龍谷vs唐津東
2年間の成長
シード校最後の登場となった龍谷が接戦を制し3回戦進出を決めた。
「雨はききましたね」と九州地方を襲った大雨で、試合が3日間試合が順延された影響があったと試合後の龍谷•徳山誠一朗監督は話した。
選手権佐賀大会が始まる前の3日に練習試合を行ってから、この日の試合まで約2週間空いたことで、試合への入り方が難しかったという。選手たちもそれぞれ「早く試合がしたかった。気持ちを維持するのが難しかった」と口にしたが、それは選手だけでなく指揮官も感じていた。
「2年前(佐賀大会)ベスト4に入ったときの映像を見て、気持ちを盛り上げた」と笑って話した徳山監督。
その映像のなかにいた当時1年生の選手たちがこの試合、勝利を導いた。
3対0で迎えた9回表、走者を出しながらも粘りの投球で無失点に抑えてきた駒井亮司(3年)がつかまる。
先頭の6番宮崎洋人(3年)にセンター前に運ばれると、7番宮崎裕輝(2年)にもライト線に弾き返され無死一 三塁のピンチを迎えた。
唐津東のスタンド応援が一気に盛り上がる。唐津東の押せ押せムードのなか、迎えた打者はこの日2安打の松尾浩孝(3年)。
ここで正捕手の金澤達弘がマウンドへ駆け寄った。
「1点はしょうがない。とにかく低めにいこう」
その言葉に大きくうなずくと駒井はスライダーを低めに集め松尾を浅いセンターフライ、続く代打の加藤駿介(3年)を三振に打ち取る。
二死までこぎつけるが、1番浦元光人(2年)にセンター前タイムリーを浴び1点を返される。なおも続く一、二塁のピンチ。長打が出れば同点。
だが、リードする金澤は冷静だった。スライダーを有効に使い、ピンチを乗り切った。
唐津東の7安打を下回る5安打ながら、勝利を呼び込んだのは冒頭の映像のなかにいた3年生の二人だった。
1年からサードのレギュラーを張る陣内尚嗣(3年)が1回、一死二塁から唐津東•先発の増本啓希(2年)のストレートをライトフェンス際まで運ぶタイムリー二塁打で先制点を叩き出す。
「初回、あそこで取れたのは大きかった。あの打球は逆風のなか思いのほか伸びた。あそこまで飛ばせるようになったことに、この2年間の成長を感じた」と徳山誠一朗監督も驚く飛距離をみせると、守りでは同じく1年時からベンチ入りする正捕手の金澤達弘(3年)が好リードをみせる。
「夏の大会は何が起きるかわからない。とにかく低めにコースが甘くならないように」と再三、エース駒井のもとに駆け寄った。
「高校生のバッテリー間の意思疎通は難しい。うまく会話をとることで細かい指示を徹底できていた」と金澤を称えた。
昨年の攻撃型のチームから、今年は守り勝つをテーマに挑んだ選手権佐賀大会。
「雨が続いたことで試合勘が戻らないなか、いきなり接戦になったことで、走者を確実に送って少ないチャンスで得点するという今年の野球ができた。陣内、金澤がうまくチームを引っ張っていた」と指揮官は、手応えを口にする。
17年ぶりの甲子園に向けて新たな龍谷野球で初戦を突破した。
(文=藤吉ミチオ)