東亜学園vs岩倉
小野、鈴木翼猛打賞の活躍、東亜学園ご近所対決を制す
先発・藤下(東亜学園)
岩倉のグラウンドは西東京市。東亜学園のグラウンドは小平市。練習場が西武新宿線沿線で近く、手の内を知っているチーム同士の対決。
この日は強風が吹き荒れ、試合開始の頃には、雨も強く降っていた。それでも、グラウンドに水がたまるようなことはなく、試合進行には支障がなかった。
東亜学園の先発は、背番号19ながら、秋までは主戦投手であった左腕の藤下 凌也。「この1週間ボールが来出した。相手は左打者が多いこともありますから」と、東亜学園の上田 滋監督は、藤下を先発起用した理由を語る。
しかし立ち上がり、藤下はどうもピリッとしない。
1回表、四球で出塁した岩倉の2番安田 拓矢を、藤下は左投手独特の牽制で誘い出したが、一塁への送球がワンバウンドに。一塁手が捕れなくもなかったが、球をそらしている間に、安田は三塁に進んだ。さらに3番山田 航大にも四球で一死一、三塁。4番涌井 和人の右前安打で、まず安田が生還。さらに右翼手の失策もあり山田は三塁に進んだ。続く5番今野 宏洋は遊ゴロ。山田が本塁を突いてセーフ。初回に岩倉は2点を入れた。
一方岩倉の先発は、この大会好投を続けている市川 幸輝。市川も立ち上がりがピリッとしない。1回裏東亜学園は、四球の1番池添 輝信が2番小野 公平の犠打に二塁に進み、4番鈴木 翼のピッチャー返しの中前安打で1点を返す。
しかし2回表、この大会好調の岩倉の1番伊勢 海星がライトスタンドに本塁打を叩き込み、突き放す。伊勢はこの大会、3本目の本塁打だ。「これまで振り込んできた成果だと思います」と語る伊勢。元は右打ちだったが、1年生の時、監督に勧められて左打ちにし、最初は戸惑いもあったが、新チームになった頃から、打てるようになったという。「左の方が、ボールがよく見えます」と伊勢は言う。
それでも、東亜学園も反撃する。2回裏ライトオーバーの三塁打で出塁した8番佐藤 文哉を、藤下に代わる代打・片岡 蓮の中犠飛で還して、再び1点差に戻す。
伊勢(岩倉)
藤下は代打が出たことで降板。「藤下も悪くはなかったです。ファーストやライトのエラーもあり、リズムに乗れなかった」と上田監督は、語る。続いてマウンドに上がったのは、上田監督が藤下同様、「球が来るようになった」と語る鈴木 裕太。鈴木裕は先頭打者にボール先行で苦しんだが、三振に切って取ると、一気にリズムに乗り、流れを東亜学園に持ってきた。
3回裏三塁打を放ったこの回先頭の2番小野は、続く北澤 健一の投ゴロに飛び出して、三本間に挟殺されたが、4番鈴木 翼のレフトオーバーの二塁打でまず同点。5番土岐 大聖の右前安打に続く、6番平野 智也の詰まった当たりの左前安打で逆転に成功した。
さらに6回裏には、左翼手の失策で出塁した鈴木 裕を、2番小野が右前安打で還し1点。この日小野は、三塁打2本を含む3安打と、大当たりであった。
7回裏には二塁打で出塁した鈴木 翼を、佐藤が左前安打で還し、東亜学園はさらに1点を追加した。
主将でもある鈴木 翼は、この日二塁打2本を含む3安打。佐藤は8番打者ながら、三塁打1本を含むマルチ安打の活躍であった。
「同じ打者にあれだけ打たれたら、やられます」と、岩倉の豊田 浩之監督が言うように、小野、鈴木翼、佐藤らの安打で東亜学園に流れが来て、得点に絡んでいった。
一方東亜学園の鈴木 裕は、走者を出しても得点は許さず、9回表も、当たっている伊勢を投ゴロで打ち取ると、続く2人を三振に仕留め、6対3で東亜学園が勝利した。
敗れたとはいえ、岩倉は秋4強の東海大高輪台に圧勝するなど、この大会の台風の目になった。市川投手の好投や、打線の活躍など、「収穫はありました」と豊田監督が語るように、夏につながる戦いができた。あとは、「市川に次ぐ、2番手以降の投手を育てないと」と豊田監督。この大会活躍した伊勢も、「これからマークが厳しくなってきます」と、さらなるレベルアップを期した。
勝った東亜学園は、これで夏の大会はシード校の象徴である四隅のシードが決まった。練習拠点が小平市にある東亜学園にとって、移動などを考えても、神宮球場で試合ができるメリットは大きい。
次の相手はまだ決まらないが、「普段の練習も手を抜いているわけではありませんが、長い大会を戦うと、緊張感を持って練習ができます」と上田監督。緊張感のある練習を通して、この半月ほどの間にも、チーム力は確実に上がってきている。
(取材・写真=大島 裕史)
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