試合レポート

一条vs橿原

2012.07.20

秋と同じ9点差。でも今回はそこから…

昨秋1回戦の再戦となったこのカード。
その時スコアは12対3。一条打線が爆発しての圧勝劇だった。

そしてこの試合もまた、5回を終えてのスコアは12対3。あの時と同じ形だった。

しかし、この日はここから橿原が意地を見せる。
一条打線が良いので、今日は1点差であっても、100点差であっても、自分たちの力を出すことを心がけなさいと言っていました。心はしっかり向かい、頭は冷静にと」と橿原・坂口昭彦監督は言う。

橿原打線が動き出したのは7回表からだ。
この回を2点以内で終えるとコールドが成立するところからの粘り腰だった。
1死から先頭の4番牧野友陽が右中間を破る三塁打で出塁すると、5番前田直の犠牲フライで1点。6番の所で代打起用された浅尾浩太がライト前へのヒットで繋ぐと、7番吉田崇慶、8番吉村一希と続き、2点目を挙げる。
すると、橿原の反撃に集中力が散漫になった一条のエース・井村孝輔が連続ワイルドピッチ。3点目を挙げたのである。

さらに8回表、先頭の吉田が死球で出塁すると、3番竹内翔也、4番牧野の連続安打で無死満塁。5番前田のショートゴロの間に1点を返すと、二死のあと、6番岡本直也のところで、またも連続ワイルドピッチで計3点。その差を3点としたのである。

9点差から逆転可能の範囲までの逆襲。
橿原は一気に試合を緊迫させたのである。

「去年の秋はコールド負けしていた。同じような展開で、ここまで試合を作れたのは1年間の成長だと思う」と主将の隠地裕太は笑顔を見せた。


結局、9回はあえなく三者凡退で試合終了し、9点差からの奇跡の逆転勝利とまではいかなかったが、橿原の執念を見た試合だった。

それにしても、見事だったのは打線の振りの鋭さだ。
相手投手は今大会注目選手の一人・井村だったのである。
最速143キロのストレートを投げ込む本格派右腕から11安打6得点は見事の一言だ。
先頭打者としていきなり二塁打を放つなど、2安打2四死球と井村を攻略したのが隠地。「(井村君は)球の速い投手だと聞いていたので、ストレートを意識して入りました」という言葉通り、1、2打席目ともストレートを狙っての二塁打だった。
特に第1打席はチームに勇気を与えるものだった。
4番の牧野は4安打。本塁打が出ればサイクルヒットの大活躍。「1打席目に打てなかったのは悔いが残りました。相手が注目の投手だったので、ストレートを意識していました。球が思ったより速くないと思ったので、積極的に行きました」

誤算だったのは、投手陣を含めてディフェンス面。
本来のエース岡野乾造(2年)が春季大会の後に左ひじを故障。9回を投げ切ることが難しく、エースナンバーは増田雄太(3年)が務めたが、1回に一死しか取れずに降板した。
後を継いだ岡野は好投を見せるものの、守備陣が踏ん張れず。6回裏の守備では、振り逃げを許し、また、三塁前のゴロを上手くはさばけず、大量失点につなげていた。

坂口監督は「好投手の井村君をあんなに打てるとは思いませんでしたけど、ここまで点を取られるとも思っていませんででした」と良くも悪くもあった試合を振りかえった。

3対12からの巻き返しての戦いは今後への財産になるだろう。

「今日は最後に粘れたのは良い経験になりました。新チームではこういう試合をひっくり返せるようなチームになりたい。秋の大会は優勝を狙います」と4番の牧野は話した。

この日、牧野や二番手の岡野など、5人の下級生が出場していた橿原
一条との二度に渡る対戦を経て、若いチームが秋へ再起を誓った。

(文=氏原英明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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