屋久島vs伊集院
エース・松田龍青(屋久島)
「剛柔対決」は「剛」に軍配・屋久島
屋久島のエース松田龍青(2年)は、直球が武器の「剛」の投手。伊集院の先発・黒岩晃人(2年)は下手投げから緩急で打ち取る「柔」のタイプ。剛と柔の好対照な両投手の投手戦は、剛の松田が力で伊集院打線をねじ伏せた。
今大会見た中では、最高レベルの投手戦だった。松田は「勝負所でも抑えられる」だけの自信を持っている直球で、強打の伊集院打線にジャストスイングをさせない。アクセントをつける変化球でうまくストライクがとれたことで、高めの直球で思うように空振りや凡打で打ち取れた。
奪った10個の三振のうち、7個を相手の3―5番から奪っている。圧巻だったのは、1点差で迎えた9回裏にこの3人を連続三振で打ち取ったシーンだ。「気を抜いたら絶対にやられると思ったから全力でねじ伏せにいった」気迫に、中軸打者が打球をインフィールドにさえ飛ばせなかった。
7回に「執念でした」の先制二塁打を放った4番・日高大成(2年)は「直球にこだわりを持っていて、研究熱心でストイック。安心して守れる」とエースに全幅の信頼を置いている。
「こだわり」を磨くために、夏場でも毎日10キロのランニングに、50メートルダッシュ50本の走り込みをやり続けて、足腰を鍛えた。それを支えているのは「優勝して九州大会に行ってセンバツに出る」(松田)という「志の高さ」(塚田健一監督)だ。
敗れたとはいえ、6回までの黒岩の投球も見事だった。「ボール球が先行して、苦しい投球だったけど、監督から『しのいでいくぞ』と言われて我慢の投球を続けた」と黒岩。再三3ボールまではいくものの、うまく抜いたボールで相手打線を手玉にとり、4回まではパーフェクト投球だった。5、6回とエラー、四球で走者を出すも、捕手・新井優介(2年)の好送球などでカバーし、6回まで全て3人ずつで片づけていた。
それだけ緊迫した展開だけに、1つのミスが逆に大きな傷口になってしまう。黒岩の中では、3回一死一二塁の絶好の先制機に、ホームを目指してアウトになった走塁ミスと、7回二死から4番に2ストライク追い込んでから3球目を打たれた先制タイムリーが悔やまれてならなかった。
「先に点が取りたくて焦ってしまった。打たれた場面は、ボールでも良かったのに、際どいところを引っかけてくれればと思って中途半端なボールを打たれてしまった。こういう展開では1つのミスをつけ込まれてしまう。春までに1つでもミスを減らせる投手になりたい」
重い教訓を胸に刻んでいた。
(文=政 純一郎)