試合レポート

橘学苑vs神奈川大附

2012.07.15

縁深い対決制す

 年間で練習試合を3~4試合は行う、よく知るチーム同士の戦いとなった。

 橘学苑・石黒滉二監督と、神奈川大附・古屋克俊監督の間には不思議な縁がある。
古屋監督の父は、横浜商で監督として黄金時代を築いた古屋文雄氏。83年センバツ準優勝、83年夏甲子園準優勝など、輝かしい実績を持っている。息子である古屋克俊監督も現役時代は、横浜商で過ごし、2年生の時は山口鉄也(巨人)とバッテリーを組んだ。その後、東北福祉大に進み、コーチを経験したのち、神奈川大附に赴任した。
父・文雄氏が横浜商を退任したあとに就いたのが、橘学苑の副校長という職だった。橘学苑は、もとは伝統ある女子高(1942年創立)で、共学化ののち野球部ができたのが2006年。グラウンドは練習試合すらできない狭さだが、神奈川の名門・桐蔭学園のOBである石黒監督の指導のもと09年秋にベスト8、10年春には選抜大会を制した東海大相模を破りベスト4にまで進んでいる。

この飛躍を陰で支えていたのが古屋副校長だった。創部当時から指揮を執る石黒監督にチーム作りのアドバイスを送るなど、それまでの経験を伝授。その関係で、息子である古屋克俊監督と縁ができ、「弟のような存在」(石黒監督)と語るまでになっていた。

序盤、神大附属が橘学苑の攻撃を粘り強くしのいだ。
初回に2つの死球やダブルスチールをからめられ、1点を失うが、2回には1アウト二、三塁、3回には1アウト満塁のピンチをゲッツーで防ぎ、1点差でくらいついた。
神大附属の先発・牧野昴平は変化球を主体にした技巧派。練習試合で戦っているが、石黒監督は「練習試合では使っていなかったシンカーを投げていました。夏のために覚えたのでしょうね。さすが古屋監督が仕込んだチームです」と試合後に振り返っていた。
このシンカーで、橘学苑の投打の中心でもある左打ちの黒木優太を4打数無安打におさえこんだ。


粘っていた牧野が崩れたのが4回に1点を失ったあとの5回だ。先頭の4番・弓場大樹にライト線にヒットを打たれたあと、6番の秋元峻吾に2ランを打たれて、計4失点。結局、この回途中で二番手の櫻井拓哉にマウンドをゆずった。
その櫻井がさらに1失点、6回には弓場、牧岡洪作、秋元に3連打を浴びるなどして、得点差は7点に。そのまま、7回7対0でコールドゲーム成立となった。

中盤に得点を重ねた橘学苑は、1番・高瀬寛、4番・弓場が2安打、5番・牧岡、6番・秋元が3安打と活躍を見せた。弓場は185センチ105キロの巨漢で、高校通算30発超をほこるスラッガーである。

投げては、黒木、椎名潤の速球派右腕のリレーで完封勝利。黒木はこの日、最速146キロを記録した。昨年まで内野手だったが、肩の強さをかわれピッチャーに。およそ1年でピッチャーとして急成長を遂げた。

次の相手は東海大相模。[stadium]保土ヶ谷球場[/stadium]で行うため、テレビ神奈川の中継も入る。
東海大相模を倒して、自分の名前をアピールしたい。一番の武器はストレートです」
リンスカムやバーランダーに憧れ、将来の夢はメジャーリーグで活躍すること。そのため、選択科目では英語をえらんだ。

 
橘学苑は2010年春に東海大相模を破っている。その話を石黒監督に振ると、「そんなこともありましたね。もう忘れました」と笑った。
春は春、夏は夏。夏に勝ってこそ、ホンモノの力といえる。次戦は3回戦屈指の好カードとなる。

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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