駒込高等学校(東京)【前編】
「人間力」育成への難産行路
2013年秋の東京都大会を制し昨年のセンバツ出場、2回戦で明徳義塾と互角の戦いを演じた関東一。が、秋の大会初戦となった駒込戦は苦しい試合展開だった。7回までに1対3の2点ビハインド。8回の3得点で逆転を果たした関東一だったが、この試合をきっかけに「駒込」の名は一躍注目を浴びるようになった。
そんな駒込は、その後も強豪・帝京と接戦を演じるなど強豪校相手に健闘を続ける。今回は昨秋から半年間の取り組みと、最後の夏へ向けての意気込みを語っていただいた。前編は今年2月、衝撃の「1年生主将就任まで」を綴る。
名門での学びを「人間力」に変える
シートノックシーン(駒込高等学校)
「欽ちゃん」こと芸能人の萩本 欽一氏(2008年インタビュー その1・その2)を輩出したことで知られる駒込。学校のグラウンドは内野ほどの広さしかなく、トレーニングや連係プレーなどの練習が制限されるため、木・金曜の週2回は埼玉県三郷市にある野球場で実戦的な練習を行う。取材日の練習はちょうど三郷市での練習。マシン打撃、シートノックと広いスペースを使って実戦的な練習ができていた。
「週2回このような環境でできているので、感謝ですね」
こう語るのがチームを率いる金丸 健太監督。その経歴は輝きに包まれている。
名門・世田谷西シニアでは左腕・中林 伸陽(慶応-慶応大-JFE東日本)と一緒にプレー。東海大相模(神奈川)では、角 三男(元巨人)の子息・角 一晃(白鴎大-香川オリーブガイナーズ)と同期。その後は国際武道大のランナーコーチャーやチームスタッフとしてチームを支えてきた。
国際武道大では「野球は修行の場」と岩井 美樹監督に叩き込まれた金丸監督。よって駒込では「人間力の向上」にもこだわる。では、金丸監督がいう人間力とは?
「どんなことでも手を抜かないことですね。野球をやる時間よりも学校にいる時間、家庭にいる時間がずっと長い。そこで手を抜いてほしくないですね。それができてこそ、勝てる選手、勝てるチームになっていくと考えています」
金丸健太監督自身も大学時代、そうだった。学校がテスト期間になれば、「自分は野球の勉強の時間」ととらえ、指導者が集まる場所があれば、そこに駆けつけ、指導の引き出しを増やしてきた。
2014年、夏までの手ごたえも。そして……
ノックを打つ金丸 健太監督(駒込高等学校)
2013年秋・関東一戦での学びをいかし、技術的にも精神的にも磨きをかけて迎えた2014年。春は本大会2回戦で帝京に2対4と善戦。夏4回戦における再戦でも1対6で敗れたが、駒込は甲子園を狙える強豪校相手にも対抗ができるチームとして存在感を示していた。
だが高校野球の難しさは、夏が終わればチームが変わり、強さを維持できないこと。昨年のチームの主力のほとんどは3年生で、いわば0からのスタートであった。秋では代表決定戦で上野学園に3対4で敗れ、本大会進出はならなかった。
この時のチーム状態を金丸監督は「能力がないのに、まとまろうとしない。難しいチーム状態でしたね。キャプテンが4人も入れ替わりましたから」とチーム状態が良くなったことを明かしてくれた。ようやくまとまったのは2月から。まとまったきっかけは、金丸監督が当時1年生の関根 友太をキャプテンに据えたことである。
異例中の異例となる「1年生主将」。が、このショッキングな出来事をきっかけにチームは再び上昇気流に乗る。後編ではその過程を主に選手の証言から綴っていく。
(取材・写真=河嶋 宗一)