試合レポート

坂戸西vs都立広尾

2016.11.24

シーズン終盤、最後の試合ではさまざまなシミュレーションの試行錯誤

坂戸西vs都立広尾 | 高校野球ドットコム

坂戸西・塩野屋君

 いよいよシーズンも押し迫ってきて、高校野球として年内で大会試合が行えるのは1週間となったが、実質は祝日となっているこの勤労感謝の日と週末の土日だけということになる。

 チームによっては、11月になったら早々に対外試合はほとんど組まないで、秋季大会での課題修正や筋力トレーニング中心で、試合も紅白戦程度というところもあるという。とはいえ、今の時代は、「経験値を積むという意味からも、少しでも多く試合を経験させてあげたい」と考えるのが常だ。そういう思いもあって、1年生大会を開催したり、地域の交流大会を任意で組んだりというところも多い。

 部員が多い坂戸西も、この日は1年生交流大会が別途に組まれていた。そして、2年生主体のチームは、別に自校グラウンドではこのところ定例になっているという都立広尾との交流試合を行った。これは、日体大で野中 祐之監督と同期だった梨本 浩司前監督(現文京監督)の時に組んでいたものだ。以来、梨本監督を引き継いだ平原 敬大監督となっても、そのまま継続されている顔合わせである。若い平原監督は、「ボクなんかは、まだまだそんなに多くの先生方とつながりを持てているわけではありませんから、こうして梨本先生が作っておいていただいたつながりというのは非常にありがたいです」と言う。

 ことに、都立広尾の場合は、東京都渋谷区という都会のど真ん中にあり、グラウンドは内野もろくに取れない程度の狭いところである。勢い、日々の練習はティバッティングなどの個人練習が中心となってしまう。それだけに、可能な限りは試合をしながら実戦での感覚を学んでいきたいというのは本音でもある。だから、坂戸西のようなグラウンドのしっかりととれる学校へ訪問するのは楽しみでしょうがないという。試合前のシートノックも、極力多くの時間を割いて、ことに中継プレーなどは、入念に行うようにしているという。また、野中監督も、そうした東京のチームに対して、協力的にグラウンドを提供してきている。こうした関係を築いていくことで、指導者の異動などがあったとしてもまた次へと繋がっていくという形がよりスムーズにもなっていく。

 実は、高校野球の本当の素晴らしさは、こうしたそれぞれの学校が協力し合いながら、お互いの中で苦労を話し合ったり、工夫していることを話し合い、相談していきながら、交流を深めていくところにもある。また、そうした場面に遭遇すると、これらはすべてのビジネスの現場などとも同じなんだなという気もする。

 会社もそうだけれども、それぞれの立場や環境というものがあって、それはそれぞれに異なる。だから、一概にこうでなくてはいけないと言えるものなどはない。そうした中で、今の自分たちには何ができるのか、また、今目指したいことをしていくのには、何をどう工夫していったらいいのか…、そういうことを現実を踏まえて思案していく。そういうことも、大切なのではないだろうかと改めて思う。


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センスの光った広尾・村田君

 坂戸西では、この1年生たちから練習用のユニホームのデザインをマイナーチェンジした。フロントラインを肩からの2本ラインに変更したのだ。これは、「写真とか、動画で見たときにラインの動きを見て、肩の開きや突込みが、より分かりやすいので修正しやすい」という野中監督の発想からである。

 野中監督は、アイデアマンで、これまでも、さまざまなことにトライしてきていた。ボール一つ外すためのホームベースだとか、イレギュラーバウンドに即対応するためのボールだとか、まるで遊び感覚でいろいろなものを発案したりもしている。そうした中での工夫などをまた、他の指導者たちにも披露して、それがどうなのかというアドバイスなども仰ぐようにしている。

 また、男子バレーボール部や陸上競技部なども強豪で部活動の盛んな坂戸西は、学校内に宿泊施設もあるが、毎年、3月の春休みの時期には東北や北信越などの寒冷地の学校が訪れて、宿泊しながら関東各地へ異動して試合を組むための拠点として提供するということもある。そうした共存共栄の中から、少しでもいい成果を挙げていこうという姿勢で日々取り組んでいる。

 そして、相手校の選手でも気がついたら、褒めたりアドバイスをしたりということも欠かさない。この日も、都立広尾の遊撃手村田君に関しては、「素晴らしいセンスですよ。今の時期であれだけのプレーをする内野手は、そんなにいませんよ。ウチのグラウンドはショート付近が少し跳ねるんですけれども、そのあたりも上手に対処していたし、捕ってからも素早い。是非、上(大学など)でも続けるように指導した方がいいよ」と、高く評価していた。

 また、自分のチームに関しては、「今、秋のエースだったのがちょっと故障しているんですけれども、2試合目に投げた二人の投手が投げ方を少しサイド気味に変えたところだったんですよ。だから、それでどこまで投げられるのかなというところは、確認してみたかったというところはありました」と、いう思いもあった。また、失敗したが、一三塁という場面では、一塁走者がどのタイミングでどのように走って、相手野手を揺さぶるのか、そんなことにも挑戦していいた。こうして、それぞれの中でのテーマの確認にも余念がなかった。

 シーズン押し迫った練習試合。来季へ向けて、それぞれが秋季大会での課題の確認や修正点が上手くできているかどうかということを見ていく場でもある。そして、それらを見てまた反省しながら、冬場のトレーニング鋪過ごして来るべき春を待つのである。

(取材・文=手束仁

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・2016年秋季大会特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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