試合レポート

豊川vs池田

2014.03.28

池田「ノスタルジー」終え、次のステップへ

 試合開始80分前、三塁側の室内練習場。豊川首脳陣は慎重に来る徳島池田戦への準備を進めていた。

 「名西(宥人)くんは、緩急とコーナーをしっかり使ってくる。バッターにはこれまで通り各打者が考えて狙いを絞って、凡打でもいいからしっかり振っていくことを指示しました」(今井陽一監督)

 「田中(空良・3年)氷見(泰介・3年)のバッテリーには3パターンくらいの配球を準備して、その中から投手の調子に合わせて選ぶように指示をしてあります」(森昌彦コーチ)

 今振り返れば、この時点で半ば勝負はついていたのかもしれない。今井監督は北海道拓殖銀行出身、森コーチはNTT東海出身と、かつて社会人野球の名門でもまれたコンビが最大限のリスペクトを徳島池田に払い、選手たちがグラウンド上でそれを体現する構図が豊川には整っていた。

 一方、「実力は向こうの方が上」。岡田康志監督の言葉を借りるまでもなく、がっぷり四つで組み合っては相手にならない徳島池田。当然のごとく厳しい闘いが序盤から待っていた。


 「左の背中が張っている」と試合前から不調を訴えていた名西は、2回二死から8番・田中に四球を与えると、その後4連打を浴びて4失点。「高めのスライダーを確実にとらえられた。せめて2点くらいに抑えていれば」と指揮官は悔いたが、これも冒頭に記した豊川の準備が生んだものに他ならない。

 打者も然り。「全部出し切れずに負けたことに悔いが残る」4打席ノーヒットに終わった4番・岡本昌也(3年)をはじめ控え室には悔いの言葉が多くを占めた。中には控え室で呆然と床やベンチにへたり込む選手も。

 「スライダーと内角は捨てて、ベルト付近を狙っていたのに甘いボールを見逃してしまった」今大会、ついにノーヒットに終わった5番・木村諄(3年)は、具体的にその内容について触れる。

 ただ、この点については力のあるストレートばかりでなく、時には130キロ超えも計測した内外角両方への高速スライダーを投げ分けた田中、それを要求し続けた氷見の豊川バッテリーが単純に上だった。「現状では精一杯の戦い」岡田監督の言うとおりである。池田の選手たちは決して悲観することはない。

 「僕にとってもチームとっても勉強になった」と三宅駿主将(3年)。3打数3安打2打点1盗塁。数字上は素晴らしい成績を残した林涼平(3年)は「もっと足を活かす選手になって、つながりで点を取れるようになりたい。そして夏はスタメンから行きます」と意気込むなど、この得がたい2試合を通じ、さらなる上を目指そうとしている徳島池田。

 鳴門渦潮鳴門生光学園徳島商小松島、そして徳島北富岡西海部。同じ西部地区では川島穴吹。全てが「打倒徳島池田」を目指して襲い掛かる夏の徳島大会も決して平坦な道ではないが、約四半世紀ぶりにノスタルジーから現実に「IKADA」のユニフォームを押し上げた彼らなら、22年ぶりの夏甲子園、そして28年ぶりの春夏連続甲子園出場という次のステップへの努力も、きっと苦にはしないはずだ。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.05

白山高元監督の“下剋上球児”再現はあるのか!? センバツ1勝の宇治山田商、2年生集団で東海大会準優勝の菰野など各ブロックの見所を紹介【2024夏・三重大会展望】

2024.07.05

春連覇した加藤学園は悲観達成を狙う! 静岡、日大三島、藤枝明誠、プロ注右腕・小船を擁する知徳らが行く手を阻む!?【2024夏・静岡大会展望】

2024.07.05

大阪大会は京セラドーム大阪で6日に開幕、大阪桐蔭は14日、履正社は14日に初戦【2024夏の甲子園】

2024.07.05

静岡大会ではノーシード勢が初戦、常葉大菊川、聖隷クリストファーが開幕6日に登場【2024夏の甲子園】

2024.07.05

三重大会が6日開幕、昨夏代表のいなべ総合が初日に登場【2024夏の甲子園】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.30

突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.07.05

白山高元監督の“下剋上球児”再現はあるのか!? センバツ1勝の宇治山田商、2年生集団で東海大会準優勝の菰野など各ブロックの見所を紹介【2024夏・三重大会展望】

2024.06.30

【夏の甲子園・四国地区好カード一覧】いきなりビッグ右腕対決!?徳島では阿南光と生光学園が2回戦で対戦か!?

2024.06.30

北照が9年連続48回目の南北海道大会に進出【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!