シアトル・マリナーズ 岩隈久志 選手
堀越高校(東京)で、3年生最後の夏は、西東京大会ベスト4。190センチの大型投手として、その存在を知らしめた岩隈久志投手は、高校卒業後は、東北楽天ゴールデンイーグルスなど3球団で12年間プレーし、2012年からはMLB・シアトル・マリナーズに移籍。
今回は、岩隈投手から、特別寄稿で高校球児のみなさんにメッセージをいただきました。
■MLB経験者からの特別寄稿!
ボストン・レッドソックス 上原浩治 選手 (後編)
ボストン・レッドソックス 上原浩治 選手 (前編)
まずは『自分』がどうあるか
――2012年は一年間、メジャーでプレーされて、環境に適応することに対して、とても前向きな印象を受けたのですが、その中でも最も苦労したことは何でしょうか?
岩隈久志さん(以下「岩隈」) 打者の特徴を掴むことに時間がかかったことですね。マウンドやボールよりも、打者がどういうスイングするのかが、分からなかったので、いろいろ球種を試しながら、打者の傾向を探って行きました。
――岩隈投手は日本で投げていた時よりもストレートの平均速度が3キロほど速くなっていました。トレーニングするにあたって何か工夫したことはありますか?
岩隈 トレーニングの量を増やしました。とくに、インナーを鍛えてきました。また、メジャーは日本に比べて試合数も多いので、肘、肩が万全の状態で投げられるように、調整も工夫しました。
「アメリカの野球は自主性が強い」
――日本とアメリカでの練習のスタンスで、一番違いを感じたのはどの点でしょうか?
岩隈 やはりアメリカは個人というか『自分』がどうあるかです。練習の仕方は、自分で決めなければならない。コーチは、サポートをするだけ。日本はコーチがメニューを決めていますが、アメリカはそれがない。自由といったら自由ですけど、すべて結果に返ってくるので、厳しい世界ですね。
――とはいえ、岩隈選手は新しい環境の中でも、自分自身で調整をし、結果を残してきました。そこに戸惑いがなかったのも、高校時代から個人練習を多く取り入れてきたからでしょうか?
岩隈 そうですね。高校の時も、自主練習などの時間に、自分の課題を重点的に取り組んできました。それをやることこそ、いずれ自分の自信につながっていくものなのですよね。
個の力を高めることでチームは強くなる
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――高校時代は、自主練習も大事にしながらも、実際の試合ではどのような意識を持って投げていたのですか?
岩隈 自分の力を高めようと思いながらも、とにかく『仲間意識』を持って投げていたのは覚えています。そこだけでしたね。一人のミスで負けることがあるんだということを徹底的に教えられてきたので、誰かのミスをどうカバーするか。そういった仲間意識を僕らは持ってやってきました。
「どれだけ上手くなりたいかと思うかが重要」
――高校野球はとくに、個人の力に加え、チーム自体の力が勝敗に大きく影響してきますね。
岩隈 そうですね。高校野球の場合は、チーム力によるプレーがとくに勝敗に関わりますから。ただ、その中で、個人の力というのは絶対に磨かなければならないと思うんです。
――個人の練習では、どのようなことを意識するのが上達につながるのでしょうか?
岩隈 まずは、目標は常に持たなければなりませんね。目標に向かってどうやって成長していけるか。どういう段階を重ねていくかを考えていくこと。
投手でいえば、投げるだけじゃないですね。走ることもとても大事なことでありますし、ボールを投げない時期も必要だと思います。ボールを投げない時期は、感性を磨くことを大切にしてほしいですね。例えば、チームの勝利につなげるために、落ち葉を集めることを始めたり。そういうことも感性を磨くことにつながりますから。
――ありがとうございます。では最後に、高校生のみなさんにメッセージをお願いします。
岩隈 上手くなるためには自分自身がやるしかないんですよね。アドバイスもきっかけでしかないですし。努力して自分のモノにしなければなりません。そうやって自分の力を高めることで、チーム自体も強くなっていくはずです。
だからこそ、まずは自分がどれだけ、上手くなりたいかという気持ちを持って、どんな練習にも真剣に取り組んでほしいですね。
岩隈投手、ありがとうございました。
仲間意識があるからこそ、自主練習にも力が入る。同時に、自分の力を高めることこそ、チームを強くしていく。それは高校時代も、NPB時代も、そしてメジャーでプレーしている今現在でも変わらない岩隈投手の考え方なのです。