弘前学院聖愛vs玉野光南
弘前学院聖愛、「小技」「大技」「巧みの技」で甲子園初陣飾る!
昨夏まで3季連続全国準優勝の八戸学院光星(旧校名:光星学院)、青森山田といった全国級の2校を立て続けに破り、甲子園初出場を決めた弘前学院聖愛の実力は本物だった。
まずは小技。2回表・先頭打者の4番・成田拓也中堅手(3年)の右前打に続き、5番・森山裕土三塁手(2年)が相手先発・星慧(3年)のグラブをはじき遊撃内野安打とした流れは、一塁走者が偽装スタートで投手の体勢を崩し、エンドラン気味に仕掛けたことで生じたもの。動揺の色を隠せない星は暴投でピンチを広げ、二死二塁から7番・佐々木志門遊撃手(1年)の中前打で先制点を与えてしまった。
次は大技だ。4回表の先頭打者として左打席に入った3番・一戸将一塁手(3年・主将)は、星のインハイ高め136キロストレートを押し込むように捉えて、バックスクリーン横に飛び込む大会第19号の大アーチ。続く打席では一転三遊間流し打ちで適時打を放ち、盗塁まで決めた彼の佇まいは近未来スラッガーの雰囲気すら漂わせる。
最後は「巧みの技」。先発・小野憲生(3年)右打者の背中から出てくるようなライジング系ストレートに、左打者の内角に突き刺さるスライダーで玉野光南打線を翻弄し96球4安打完封。さらに、スローイングまで一連の流れを作りながらステップを踏む内野守備、打球方向を予測していち早く落下点も見事。多くの選手が所属した弘前聖愛シニアから施してきたであろう基本技術指導の正しさは、この部分を切り取っても明らかである。
加えて一塁側アルプススタンドからアップテンポで響く「りんごの歌」も観衆の目を惹いた弘前学院聖愛。甲子園初陣を飾った完璧な内容を見れば、初出場での大躍進も十分現実味のある話だ。
(文=寺下友徳)