讃えた川端太一監督。
日頃から力を入れている積極的な走塁が、肝心な場面で次の矢を放つ布石になった。
その矢とは、2番の人位厳(3年)が仕掛けたスクイズ。ファウルで失敗にはなったが、守る関西学院の野手陣が策をさらに深く考えることに繋がった。この後、強攻した人位の打球は、木村の足を弾いてファースト方向へ。抜群のスタートを切っていた正司が2点目となるホームベースを踏んだ。
折り返しの前の5回に先制し、グランド整備後の6回の守りを三者凡退で切ったエースの北坂。その裏、代わった関西学院の左腕・長谷篤(2年)から、先頭の4番桑名剛生(3年)が三塁打を放つ。続く5番山口祐司(3年)がライト前へ運んで3点目を挙げた。
完全に流れを掴んだ淡路。8回にも三番手・矢野優輔(2年)の代わりっぱなを叩いて4点目。
「最高のピッチングだった」という北坂は、関西学院打線を2安打1死球と3度しか走者を許さず、わずか78球で完封した。
「淡路高校さんは強いと思っていた。敵ながらあっぱれですね。さすが淡路支部の(秋春)チャンピオン」と最大級の賛辞を送ったのは敗れた関西学院の広岡正信監督。
淡路・川端監督は、「調子が良ければ、北坂はポンポンとストライクを取れるピッチャー。ウチとしては、思い通りの試合ができた」と振り返った。
実は2週間前の14日にも両校が練習試合を行い、関西学院が完勝していたと両指揮官は明かした。この時は、関西学院の1番八木亮介(3年)が2本塁打を含む5打数5安打と大当たりしていた。その経験を踏まえ、「八木君に打たれてはいけないと気合が入っていた」と立ち上がりに細心の注意を持ってゲームに入った北坂。結局、プレイボール直後の第1球ショートゴロに打ち取り、三者凡退への流れを作った。
後は完全なる北坂のショータイム。背筋力を生かした力強い投球フォームから威力のある球で相手打線を手玉に取った。
見事な2安打完封に抱き合う淡路バッテリー
昨秋は県大会で初めてのベスト8ながら、敗れた育英戦で打たれたことを悔やんでいたという北坂。
「気持ちの面で問題があった」と内角を思い切って投げられなかったことを課題として冬の練習に取り組んだ。
打者を立たせて徹底的に内角を突く投球練習。この日は、その成果が存分に発揮されていた。
チームとしても県ベスト8は自信にもなり、課題もたくさん見つかった。それに同じ淡路島の洲本が甲子園に出場したのも、大きな刺激になっている。春も淡路支部予選をしっかりと勝ち上がり、この日は秋の準優勝校を破った。一つ、一つグレードの高いゲームを体験することで、限りなく上がる経験値。次(30日=東洋大姫路戦)も非常に楽しみな淡路の戦いぶりだった。
一方、敗れた関西学院。広岡監督は、「練習試合で打ち過ぎたのがいけなかったのですかね。2安打ではどうしようもない…」と攻撃でほとんど何もできなかったことに肩を落とした。
ポイントはいくつかあるが、指揮官が挙げたのが5回に8番山崎泰資(3年)が初ヒットを打った時のこと。
「初めてのヒットだったので、喜びすぎちゃったのですかね」。
チームが相手投手に苦しめられている状況だったが、やはり『ヒット1本くらいで喜びすぎてはいけない』と言っているようでもあった。
結局この攻撃で、点が取れずに、その裏に先取点を奪われた。後半は、早打ちになってしまい、北坂を助けた形だ。
「好球必打ではなく、〝悪球〝必打といいますか。そういう球に手を出してしまった」と嘆いた広岡監督。打てない時に、いかにして粘って好機を引きだすか。78球で完封されたが、果たして100球を超える形に持ち込めていれば、完膚なきまでに抑えられる確率はグッと低くなっただろう。
「高い授業料でした」。
そう言い残して広岡監督と関西学院ナインは球場を後にした。
スターティングメンバー
【関西学院】
8八木亮介、5江川遼治、9久保雄太郎、3中田盛太、7横山就人、2岡本健也、4山崎泰資、6安達勇太、1木村聡司
【淡路】
8高鍋康資、6人位厳、1北坂智久、3桑名剛生、2山口祐司、7濵田道規、4永西俊揮、5大黒周平、9正司京也
(文=松倉雄太)