神村学園vs鹿児島商
神村学園・新納真哉選手
理想的な点の取り方
神村学園は先制、中押し、ダメ押しと効果的に得点を重ねて、鹿児島商の挑戦を退けた。これで夏を前に、昨秋からの県内と九州地区の公式戦を無敗で勝ち切った。
山本常夫監督は「理想的な点の取り方ができた」と評価をする。今大会は準決勝まで、3試合連続完封と柿澤貴裕、平藪樹一郎の両エースの好投と堅守で「負けない野球」はできていた。
攻撃でも随所に持ち味を発揮していたが、リードオフマンの新納真哉の不調だけは心配材料だった。
「5月の沖縄遠征で調子が悪くて、打席で迷いが出て思い切り振れなくなった」と話す新納。今大会は準決勝までが無安打。準々決勝は最終回に代打を送られ、準決勝では得意としていた盗塁を刺された。
「初回に点が取れていないのは自分が打てていないから」と責任を感じていた新納。気持ちの支えは「練習してきたことを信じる」ことだけだった。
この日は最初の打席で鹿商の好投手・福永翼から詰まりながらもヒットが打てたことで迷いが吹っ切れた。すかさず盗塁を決めて揺さぶり、古賀伊織のタイムリーで先制のホームを踏んだ。
どの打順からでも点が取れるのが神村学園の長所だが、リードオフマンが先制点に絡むと打線も勢いづく。
5回には中押し点のホームを踏み、6回はセーフティースクイズで打点を挙げた。8回には2死から下位打線が作った満塁のチャンスに、走者一掃となるセンターオーバーへの三塁打。これまでのうっ憤を一気に払しょくする活躍ぶりだった。
昨秋、山本監督は少ない安打で効率よく点を取っていく攻撃を「ヒット1本で3点を取る」と呼んでいたが、この日はリードオフマンが再三出塁できたことで、いろんな作戦を仕掛けやすかった。
1回の2点目はヒットエンドランが決まって、相手のミスを誘って挙げたもの。得点にはつながらなかったが、5回には3点目を犠牲フライで挙げた直後にダブルスチールを決めた。
4点目は新納のセーフティースクイズ。アウトにはなったが、二塁走者まで一気にホームを狙う走塁は神村らしいアグレッシブな攻めだった。
「相手の福永君が緩急をうまく使っていてそれにはまりそうだったところに、追加点が取れたのは大きい」と山本監督。最後は苦しみながらも要所を締めていた福永の根負けを誘うように下位打線が二死から粘ってチャンスを作り、新納、田中貢大の長打攻勢でとどめを刺した。
(文=政純一郎)