試合レポート

槻の木vs高槻

2012.07.19

応援団を魅了した粘り

5回表を終えて8対1。槻の木が大きくリードをしていた。
ここまでの展開など、客観的にゲームを見ると、コールドゲームになるのが予想できた。
しかし野球、特に夏の高校野球はわからない。イニングスコアを見てもわかるとおり、高槻が見せた怒涛の追い上げで、一時は1点差までに迫った。

相手のミスを次々と誘う強いゴロを放ち、打者一巡の猛攻で5点を挙げた7回裏高槻の攻撃。それが終わった時、各々好きな位置で声援を送っていた高槻の一般生徒たちが、野球部が応援する輪に自然と加わった。
一つになり盛り上がるスタンド。守りについた選手たちはビンビンにその声援を感じていただろう。

スタンドから声が飛ぶ。

高槻名物、逆転を見せたれ!」

1回戦が8回に追いつき、延長11回にサヨナラ勝ち。それを彷彿とさせる展開に、スタンドは期待していた。
しかし展開とは不思議なもので、8回表をエース小川孝臣(3年)が無失点に抑えると、裏の攻撃も無得点に終わった。
9回表、二死一、三塁から打ち取った打球がセンターの横にポトリと落ち、槻の木に2点が入った。少し呆然と見つめたエース。


『今度は俺たちが得点する番』

9回裏二死から打席に立ったエースが想いをこめて放った打球は、ショートゴロ。2時間34分、7点差から一時は1点差までに詰め寄ったゲームが終わりを迎えた瞬間だった。

嗚咽をもらす選手たち(学校の仲間)をみて、一般生徒たちの目にも涙が光る。
「高校野球はええなあ。俺まで泣けてきた」とある生徒は口にした。
これが高校生の本音ではないだろうか。外に出てきた選手たちを拍手で迎えていた。

球場外。涙を流しながらも相手チームへ千羽鶴を渡しに行く高槻ナイン。胸を張っていた。
「最後の夏に良い試合ができた。ありがとう。僕たちと、(1回戦で敗れた)四條畷高校の分も頑張ってください」と主将の藤岡毅(3年)が、槻の木の主将・平野義恭(3年)に手渡した。
藤岡とエースの小川がその後、槻の木の監督、部長にも「ありがとうございました」と丁寧に挨拶をしてまわっていたのが印象的だった。

冷静に試合を振り返れば、2投手で17与四球とリズムに乗れなかったのが敗因かもしれない。練習試合や、秋春の公式戦だったならば、反省ばかりが残る試合だっただろう。
でもそれだけではないのが夏。
夏だったからこそ、「良い試合」と堂々と口にすることができた。

17与四球と届かなかった1点は、これからの人生に置き換えて、突き詰めれば良い。

そして勝者は、敗れたチームの分だけ想いが託されていることを胸に刻んで、次に臨んでほしい。

スターティングメンバー
槻の木
7村井祐太
4下村龍二
2松浦佳太
8平野義恭 (主将)
5砂田哲也
9吉永啓太
3藤野太智
1上野凌
6野上廉

高槻
2藤岡毅 (主将)
6鳥本楽弥
5岡泰左
3福田洋輔 
9菊地拓海
7増本寛之
8西村裕郎
1天野晟人
4菅原健武

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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