天理vs高田商
立ちはだかる強豪私学の壁
「この敗戦は、正直、痛いですね」。
1回に4点を先制、1、2回戦の勢いをそのままに強豪・天理に立ち向かった奈良高田商だったが、中盤に追いつかれ、サヨナラ負けを喫した。
「ウチが勝つとしたら、先制して、中押しして押し切るっていう展開。1回に4点が取れたんで、この展開ではコールドを狙うくらいでいきたかった」
奈良高田商・豆越監督の言葉も歯切れが悪い。
豆越監督が母校の監督に就任して3年目になる。
三浦大輔(DENA)を輩出するなど、もともと、県内の上位チームではあるが、ひとつのスパイスとして、豆越監督はチームに変革をもたらしてきた。
前回のリポートでも書いたが、私学の強豪校が、今マークする学校の1番手に上がるのが奈良高田商である。それは過去の実績がそういう印象を与えてきたからだ。
昨夏はベスト8で、一昨年夏はベスト4。昨年1年間は3大会とも智弁学園に敗退。夏のベスト4時は天理。常に敗れてきたのは私学2強の天理・智弁学園だった。言い換ええば、天理と智弁学園とやるまでは負けないのだ。
今大会、奈良高田商にっとてチャンスだった。
天理が昨夏の不祥事から復活途上にあるということ。エースの中谷が怪我でベンチを外れ、主砲・吉村も故障からスタメンでは出られない状況だ。ここ数試合の奈良高田商の勢いからしても、勢力図を変えるチャンスだった。
1回表に天理の先発・山本の立ち上がりを攻めて4点を先取。今の奈良高田商の勢いそのままの、先制パンチだった。即座に2点を返されるも、4回表には山本の制球難に付け込んで、4番・田中、5番・古川の連続タイムリーで2点を追加した。先制して中盤に押し切る形までは作ったのだ。
ところが、6回裏、試合の潮目が変わる。
天理は2死・2、3塁から8番・井上のバットが空を切ったが、これがワイルドピッチになり(振り逃げ)、1点を還す。すると、ここで名将・橋本監督が動いた。
9番・関屋に代えて、本来は投手の漆原を起用したのだ。
漆原は右中間を破る適時三塁打を放ち、2者が生還。1番・東原の適時打で同点。2番・隈元四球のあと、3番・綿世が逆転適時打を放った。
井上の三振で終わっていたものが、振り逃げとなると、そこから一気にたたみかけてきたのである。
奈良高田商は8回に同点。9回表に、一時は逆転するなど意地を見せたが、こういう展開では天理に分がある。9回裏、1死2、3塁から、漆原・東原の連続タイムリーで勝負あった。
「野球って不思議ですよね。センバツを経験して場馴れしているはずの天理が初回にアタフタしたと思ったら、6回裏は振り逃げからですからね。(先発の)東野はショックだったと思いますよ。そこが勝負勘のなさというか。(天理との)違いやったのかなと思います」
4大会連続で強豪私学に散った奈良高田商。
まだ、壁は厚いようだ。
(文=氏原英明)