Interview

横浜DeNAベイスターズ 井納 翔一投手【前編】「続ければこそ――」

2015.05.25

 188cm、91kgの体から、角度のあるストレートを投げ込む。そして同じ腕の振りでスプリットも駆使し打者を翻弄する。入団一年目から侍ジャパンにも選出された、横浜DeNAベイスターズの主戦・井納 翔一投手。豪快な大型ピッチャーのイメージが強いが、プロ入りは26歳。順風満帆ではなかったこれまでの野球人生、成功の秘訣にはシンプルで根本的、だからこそ見失いがちな一つの哲学があった。

喜びと感謝

井納 翔一投手(横浜DeNAベイスターズ)

 おそらく、現在プロ野球界に身を置いている選手の中でも野球ができる喜びを最も感じている一人なのではないだろうか。
「僕はアマチュア時代に、プロ野球で使用されている全部の球場でプレーしたい、というのが目標でした。社会人野球だと大会で地方球場も結構使うんです。実際、東日本だけなら[stadium]西武ドーム[/stadium]以外、全部行ったかな? いろいろと楽しい思いはしてるんです(笑)」

 当事者にしかわからないことだが、生活がかかるプロ野球の世界で、純粋に野球ができることに喜びを感じるということはそうそうできないはずだ。では、横浜DeNAベイスターズで主戦投手を務めている井納 翔一投手は、なぜ今野球ができていることに喜びを見出せるのか。

木更津総合高校時代の五島卓道監督も、いま部長になられた青山茂雄先生も気さくに声をかけて下さる。上武大学時代の谷口 英規監督もかわいがってくださるし、NTT東日本時代の監督も、今は変わってしまいましたけど、ピッチングコーチとは食事に行ったり…。こんな僕でも見てくれる人、心配してくれる指導者がいますし、だから少しでも長くできればいいなと思うんです」

 これまでお世話になった人の話になると、とても丁寧な言葉遣いになる。本人は「いろいろと楽しい思いはしている」と語ったプロ以前。しかし一方で、プロで活躍するに至るまでには、投手人生がいつ終わってもおかしくないほどギリギリの境遇を経験してきた。

「どういう状況で野球が変わるかはわかりません。甲子園に行けなかったとしてもプロに行けるかもしれないし、逆に甲子園に行けてもプロに行けるわけでもない。なにが起こるかわからないですよ」

 ひょっとしたら野球ができなくなるかもしれない。1日でも長く野球を続けたい。

その気持ちが井納投手を現在の地位にまで押し上げた。だから、野球ができている今に、そして面倒を見てくれた人たちに対する感謝が消えることはないのだ。

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夏、勝てる投手になるためのプロセス
[page_break:スタンドから参戦した甲子園]

スタンドから参戦した甲子園

井納 翔一投手(横浜DeNAベイスターズ)

 井納投手は東京都江東区出身。小学校に入学する前には野球を始めていたという。小学校時代に全てのポジションを経験。ピッチャーのポジションに固定したのは、中学時に入った軟式の大島クラブ時代からだ。
「決して強豪チームというわけではありませんでした。一個上の代も、僕らの代も都大会で敗退しました」

 一個上の先輩が4~5人進学したのが千葉の木更津総合高校。井納投手もその流れに沿う形で同校へ進学した。
「高校時代は、どちらかというとストレートで押すタイプでした。とはいえ、ストレートの球速が速いわけではなかったんですが。真っ直ぐとスライダーが組み立ての中心で、カーブもありましたけどそんなに投げず、フォークは落ちなかったので」

「問題児でしたからね、僕は(笑)。ほんとくだらないことで怒られてばかりでした」と振り返る高校時代。2年夏木更津総合は甲子園出場を果たす。しかし井納投手はベンチ入りできずスタンドでの応援で声を枯らした。

 そして主戦となった3年夏は、千葉県予選準決勝で千葉経大附に敗れてしまう。この[stadium]千葉マリンスタジアム[/stadium]での最後の試合が最も思い出に残っているかといえば、違う。

「千葉マリンで投げたこともいい思い出になりましたけど、最も思い出に残っているのは4回戦の市立船橋戦(2対1で勝利)。その年の優勝候補といわれていた市立船橋と前年優勝校のうちとの試合ということで注目を浴びて。試合会場が[stadium]市原臨海球場[/stadium]だったのですが、後から聞いたところによると、できて以来の超満員だったとか」

 満員に膨れ上がった球場で投げ勝ったが「守備にも助けられながら勝った」という記憶だという。

 井納選手のインタビュー後編では、大学・社会人時代のお話から、球児たちへのメッセージまで語っていただきました。お楽しみに!

(インタビュー・文/伊藤 亮

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夏、勝てる投手になるためのプロセス

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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