試合レポート

智辯和歌山vs紀央館

2012.05.13

智辯和歌山vs紀央館 | 高校野球ドットコム

智辯和歌山の1番を打つ嶌選手

“常勝軍団”に返り咲くために

試合後、辛勝に安堵の表情をこぼすナインとは裏腹に、高嶋仁監督はため息交じりにこう語った。
「ホンマ、全然やったね。このチームはとにかく軸がおらんのよ。打つ方なんて特におらんから、今まさに作っている最中。目処? 今んところは何とも言えんなぁ」。
昨年、春の選抜はベスト8、夏の甲子園ではベスト16に進出したチームからは試合経験の豊富な選手がほとんど抜け、レギュラー選手では嶌直広川崎晃佑(ともに3年)の2人だけが残った。特に1年時からマスクを被ってきた道端俊輔(現早稲田大)の存在はあまりにも大きく、大黒柱を確立させる目処も立たないまま、昨秋チームは県大会準決勝で敗れた。
本来ならバッテリーを軸にチーム作りを進めるはずが、エースの蔭地野正起(3年)がケガに苦しみ、道端の後釜を担うはずの正捕手が台頭せず、二塁手の川崎が背番号2をつけている。伝統の強打の中心となる選手も不在で、主将である川崎をどうしても軸にさせざるを得ない苦肉の策だった。

それでも1回、巧打者である1番の嶌がヒットで出塁し、四球を選んだ3番・大倉卓也(2年)がダブルスチールで揺さぶり、5番・西健太朗(2年)のタイムリーで鮮やかに2点を先制する。長打でなくとも、攻めにバリエーションを持たせて得点に導くのは、さすがは名将。
だが、以降は5回を除いて再三チャンスを得るも、なかなか追加点が奪えない。
特に6回には二死・満塁という大チャンスを掴むも、嶌はファーストゴロ。8回にも連続四球とチャンスをもらいながらも得点に結びつけることが出来なかった。
結局残塁は11個。これまでの強打ぶりを思うと、想像がつきにくい数字だ。
「これが今の時点の実力。まあ、昨秋よりは伸びている部分はあるんやろうけれど、ホンマに打てない。旧チームも経験者がおっても大きいのが打てんかったけれど、今年はそれ以上。まぁ、明日の試合も含めて経験させて軸をしっかり作っていくしかないですね」(高嶋監督)。


智辯和歌山vs紀央館 | 高校野球ドットコム

先発した土井投手(智辯和歌山)

だが、不安材料ばかりだけではない。
この日先発した土井健太郎(3年)は、6安打1失点で完投勝ち。同じ2年生でもある吉川雄大(2年)も市和歌山戦(2回戦)や近大新宮戦(準々決勝)で好投し、一戦、一戦大きな経験を積んでいる。
この日は下級生の多くがスタメンに名を連ねたが、このままで終わらせない、と蔭地野をはじめとする3年生の奮起も、夏に向けて必要不可欠だ。

1990年大後半から2000年台にかけて甲子園で“常勝軍団”とも言われてきた智辯和歌山。本番まであと2ヶ月足らずの今、この険しい山をどう乗り切っていくか。8年連続の大舞台を見据えつつも、チームは今、正念場の春を戦っている。

スターティングメンバー
紀央館
 7中田航平、6鳥淵克也、8白綛貴也、4山口輝、5木村謙介、9狩野匠、2玉置光、3白樫大地、1塩嵜基紀
智辯和歌山
6嶌直広、4阪本将太、5大倉卓也、9片山翔太、7西健太朗、2長壱成、3野山泰志、1土井健太郎、8沼倉健太

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.02

春優勝の公立校・春日が登場、30日から順延のセンバツ出場・東海大福岡も初戦、3日の福岡大会【2024夏の甲子園】

2024.07.02

福岡大会では福岡大大濠、大牟田がコールド発進、進学校・福岡は3日がかりの勝利【2024夏の甲子園】

2024.07.02

北海道で本塁打が半減! 札幌支部では3分の1以下に……新基準バットの影響か、それとも【2024夏の甲子園】

2024.07.02

【全国注目シード校・成績速報】福岡で早くもシード3校が登場! 完勝で初戦突破!【夏の甲子園】

2024.07.02

浦和学院を24年間支えた指揮官が城西大城西へ 伝え続ける強者に必要なメンタル

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

スコアラーが8ヵ月後エースに急成長! オリドラ2ルーキーを輩出した聖カタリナ学園(愛媛)に今年も190cm大型投手が現れる!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】