Column

強いチームは上級生から積極的に動いている

2016.02.26

遠藤友彦の人間力!

「本氣で覚悟を持って決断すれば、必要なものは自然と揃ってくる」

 中途半端な心で練習をしていても身につく力はそんなにありません。「どんな練習をすればチームは強くなりますか」という質問を選手から受けますが、指導者を含めて大抵の人たちは練習内容に意識が向きます。

練習内容以上に大切なこと

 でも思います・・

 練習内容(何をするのか)も大切なのですが、それよりも大事なのは本氣でやるということです。基本的な反復練習でも本氣モードで行えばたくさんのものが身につきます。本格的シーズン前だからこそ、本氣が求められます。他チームとの練習試合禁止期間だからこそ、本番感覚の練習ができるかどうか。

 本氣とは何か・・

 本氣でやればほとんどの問題が解決します。本氣の集団は、自ら考え必要だと感じたことは即行動に移します。誰かに任せることなく、積極的に動いていきます。

本氣じゃないチームは、様々な問題を抱えます。チーム内での不協和音、何かをなすりつけて目前の仲間に責任があると自己主張します。自分以外の選手に矛先を向けて、マイナスの言葉を連発します。
 

 先日、関東の大学を指導しました。午前中はお話、午後は技術練習レクチャーという一日です。午前中に会場設営を選手がしていましたが、上級生が動かずに下級生が動いていました。勝てないチームの典型です。

上級生が率先して本気を見せる(写真はイメージ)

 このコラムを見ているチームも、上級生が楽をして下級生が動いていることも多いのではないでしょうか。勝てるチームは、上級生が積極的に動きます。面倒なことを下級生に押し付けることなく、上級生が大変なことを自ら受け入れて行動しています。

 その姿を下級生が見て上級生に対して尊敬の念を持ちます。
「自分も上級生になったら先輩のようになりたい」

 下級生が上級生に憧れを持ち、自分が上級生になったらやってもらったので次は自分たちがやってあげるという心になります。上級生が率先して大変なことを実践していくような風土があるチームは、チーム内の「ヤキ」はありません。

 先輩が怖い・・というチームは、チーム全体としての絆が生まれません。下級生は上級生の悪口を言い、「早く引退しないかな」と思っていることでしょう。

 言うことを聞かせるために厳しくヤキを入れるのは下策です。恐怖感を植え付けて行動させるのは自分の力がないことを証明しているようなものです。厳しくしなくても上級生が見本となる言動を繰り返ししていれば、下の者はその姿をみて「そうなりたい」と自然に思うことでしょう。

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[page_break:自分がやれば、自分が成長する]

自分がやれば、自分が成長する

浅井 洸耶選手は敦賀気比で、下級生のプレー環境を整えた

 力でねじ伏せるのはレベルの低い人がやることです。自分の姿勢を見せて、自然に動かせることができる人はレベルの高い人です。

 なぜ、先輩が面倒なことを後輩に押し付けるのでしょうか・・

 それは自分がやらされてきたからです。自分が下級生のときにやったのだから、上級生になれば「楽ができる」と考えます。ここで自分たちの代から「上級生がやる」という流れにしたら、自分が損をするという意識が芽生えます。面倒なことをしたら損をするという考え方は子どもです。

 大変なこと、厳しいことをすればするほど自分が成長します。昔の人は「苦労は買ってでもしろ」と言ったものです。下級生のときに厳しいことをして、上級生のときにも厳しいことをする。これほど自分のためになることはありません。喜んで今までの流れを変えればいいのです。

 これから新人が入部してきます。右も左も分からない新入生、余裕のない新人に仕事を押し付けるのはレベルの低いチームです。新人は環境に慣れていないので必ずバタバタします。バタバタしている選手に、仕事を与えればバタバタは倍増するのは当然です。

 帝京大学ラグビー部は、大学選手権大会にて七連覇をしています。高校野球でいえば、甲子園全国大会七連覇です。最強を毎年こえるようなチーム作りができている帝京大学。150名くらいが合宿所で過ごしていますが、上級生が率先して大変なことを行います。入部したばかりの新入生は余裕がないので、雑用をやらせることなく厳しいことを受け入れます。

 強いチームは、選手同士の強い絆が結ばれています。後輩は先輩に対して敬意をはらいます。先輩は見本であり、憧れの存在です。帝京大学ラグビー部に「損をする」という感覚はありません。後輩に楽をさせるという感覚もないと感じます。

 自分がやれば、自分が成長する・・・

 強いチームにはそれなりの理由があります。上級生の本氣を見せれば、下級生は自然についていきます。背中を見せて引っ張ることができる上級生がいるチームは強いのです。

 高校野球児は、こうなんだという格好いい背中を新入生に見せたいものです。厳しいことを率先して上級生が行い、チームに早く馴染めるようにしてあげるべきです。
このコラムを読んでいる上級生。自分がやれば損と思うのか、自分たちがチームを変える潮目になると思うのか・・厳しいを積極的に受け入れて自分を成長させたいと思う選手が増えることを願います。

(文=遠藤 友彦


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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