試合レポート

明徳義塾vs岡豊

2012.05.19

明徳義塾vs岡豊 | 高校野球ドットコム

7回90球3安打無四死球8奪三振無失点と復活を印象付けた福丈幸(明徳義塾3年)

明徳義塾、帰ってきたエースの活躍で夏の第1シード王手!

高校生スポーツ選手にとって「熱い夏」は甲子園だけではない。野球以外、ほとんどの競技に関わるアスリートにとって、夏の燃焼を目指すべき場所は、今年は北信越地区での開催が決まっている「全国高等学校総合体育大会」である。そしてこの5月下旬から6月初旬はその「北信越かがやき総体」各県代表が次々と決まる時期。高知県でも例外ではなく、現在(5月19日から21日まで)「第65回高知県高等学校体育大会」が開催され、県内各所で熱戦が繰り広げられている。

ただ、高知県高等学校体育大会には1つ他県には見られない例外がある。この時期、他県であれば球児たちは練習試合に出かけたり、他競技の応援に赴くことが通例であるが、高知県では硬式・軟式野球競技も同大会に「野球の部」として参加することになっているのだ。

さらにそこには親善試合要素は全くない。特に春季大会までの公式戦(高知県新人大会、秋季高知県大会、秋季四国大会、春季高知県大会)勝利ポイント上位7チームと4月の地区予選を突破した9チーム、計16チームによって優勝を争う「硬式野球の部」は彼らにとってことさら重要な大会だ。

なぜなら、高知県の夏のシード決定は先に記した4大会と、春季四国大会、そしてこの大会での勝利ポイント上位4チームがそのまま夏のシード権を獲得することになっているから。すなわち、この大会の1勝、1敗が夏の天国と地獄を分ける要素になりかねないのである。

となると、重要なのは現在のポイント順位である。これらの要素を前提に各校の勝利ポイントを計算し、さらに同ポイントで並んだ際の上位認定案件(1位獲得回数・準優勝獲得回数・3位獲得回数・ベスト4獲得回数・1試合平均失点・得失点差の順)を勘案すると全日程消化、かつ優勝で4ポイント獲得が最大となる(雨天等で順延の際も3日間で大会打ち切りのため)今大会を前に、夏のシード権獲得可能性があるのは以下の7チームとなっている。

1位:明徳義塾 22ポイント 
*優勝3回(秋季高知県大会、春季高知県大会<チャレンジマッチ勝利>、春季四国大会)ベスト4:2回(高知県新人大会、秋季四国大会)

2位:高知 17ポイント
*優勝1回(高知県新人大会)準優勝2回(秋季四国大会、春季高知県大会<センバツ出場で県大会不参加もチャレンジマッチ敗退>)、ベスト4:2回(高知県新人大会、春季四国大会)
3位:土佐 11ポイント
*準優勝1回(春季新人大会)、ベスト4:2回(秋季高知県大会・春季高知県大会)

4位:高知商業 9ポイント
*準優勝1回(秋季高知県大会)ベスト4:1回(高知県新人大会)

5位:高知中央 8ポイント
*ベスト4:1回(春季高知県大会)

6位:須崎 7ポイント
*準優勝1回(春季高知県大会)

7位:室戸 6ポイント

*参照:高知県高等学校野球連盟算出データ

注釈
1.原則、高知県内及び秋・春の四国大会公式戦での勝利をそのまま勝利ポイントとする。
2.全国大会(夏の甲子園、明治神宮大会、センバツ)での勝利は勝利ポイントとせず。
3.昨秋高知県大会優勝校(明徳義塾)には秋季四国大会でのシードポイント1ポイントを付与。なお、同大会3位決定戦の勝者(今回は高知)に勝利ポイントは付与しない。
4.センバツ出場校(高知)には春季大会優勝校(明徳義塾)と同じ5ポイントを付与。
5.新人大会予備選、及び高知県高等学校体育大会硬式野球の部(以下「今大会」と表記)支部予選(東部、高知、高吾、幡多の各地区)における勝利は組み合わせ上の不戦勝含め、そのまま勝利ポイントとして認定。
6. 前年の高知県新人大会から夏の高知県大会までの勝利ポイント総数の順に決定する高知県新人大会シード校(昨年は明徳義塾、高知、高知商業、土佐、岡豊、室戸、高知追手前、須崎工業の8校)には2ポイントを付与。
7.今大会シード校(勝利ポイント上位順に明徳義塾、高知、土佐、高知商業、高知中央、須崎、室戸の7校)には2ポイントを付与。


明徳義塾vs岡豊 | 高校野球ドットコム

2年前の同大会で鮮烈デビューを飾った杉原賢吾(捕手・明徳義塾3年)

すなわち、明徳義塾は今大会で準決勝まで進めば、高知が優勝しても第1シード獲得。悠々と第4シードを迎え撃つ優位な地位に立てることになる。

となれば、伊野商業監督時代に春夏1度ずつ甲子園出場。うち1985年・第57回センバツでは初出場初優勝の偉業を成し遂げ、2年前には田内亘(現:JR四国)を擁し、秋季高知県大会3位、秋季四国大会ベスト4、春季県大会優勝、春季四国大会ベスト4、そして夏の高知大会ベスト4と出色の成績を残した熱血漢・山中直人監督率いる岡豊相手に、馬淵史郎監督の採る今大会緒戦の策は1つしかない。「手堅く取る」である。よって、先発マウンドに立ったのは背番号「13」。四国大会では腰痛で登録メンバーから外れたが安定感には定評のある福丈幸(3年)であった。

はたして、休養十分の福は指揮官の期待に見事応える。7回を投じわずか90球で3安打、8奪三振、四死球0で完封。持ち前の低めへの制球力と、スライダーの切れ味は、絶好調を維持していた秋季高知県大会に近いものだった。

一方の打線。序盤こそ岡豊先発・楠瀬大和(3年)の捕手出身らしいテイクバックの小さなフォームにタイミングを外される場面が目立ったが、4回裏に相手失策で先制点を得た後は四国大会で見せた打棒を披露した。この回に2番・今里征馬(3年)の走者一掃2点三塁打、3番・伊與田一起(3年)の適時打で計4点を奪うと、6回には5番・杉原賢吾(3年)が2年前の鮮烈デビューを思い出したかのような適時打、7回にも主将1番の合田悟(3年)が1死1・2塁から中越に2点二塁打。「8回から福永(智之・3年)を用意していた」馬淵監督であったが、福永を登板させるまでもなく試合を終わらせてしまった。

こうして曲者・岡豊を下し、夏の第1シード獲得へ王手をかけた明徳義塾。「安定感は抜群だね」と福の活躍を褒めるその表情は、実に福々しいものだった。

(文=寺下友徳)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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