履正社vs仙台育英
竹田被安打6、失点1の完投!履正社、仙台育英に完勝
竹田 祐(履正社)
底冷えする寒さに、細かい雨。野球をするには厳しい条件の中で、近畿大会優勝の履正社と東北大会優勝の仙台育英という強豪対決が行われた。両チームの安打数は仙台育英が5本、履正社が4本と差はなく、むしろ仙台育英の方が上回っているが、四死球は仙台育英の投手陣が10出したのに対し、履正社の竹田 祐はわずか1。その差がそのまま結果となった。
前半仙台育英のチャンスは、1回表に東北大会優勝の立役者でもある1番で主将の西巻 賢二が粘った末に左前安打で出塁した場面ぐらいで、履正社の竹田の前になす術がなかった。「あれだけ上から投げ下ろされ、そのままの軌道でスライダーかフォークを投げてくる」と、仙台育英の佐々木 順一朗監督は舌を巻く。
一方仙台育英の先発、左腕の長谷川 拓帆は回の先頭打者を四球で出し、リズムをつかめない。2回表履正社の攻撃も、この回先頭の5番筒井 太成が四球で出ると、6番竹田が送り、8番松原 任耶の中前安打で筒井が還り、履正社が先取点を挙げた。
長谷川は3、4、5回も失点こそなかったが、先頭打者を四球で出し、リズムに乗れないのと同時に、球数を増やし、5回で79球を投げていた。
6回表履正社の攻撃は、先頭の2人は打ち取られたものの、6番竹田、7番片山 悠が続けて四球で出て、8番松原を迎える。最初の打席で中前適時打を打った、この試合のキーマンである。仙台育英としても、当然警戒していた。しかし、しっかりボールを見極められた末に、センターオーバーの三塁打を打たれ、2人が生還。履正社が試合の主導権を握った。「カーブが抜けてしまいました。真っ直ぐが入らないため、フォアボールを出してはいけないという思いがありました」と長谷川は言う。結局6回までで四球8、投球数104、失点3でマウンドを下りた。「フォームが崩れるところがありました。下半身を鍛えたい」と長谷川は反省を語った。
佐川 光明(仙台育英)
7回表からは仙台育英はオリックスの佐藤 世那に顔立ちもそっくりの弟、佐藤 令央が登板したが、1番石田 龍史に四球を与えて降板。代わった加藤 雅己は、3番安田 尚憲に痛烈な一ゴロを打たれる。これを一塁手が捕球できず、石田が生還し、安田は三塁まで進んだ(記録は一塁手の失策)。さらに4番若林 将平の左前安打で安田も還った。
ここまではいいところがなかった仙台育英であるが、若林の左前安打の後、中堅を守っていた佐川 光明が急遽登板。後続を抑えるとともに、8回も三者凡退で切り抜けた。冷え込みが厳しい中、外野手がいきなり登板しての好投は、そう簡単なことではない。
さらに仙台育英は7回裏には、5番山田利輝の中前安打に6番鈴木 佳祐の左中間を破る二塁打で1点を返した。
けれども、履正社の竹田の失点は、この1点だけ。結局被安打5、四死球1、自責点1の完投で、5対1で履正社が勝利した。
履正社の場合、寺島 成輝投手を擁して甲子園を沸かせた前の代と、どうしても比べられる。「秋の大会では、弱い、弱いと言われてきたので、しっかり練習してきました」と好投の竹田は言う。打者をめがけて投げるように意識することで、内角への制球力もついた。先輩である寺島については、「強いメンタルを持っています」と語る。また岡田 龍生監督は、「3年生は3月から伸びてきました。それが財産だと思います」と語る。履正社は体格がいい選手が多く、チームとしては成長し始めたばかり。この大会の戦いだけでなく、今後の成長が注目されるチームだ。
敗れた仙台育英は、ベンチ入りの18人全員が試合に出た。「ベンチだからとかは考えていません。後から出て子がヒットを打ちました」と佐々木監督が語るように、仙台育英の安打5本のうち、2本は途中出場の選手。途中登板の佐川や西巻も好投した。悪条件は両チームにとって同じであったが、今度は、いい状態での仙台育英のプレーをみてみたい。
(取材・文=大島裕史)
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