明徳義塾vs丸亀
3回表無死満塁からリリーフ。6イニングを自責0の岸(明徳義塾)
明徳義塾を救った「1年生」
これまで何度も取り上げてきたが、明徳義塾・馬淵史郎監督の試合後コメントは実に機微に満ちている。勝敗を分けたポイント説明、次戦への意気込みだけに留まらず、自軍の現状分析、野球のセオリー説明や、相手の戦力評価まで。事実、この試合後のコメント後半部分は打っては4打数4安打。肩では俊足3番・伊與田一起(3年)の二盗を2度に渡って封じた丸亀捕手・三好一生(3年)への賞賛に集中した。では、その「馬淵節」を少しだけ抜粋してみよう。
「あの捕手からは走れん。伊與田の2度目は投手フォームを盗み気味だった。普通ならセーフよ。で、なんであんな選手が8番打っているの?『気楽に打たせたい』から4番から香川県大会途中に変わった?いやあ、あの選手が4番打たなかったらアカン。あのくらいの選手ならキャッチャーでメシが食える。伊藤光(明徳義塾出身、現:オリックスバファローズ)くらいの肩もしているし、ウチなら4番で売り出しているね。それくらいいいキャッチャーよ。伊藤光よりずっとバッティングええし(報道陣・爆笑)」。
では、その前半部分は?
「今日の勝利は岸に尽きる」。
真っ先に名将が殊勲者にあげ、労をねぎらったのは、明徳義塾硬式野球部・鉄の掟「競争原理」を体現すべく高知県大会決勝以来の4番復帰で3安打2打点の活躍を見せた西岡貴成(2年)ではなく、いつも通りの堅実な遊撃守備と戦術適応能力の高さを見せた2番・今里征馬(3年)でもなく、3回表無死満塁の大ピンチにマウンドに立ち、その回2点は失うも以後計6回を自責点0に抑えた1年生右腕・岸潤一郎(右投右打・172センチ70キロ)である。
既に前日の川島戦では代打出場。緊張するはずの高校公式戦初打席で初球を三遊間に運んだ強心臓ぶりはマウンドでも健在。安定した下半身のボディーバランスと、リリースポイントが前に出たフォームから137キロ、136キロを連発するストレートと、「サークルチェンジのように握る」チェンジアップは既に高校トップの領域であった。
「高校での練習試合で投げたのは4イニングまで。6イニングス目はボールが沈んでしまいました。高校生はスイングの速さが違います」と試合後の岸。その精悍な顔立ちは「神戸村野工業で野球をしてた父の影響で小学3年からはじめた」金楽寺少年野球クラブでは早くも6年生で「NPB12球団ジュニアトーナメント・バファローズジュニア」の18名に選出されたサラブレッドらしいクールなものであった。
兵庫県・西淀ボーイズでも3年時には日本人に大きくMLBへの扉を開いた野茂英雄氏が総監督を務めた「BOYS LEAGUE JAPAN” TOUR」で、ボーイズリーグ日本代表15人の一員として背番号6を背負いロサンジェルス遠征を経験した実力者・岸潤一郎。彼の動向には、今後も要注目である。
(文=寺下友徳)