試合レポート

都立北豊島工vs順天

2012.07.11

軟式から転じて3年目!悲願の夏初勝利‼

まるで梅雨が明けたような暑い日。まして、周囲が囲まれている人工芝の[stadium]神宮第二[/stadium]は、蒸すように暑い。
正直、甲子園という夢の舞台へ届くのは現実的にはかなり困難だと思われる学校がほとんどだ。それでも、自分たちの思いと可能性に賭けて、精一杯のプレーをする。それが、高校野球。そして、最後の大会にこれまでやってきた自分たちの思いを込める。それが夏の大会。

そんな多くの高校球児の姿の一つが、ここでも見ることが出来た。
1ヵ月前に、2年生ながら四番で正捕手の小林良周が練習試合で肉離れを起こして、戦線離脱した都立北豊島工。チームは俄かにピンチになり、士気も低下しかかったという。そこを、大坪健太監督は、「このピンチは3年生の思いで何とかしよう」と考え、4人の3年生の中から最もセンスのある一塁手の斉藤涼太を捕手におき打順も四番に抜擢して、この危機に挑んだ。

斉藤涼はその起用に応えて、初回は失策などで得た好機にセンター前にヒットを放ちして先制点を挙げる。3回には、エース・桑田太尊のスライダーを止めきれずにワイルドピッチとしてしまって同点を許したものの、8回一死一三塁から、左翼頭上を破る二塁打を放って二者を迎え入れた。これが決勝点となった。


都立北豊島工は軟式野球部から公式に転じて3年目。大坪監督が立ち上げて、エースで主将となり、リードオフマンも務めている桑田太尊ら今の3年生と一緒に作り上げてきたチームだった。4人しかいない3年生は、彼らが最上級生となった昨年の秋から、初めて、3大会にエントリーできるようになった。それまでは、部員不足で秋や春のブロック大会には出場できないという現実に泣いてきたのだ。そうした経験をしながら迎えた最後の夏の大会だった。

27歳と若い大坪監督は、学校としても夏の大会初勝利に試合後はハイテンションで興奮気味だった。「しびれる試合をしてくれました。2年生の主軸が出られない状況になったのですが、3年生がよくカバーしあってくれて…、本当に…、目頭が熱くなる思いです」と、自分自身も3年生たちと一緒になって道具もあまりない中で、グラウンド整備から始まって、苦労してきただけに勝利の喜びは大きかったようだ。

そして、都立北豊島工野球部としても、間違いなく大きな一歩を記したことになった。
順天は1回に、四球の走者を出したが併殺かと思った打球の送球をポロリ。そこからほころんで行った。さらに、3回には無死満塁から相手暴投で同点に追いつき、なおも無死二、三塁。一気にひっくり返せる場面だったが、この好機を逃したのも大きかった。

63歳のベテラン杉野光永監督は、「ウチは二戦目なのに、何だか終始硬かったですね。別に、その先を意識していたというのではないのでしょうけれども、最初の入りからリズムに乗りきれませんでした。相手の投手はよく投げていたし、気持ちがこもったいいチームでした。相手を褒めるしかないでしょう。試合としては、3回のチャンスが1点止まりだったところが響きました。あそこは、スクイズも考えたのですけれども…。貰った1点の後だっただけにね…」と、いささか悔いの残る試合になってしまったことを悔しがった。
それでも、相手チームのひたむきなプレーを高く称えていた。

(文=手束仁)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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