Column

あと二ヶ月でやるべきこと

2013.05.21

遠藤友彦の人間力!

 夏の大会まで二ヶ月を切った状態です。高校三年生なった選手たちは、「最後の夏」を迎えようとしています。小学生のときから始めた野球も一区切りを迎え、集大成の時期になってきました。大学に進学して野球をする選手もいると思いますが、大抵は高校で引退することでしょう。

 最後が近づくと、面白い現象がどのチームでも起きるのです・・・

【チーム一丸】となることが不可欠

チーム一丸となることが不可欠

 まずは『チームの不協和音』です。ある程度、背番号が与えられる選手が分かってきます。メンバー組と控え組、大会が近づいてくると同じような練習もしなくなります。メンバー組中心の練習となり、やる氣の濃淡がどうしても出てきます。

 最後の夏に成果を出すためには、【チーム一丸】となることが不可欠です。メンバー組が意識が高いのは当たり前ですが、控えの意識のあり方が重要になってきます。毎年、数チームのサポートをしていますが、メンバーに入れなかった選手へ言うことがあります。

 「背番号発表がされて、チームとしての役割が決まる。試合に出る可能性がある選手、控えとしてチームをサポートする選手。背番号が決まれば役割に徹することが求められる。
 しかしながら、サポートしつつ自分の技術を最大限に伸ばしていくことも同時にしていくべきだ。なぜならば、甲子園大会に出場すれば新たに選手登録がある。大会前にも入れ替えがある。もっといえば、甲子園大会でベスト8くらいに残れば、国体への出場も可能性的にはある」

 最後まで全力でやりきるのが高校野球。

 可能性があるから”やる”という側面もありますが、野球を通して「最後までやりきる」という自分磨きの意味もあります。今まで支えられながらここまで来た事実、ひとりでここまで来たと思ったら大間違いです。小学生から高校までの時間で。

 食事を作ってくれたお母さん

 送り迎えをしてくれたお父さん

 自分で何でもするのがエントモ流ですが、選手によっては洗濯をしてもらったり、弁当を作ってくれたり、様々なサポートを両親はしてくれたことでしょう。

 「最後の大会は、”自分が自分が”という心ではなく、【恩返し】の心を持って臨むべきだ。試合の勝ち負けも大事かもしれないが、両親に全力で最後まで全うする姿を見せるのが最高の恩返しになると思う。」

 控えにまわった選手も、最後の最後まで自分の技術能力を高め感謝の心を持ちながら、全力でやりきるのです。

 大人になって「俺が、俺が」と我欲が強い人は敬遠されます。逆に、「誰かのために、誰かのために」と思い行動する人は絶賛されるのです。高校野球という修行の場で、控えにまわった選手は、最高の「予行練習」をするチャンスなのです。

 よく講演会でお祭りの話をします・・・

 お祭りで神輿を担ぐシーンがありますが、神輿の上でうちわを振っている人がいます。その下には重い神輿を担ぐ人がいます。そして周囲には神輿をみて声をかけている沿道の人たちがいることでしょう。

 この三種三様の人たち。お祭りを盛り上げるためには、どれが欠けてもいけません。では、三つの役割の人たちに優劣があるのでしょうか。どの役割も無くてはならない存在で、偉いとか偉くないとかはありません。それぞれがかけがえのない存在なのです。

「野球の試合でメンバーとして出場している選手は、神輿に乗っている人かもしれない。神輿を担いでいる人が控え選手。そして沿道で声をかけている人は両親をはじめ今まで支えてくれた人かもしれない。神輿に乗っている人も有頂天になっていてはいけないし、神輿を担いでいる人も嘆いてはいけない。自分がチームにとってかけがえのない存在だと思い、自分の役割を最後まで全うしよう!」

 高校時代、神輿に乗った選手は大学に進学すると一年生では担ぐ役割になることでしょう。担ぐ人も氣持ちになれない選手は、担ぐ役割になったときに不平不満を言ったり愚痴を口ずさむかもしれません。

 神輿に乗っている時に「担いでいる人の氣持ち」を考えられるかどうかです。簡単にいえば相手の立場になるということです。この簡単なことが、高校野球ではなかなかできないのです。

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今まで取り組んできたことを整理する

当たり前の実践に目を向けよう

 次に最後の大会が近づいていくと起こる現象。メンバーに選ばれた選手たちの動きが面白いように悪くなっていきます。ちょっと前までできていたことが、急にできなくなったりするのです。

 「調子が悪い」

 この一言で大抵の選手は済ませてしまい、本番でも思うように動けなくあっという間に持っている力を発揮することなく終戦となります。よくあるパターンです。

 なぜ、今までできていたことが、急にできなくなるのか。これは指導する大人も、実際に動く選手たちもメカニズムを知っていく必要があります。

 本番が近づいてくると極端な【結果思考】に陥ります。「ヒットをうたなければいけない」「抑えなければいけない」、結果を考えすぎれば考えるべきことやるべきことが疎かになります。

 相手が格上になれば結果思考の選手は不安になり、身体が動かなくなることでしょう。いくら新チームから着実に成果をあげていても、最後の最後で失速する選手は多いのです。

 では、二ヶ月前に何をしていけばいいのか・・・

 今まで取り組んできたことを整理することです。まずは当たり前の実践に目を向けましょう。野球以外の当たり前の実践、挨拶や整理整頓、時間を守ることなどを今一度きっちりできているか確認し徹底しましょう。大会近くなると部屋が汚くなる選手がたくさんいます。足元が疎かになるパターンです。

 次に野球のプレーでの当たり前の実践を確認しましょう。全力疾走、全力発声、カバーリング、事が起きる前の言葉の掛け合い。不安になり視野が狭まって、今までやってきたことの精度が落ちているはずです。

 原点回帰

 今までの練習はそのままでいいと思いますが、何を意識して二ヶ月を過ごすのかが大切。

 ふわふわした感じで二ヶ月を過ごす

 地に足をつけて二ヶ月を過ごす

 夏の本番で成果を出すチームは、落ち着いた雰囲氣があります。落ち着いた雰囲氣を出すためには、ラストスパートの二ヶ月間をきっちり過ごすことです。

 夏の大会は、どこかで負けます。全国でナンバー1にならない限りどこかで負けるのです。しかしながら「やり残したことはなかった」と締めくくりたいものです。終わってから悔し涙で「もっとやっていればよかった」と後悔する選手がほとんどです。

 今からの時間の使い方で、「やりきった」という感覚になり、負けても笑顔で終われるかもしれません。

 最後の夏は、子どものときから野球をしてきて集大成です。支えてくれた周囲の人たちに感謝し、恩返しの心でやりきって欲しいですね。

(文=遠藤友彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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