れいめいvs鹿児島城西
「野球できない気持ち」ぶつける!・れいめい
2ラン本塁打を放った火ノ浦明正主将(れいめい)
れいめいがシード鹿児島城西との打ち合いを制し、久々の4強入りを勝ち取った。
初回にれいめいが4番・堂免大輔(2年)、7番・福山将真(2年)の二塁打で4点を先取して主導権を握ったかと思いきや、鹿児島城西は3回、8番・新垣洸二(3年)からの3連打で瞬く間に同点に追いつく。
4回表に鹿児島城西が7番・植囿勇亮(3年)のタイムリーで勝ち越せば、その裏、れいめいはスクイズと、1番・火ノ浦明正主将(3年)の2ランで再び試合をひっくり返す。
6回、鹿児島城西は捕逸と代打・安仁屋輝一(3年)の2点タイムリーで再逆転したが、7回裏、れいめいは4番・堂免の内野ゴロで同点に追いつき、5番・杉安浩(3年)のライトオーバー二塁打で2点を勝ち越した。
自らのバットで勝ち越し打を放った杉安が8、9回は三者凡退に打ち取って2時間33分の死闘に決着をつけた。
内容的には課題の残った一戦だったが、久々となる4強入りを勝ち取って、湯田太監督は「正直、ホッとしました」と安どの表情を浮かべた。
記録を調べれば、れいめいの4強は2006年夏以来9年ぶり、九州大会予選に限れば、99年春以来だから実に16年ぶりとなる。北薩の雄として毎年、優勝候補の一角に挙がっていながら、8強で涙をのみ続けていただけに、ようやく壁を破れた喜びをナインはかみ締めていた。
「悔しかった思い出しか残っていない」と火ノ浦主将。昨春は同じ準々決勝(試合レポート)で鹿児島玉龍を相手に9回まで3点差で勝っていながら同点に追いつかれ、延長戦で敗れた。シード校で臨んだ昨秋は4回戦で同地区の出水中央に逆転負け。1年夏から5番、2年夏は3番と中軸打者として試合に出ていた火ノ浦としては忸怩たるものがあった。
加えて、火ノ浦は昨秋から故障を抱えていた右ひじを1月に手術して、3カ月間まともに練習ができていなかった。小学1年でソフトボールを始めて以来、「こんなにも野球ができなくて悔しい想いをしたことがなかった」という。
ようやく動けるようになったのは大会直前であり、大会前の練習試合も1試合2打席しか立っていない。それでも今大会ここまで3発のアーチを放ち、この日も初回のリードを追い付かれて漂っていた停滞ムードを吹き飛ばす一撃をバックスクリーンに弾丸ライナーで叩き込んだ。
「良いボールがくると思って、甘いコースに来たボールを思い切って振り切ったけど、まさか入るとは」と驚きの一打を振り返る。
野球への「飢え」が、流れを引き戻すアーチを生み、チームが越えられなかった壁を破る原動力になった。
(文=政 純一郎)