前橋育英vs高崎商
全国制覇から1年以上経過して、いつもの日常が戻った前橋育英、関東大会進出
勝利を喜ぶ、前橋育英・兵頭君ら
昨年の夏の全国制覇で、一気に全国区の存在となった前橋育英。
しかも、そのエース高橋光成君が残ったということで、昨秋から一年間、注目され続けた。
しかし、結果的には春秋の県大会では初戦敗退、夏も3回戦で早々に健大高崎と当って敗退。結果が残せなかったのだが、新チームとなって、それを取り返すかのように、2年ぶり7度目の関東大会進出を果たした。
荒井直樹監督も、「やっと、いつもの日常というか、これまで通りの形になったと思っています。夏も、7月20日に負けていますから、じっくりとチーム作りが出来ました」と言うように、この秋はしっかりと地に足をつけた形でチームを練り上げられているようだ。健大高崎と並んで、今や群馬県内では両雄とも2強とも呼ばれる存在になってきた。それを示す、今大会の決勝進出である。
この日の試合としては、1対1で6回まで進んでいったが、均衡を破ったのは高崎商だった。
7回の高崎商は、1死後8番樺澤君が四球で出ると2死後、11番清水君が少し浅く守っていた左翼手の頭上を破る長打で一走を帰した。
しかし、前橋育英の守りも、三塁を狙った清水君をきっちりと刺すなど、次のプレーがしっかりとできていて、それを攻撃につなげた。
その裏の前橋育英は、1死から小川君が四球で出ると、森平君は死球、石田君がしっかりと送って二三塁。一発のある4番井古田君に対しては、栁澤君が追い込みながらも警戒して四球で満塁。その直後に松本君が左前打して2者を返して、これが決勝タイムリーとなった。
栁澤君(高崎商)
前橋育英は、8回にも兵頭君の左前打からチャンスを作って、小川君の中犠飛で1点を追加した。
荒井監督は、「初回もそうでしたけれども、得点を取られながらも、次の走者をしっかりと、刺していったことで、そこで相手の攻撃を封じたのが大きかったのではないでしょうか」と、守りから、攻撃につなげられていったリズムが出来たことを強調していた。
高崎商としては、初回には失策からチャンスを得て、秋山君、関口君の連打で先制したが、二塁走者は本塁で刺された。しかし、2回に二塁打と暴投で同点とされてしまった。4回に、内野安打と暴投で1死三塁として、再び突き放せるチャンスを得たのだが、あと一本が出なかった。
スラリとしたタイプの栁澤君が安定しているだけに、チームとしては少ないリードでもきっちりと守っていかれるだけの力はありそうだ。栁澤君はカットボールが持ち味で、この日は指のひっかかり方がもう一つだったとはいうものの、それでも球そのものはかなり切れているという印象だった。それだけに、リードした次のイニングで、いくらか力みもあったのか制球が乱れたのが痛かった。
富岡潤一監督は、「全国的な傾向でしょうけれども、関東各県でも、私学勢が優位になっているだけに、そんな中で群馬県では、公立校が頑張っているんだということを示したかったのですけれども…」と、あと一つで、関東大会に進出を果たせなかったことを悔いた
「ベスト4までよくやったということではなく、あと一つ勝てなかったことが残念」と、あくまで結果にこだわっていくことで、さらに意識を高めていた。
(文=手束仁)