オフ期間のバッティング計画と練習法 (JX-ENEOS 大久保秀昭監督)
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▲今夏、第83回都市対抗野球大会にて10度目の優勝を遂げたJX-ENEOS
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今夏、東京ドームで行われた第83回都市対抗野球大会で史上最多10度目の優勝を遂げた、社会人野球の強豪・JX-ENEOS。主軸の池辺啓二選手(智弁和歌山-慶応大)を筆頭に強打者が揃う。
今年はシーズン始めから、ある試みを行い、バッティング改革を求めてきた。「二塁打、三塁打の数が前年よりも増えました。目に見えて、効果があったと思います」と語るのは、大久保秀昭監督だ。
桐蔭学園、慶応大、日本石油(現・JX-ENEOS)を経て、近鉄バファローズに入団。5年間の現役生活のあと、横浜ベイスターズでコーチを務め、2005年12月にJX-ENEOSの監督に就いた。
社会人の王者は、どのようなバッティング練習をしているのか。指揮官として2008年、2012年に日本一を遂げている大久保監督に聞いた。
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970グラムのバットを振り込む
▲JX-ENEOS 大久保秀昭 監督
今年、年頭にかかげたテーマは「パワーアップ」でした。
バッティング面でいえば、練習では970グラム以上、オープン戦では930グラム以上のバットを使うことを徹底しました。普段、公式戦で使うのは900グラム前後です。
練習の段階から、重たいバットを振り込むことで、パワーをつける狙いがありました。二塁打、三塁打の数は前年より増えましたね。目に見えて、効果があったと思います。
高校生も重たいバットを振ることは、大いに意味があります。形も大事ですが、まずは振る体力、スイングスピードがなければどうにもなりません。
ピッチャーが投げたボールが、バッターのところに届くまで、およそ0.4秒です。その間に細かいことを考えていたら打てませんよね。
大会に合わせてメニューを組む
▲スイングについて語る大久保監督
練習メニューは、期間によって変わってきます。
社会人の場合、都市対抗がもっとも大きな大会でその予選が6月にある。まずは6月にピークを持っていくようにしています。
具体的にいえば、練習量です。ピークを作る前に強化期間を作って、スイング量を増やす。そこから、徐々に落としていくようにしています。
スイング量は、予選前の強化期間でいえば、3日間で1000~1200。冬に入る12月は、1日で1000~1200スイングで、10日間で15,000スイングを目標にしています。
12月に行うのはティーバッティングと素振りが中心です。ティーは基本的にはスタンドティー。斜めからトスをあげるティーよりも、実戦に近いという考えです。ネットがあるのなら、正面からのティーが一番いいでしょう。
[page_break:素振りの注意点]素振りの注意点
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▲大久保監督のバッティング革命により打撃力を手に入れたJX-ENEOS
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みなさんはティーと素振り、どちらのほうがきついですか?
ぼくの感覚では、ティーはボールを打つことができるので楽ができるんです。ですから、ティーだけでは振る力はついてこない。必ず、素振りをやるようにしています。
ただ、素振りをするときに注意点があります。社会人の選手でも多いですが、ミートポイントを意識して振っていない。右バッターでいえば、左腰の前を振っているんです。これでは、ファウルにしかならないですよね。
ホームベースを意識して、ボールが通過するところを振るだけで、素振りの意味合いが変わってきます。
意識の差が結果にあらわれる
▲JX-ENEOS練習場に掲げられた段幕
うちの練習は短くて、全体練習は3時間程度です。まるまる1日練習することはありません。
社会人は大人の集まりですから、私は大人として選手を見ています。大切にしてほしいのが、全体練習を終えたあとの自主練習。それぞれ課題は違うものですよね。それを、自主練習の中でレベルアップしていくのです。
何をやるにしても、意識だと思います。自らうまくなりたいという高い意識があれば、練習に取り組む姿勢も変わってきます。高校生には、まずはそこを身につけてほしいですね。
1本の素振り、1球のティーバッティングの価値
▲「悔いのないように1本1本を大事に」
最後に高校球児にメッセージをお願いすると「目標設定がうまい選手ほど伸びる」と語ってくれた。
「その日の目標設定、その先の目標設定をしっかりと定めることができるか。たとえば、前日のバッティングで10本中3本しか芯でミートすることができなければ、『今日は5本とらえられるようにしよう』ということでもいい。1日の練習を、いかに目標を持って取り組むことができるかです」
また、こんな表現もしていた。
「高校生は自らやめない限り、2年半は野球ができます。でも、社会人は1年でクビになることもあるんです。こちらが言わなくても、自主的に練習に取り組んでいます」
野球を終えたあとに、「あのとき、もっと一生懸命やっておけば」と悔いても遅い。
1本の素振り、1球のティーバッティングに魂を込めて練習しよう。その積み重ねが、結果につながっていくはずだ。
(解説・大久保秀昭(JX-ENEOS 監督)、構成・大利実)