試合レポート

大阪桐蔭vs汎愛

2016.10.03

先発負傷のアクシデントをものともせず。周到な準備と集中打で大阪桐蔭がコールド勝ち

大阪桐蔭vs汎愛 | 高校野球ドットコム

投手・香川麗爾(大阪桐蔭)

 先発マウンドに上がった両投手に対する指揮官の思惑は正反対だった。

 汎愛の先発マウンドを任されたのは背番号20の1年生、羽田野 温生(1年)。先発を告げられたのは前日の試合後だが、井上 大輔監督の中では「大阪桐蔭戦から逆算して、ぶつけようと思ってました」と前々から構想を持っていた。羽田野は逃げずに向かって行く攻めの投球を披露し、序盤2回を1安打無失点。最も自信のあるストレートで押し込みファールを打たせる場面も多く見られる一方、ストレートを狙われないよう捕手の杉本 陽介(1年)は変化球も散りばめたリードを心掛けていた。

 大阪桐蔭横川 凱(1年)が先発する予定だったが、試合直前にマメを潰し登板を回避。急遽、香川 麗璽(2年)がマウンドに上がった。ただ西谷 浩一監督は初回のピッチャーライナーによる負傷降板などに備え、常に先発投手とは別にアクシデント要因としてもう1人投手を準備させており、香川もノック中に軽く肩は作っていた。「心の準備は出来てました」という香川は下級生の頃から経験を積んでいることもあり今大会は初登板ながら緊張することもなく、力強いストレートで汎愛打線を牛耳っていく。

 最初に大きなチャンスをつかんだのは汎愛。3回に杉本、成松 和(1年)の連打と加角 謙翼(2年)のバントで一死二、三塁するが香川の前に2番・橋本 雄士郎(2年)、3番・小松 晃朗(3年)が倒れ無得点。するとその裏、羽田野が大阪桐蔭打線につかまる。

 先頭の岩本 久重(2年)が安打で出塁すると香川は初球のバントをファールにしてしまう。しかし2球目にバスターエンドランを仕掛けると広く開いた三遊間を破り無死一、二塁。打順がトップに返り、1番・藤原 恭太(1年)が三塁線ギリギリにバントを転がすと俊足を生かして内野安打に。あっという間に満塁とし2番・泉口 友汰(2年)の適時打で先制すると、続く3番・山本ダンテ武蔵(2年)が左中間へ走者一掃の適時二塁打を放ち一気に流れを引き寄せた。


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橋本雄士郎(汎愛)

 山本はレフトの守備では汎愛の4番・浅井 一樹(2年)が放った左中間へのライナーをダイビングキャッチするファインプレーを見せ、打っては3打席連続で二塁打を放つ。

「何としても1本出したかった。小さく振り抜くことを意識して、結果的に長打になった。力は足りないんですけど、力足りないなりに何が出来るか考えてやっていこうと思ってます」
パンチ力があり3番を任されているが実は夏まではベンチ外。それほど部員数の多くない大阪桐蔭では、新チームで主軸を打つほどの選手ならば旧チームでもレギュラーかそれに近い位置でベンチ入りを果たしていることが多くいきなりの一桁背番号はかなり珍しい。「ずっとベンチ入れなくて、常に何クソという気持ちは持ってました」という山本は新チームでも当初はスタメンではなく代打からのスタートだったが、チャンスをものにし下位打線に名を連ねるようになると、8月後半には主軸の一角に。そしてこの日は3安打4打点の活躍でチームの勝利に大きく貢献した。今年の大阪桐蔭は1番を打つ藤原、前日本塁打を放ちこの日ショートで公式戦初スタメンとなった根尾 昂(1年)や先発予定だった横川ら下級生に力のある選手が多い。
だからこそ西谷監督は上級生に奮起を求める。「2年生に軸になる選手が出てきてほしい。その中で山本が出てきてくれたら」元捕手ということもあり強肩の持ち主でしかも俊足。声と元気でチーム引っ張るキャラクターも軸としてはうってつけだ。

 汎愛は5回に橋本の犠牲フライで1点を返すが得点はこの1点止まり。5点ビハインドの7回に一死二、三塁のピンチを背負うと大阪桐蔭のキャプテン・福井 章吾(2年)に前進守備の二遊間を抜ける2点適時打を浴び7回コールドが成立。昨年秋のリベンジはならなかった。

 大阪桐蔭は想定外の事態でスタートした試合も準備の周到さで影響を最小限に抑え、13安打8得点で危なげなくコールド勝ち。例年に比べると一発のある打者は少ないが、投手の豊富さと一気に畳み掛ける集中打は健在だ。

(文・写真=小中翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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