試合レポート

横浜vs東海大高輪台

2012.05.19

[気象予報士ライターの観戦レポート]

 今月初旬、過去最大級の竜巻が北関東地方に発生し、甚大な被害をもたらした。
竜巻はどこでも発生し得る気象現象であるが、特に風の水平シアが大きいところ(風向差の大きい風がぶつかるところ)、つまり山間部よりも北海道や関東平野のような広い平地の方で発生しやすいと言われている。
しかし、竜巻は猛烈な威力を有する一方で、低気圧や前線のような大規模なじょう乱に比べ水平スケールが小さく、また寿命が短く、さらに発生頻度自体が低いため、今日の気象技術では予測が非常に難しい。 そのため、近年、気象庁が発表している「竜巻注意情報」の的中率は、わずか1%程度であり、予測情報としては、非常に「空振り」が多い。
しかし、打撃と同様、「見逃し」よりは、「空振り」の方がBetter(ベター)なのであり、今回の竜巻被害を基に、今後も気象庁には「空振り」を恐れずに竜巻注意情報を発表して市民の注意を喚起して欲しい。

 

そして、もし試合中、地上から上空の積乱雲に延びる、「ろうと状の気流」を発見した際は、監督、選手のどなたでも遠慮なく審判に通知して試合中断を決定して頂き、より安全な屋内に速やかに避難して頂きたいと願うばかりである。

この日の[stadium]さいたま市営大宮球場[/stadium]は晴天に恵まれた。
気温24.1℃、風は西南西1.5mとやや逆風、春季大会とはいえ、もう初夏とも言える強い日差しの中、試合開始。 関東大会の常連とも言える強豪の横浜と、初出場の東海大高輪台の対戦。 両校とも、県大会、都大会で厳しい接戦を勝ち抜き、準優勝で関東大会への出場を決めており、伝統校とフレッシュ校の好ゲームが期待された。

プレーボールの直後、横浜は1番浅間が、東海大高輪台の先発佐藤の初球を叩き、一、ニ塁間を抜くライト前ヒットで出塁すると、2番宍倉和磨が堅実に送りバントでランナーをニ塁に進める。
その後、ニ塁ランナーの浅間が盗塁に成功すると、3番樋口龍之介がライトへ犠牲フライを放ち、横浜らしい速攻で早くも1点を先制した。
しかし2回以降は、各打者がライナー性の大きな当たりを飛ばすも、東海大高輪台の外野陣の堅い守備に阻まれて無得点が続く。
一方、東海大高輪台も、横浜の先発左腕、田原啓吾の速球と緩い変化球を織り交ぜた投球になかなかタイミングが合わず得点できない。 5回が終了し、スコアは1対0のままグラウンド整備に入った。


 そしてグラウンド整備の終了後、試合が動く。
6回表、横浜は2番宍倉が初球からレフトオーバーの二塁打を放ち、続く3番樋口がバントでランナーを3塁に進めると、4番高濱の打球は左中間を抜ける二塁打となってようやく追加点を挙げた。
さらに5番尾関が四球を選び、6番長谷川のショートゴロでランナーニ、三塁となったところで、バッターは7番田原。
ここで田原は、しぶとくセンター前ヒットを打ち、自らのバットで貴重な2点を入れ、4対0。さらに続く7回表は2番宍倉、3番樋口の三遊間を抜く連続ヒットの後、4番高濱がライト前に今日2打点目のタイムリーヒットを打って5対0と東海大高輪台を突き放した。
試合は5対0のまま、最終回を迎える。
9回裏、5点リードの横浜は、ピッチャーを田原から中島に代え、1アウトの後、さらに中島に代えて相馬を投入。しかし、ここまで3安打に抑えられていた東海大高輪台打線が相馬に対し、2番渡辺、3番望月、4番大口の3連続ヒットで1点を返し、なお一死一、ニ塁とチャンスが続く。
しかし、横浜は再び先発の田原をマウンドに戻し、東海大高輪台の後続打者を討ち取ってゲームセット。 5対1で横浜東海大高輪台を下した。  

横浜は1回の先制点の後、なかなか追加点が入らなかったが、グランド整備で時間が空いた後の6回、また先頭打者の初球攻撃からチャンスを作って得点した。
さらに、その追加点後の渡辺監督の采配が光った。長谷川のショート正面へのゴロでは、併殺でスリーアウトになるところだったが、エンドランを仕掛けていたことでアウトは一塁のみとなり、ニ、三塁にランナーが残った。
そして7番田原に貴重な2点タイムリー。 横浜の試合巧者ぶりが発揮された場面だった。
しかし最終回、3番手ピッチャーの相馬が1アウトも取れずに降板しての勝利は、何とも後味が悪かった。エースの柳裕也が肩の違和感によりしばらくピッチングから遠ざかっており、本大会だけでなく、これからの夏の県大会を勝ち進むには総力戦は必至と考えられ、その意味で相馬の活躍はチームに不可欠だ。 是非、次回リベンジして欲しい。

一方、東海大高輪台は横浜に力負けしたものの、初出場ながら、最終回には3連打で得点して意地を見せ、また2番手ピッチャー、井上も好投して終盤の横浜打線を無得点に抑えた。 この敗戦を糧として、これからも夏の都大会に向けて頑張って欲しい。

(文=松田祥二郎)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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