試合レポート

市立川越vs上尾

2017.09.30

太賀、和田の二枚看板擁する投の市立川越が4年ぶりの関東へ

市立川越vs上尾 | 高校野球ドットコム
太賀(市立川越)

 取れる時に点を奪わないと得てして野球はこうなってしまう。そのお手本のような準決勝第二試合であった。

 準決勝第二試合は太賀龍丈(2年)、和田の二枚看板で聖望学園や優勝候補筆頭のAシード・浦和学院破り勢いに乗る市立川越対エース木村歩夢(2年)の頑張りもあり、秋は34年ぶりのベスト4進出を果たした古豪・上尾という公立校対決となった。試合は第一試合とは打って変わり1点を争う投手戦となった。

 先発は市立川越が太賀、一方の上尾は木村と、両エースが登板し試合が始まる。ちなみに木村は昨日から連投となる。試合は総じて上尾ペースであった。その上尾に初回から大きなチャンスがやってくる。

 上尾は初回、太賀の立ち上がりを攻め立て、先頭の小川竜太朗(2年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く門倉がきっちりと送り一死二塁とする。ここで3番・日野吉彬(2年)がレフト前ヒットを放つが、三塁コーチャーはやや暴走気味に本塁へ突入させ二走・小川は本塁憤死してしまう。それでも上尾は続く村上達也(2年)がレフト前ヒットを放ち二死一、二塁と再度チャンスメイクすると、5番・原翔も四球を選び二死満塁とチャンスを広げる。だが、後続が倒れ得点が奪えない。結局この回3安打1四球を集中させたが無得点に終わる。

 これで息を吹き返した太賀は、2回以降は立ち直りMAX130km前後ながら角度のある直球と落差のある縦スライダーを武器に上尾打線を封じていく。

 だが、5回以降もチャンスを掴んだのは上尾であった。打線が徐々に太賀を捉え始め毎回のようにチャンスを迎える。

 まず5回表、一死から8番・原勇がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く内山がきっちりと送り二死二塁とする。だが、1番・小川が歩かされると後続が倒れ無得点に終わると、6回表には一死から4番・村上達が右中間へ二塁打を放ち出塁するが、後続が倒れ得点が奪えない。

 7回表には、一死から8番・原勇がレフト前ヒットを放ち出塁するという5回表のリプレーのような展開となる。だが、上尾ベンチは策を変えない。結果、続く内山がきっちりと送り二死二塁とすると1番・小川が歩かされ二死一、二塁とここまでは5回表のリプレーだ。だが続く門倉の所で高野監督が動く。代打・松山を送るが、頼みの松山は凡退しまたしてもチャンスを逸する。


 上尾は8回表にも二死から5番・原翔がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く木村もレフト線へポトリと落ちる二塁打を放ち二死二、三塁とする。さらに7番・中野も死球を選び二死満塁とチャンスを広げるが、後続が倒れ5度目の先制機を逸する。

 すると、ある種当然ではあるが流れは市立川越へ傾く。

 これまで上尾・木村のキレが良く制球されたスライダーに苦しめられ僅か1安打に抑えられていた市立川越打線がこの試合初めてチャンスを掴む。8回裏、この回先頭の瀬良がレフト越えの大きな飛球を放つ。途中から代わっていたレフト日下が一歩目の判断を誤り二塁打にしてしまい無死二塁と市立川越に願ってもいないチャンスが生まれる。続く島田悠がきっちりと送り一死三塁とし、8番・太賀を迎える。太賀は木村のスライダーの失投を逃さずレフト前へタイムリーを放つ。市立川越がついに0対0の均衡を破った。

 ピッチャーにタイムリーを打たせてはいけない。これで勢いに乗った太賀は最終回をきっちりと抑え、市立川越が前日同様にワンチャンスを物にし、1対0で勝利し関東大会へ駒を進めた。

 まず市立川越だが、新人戦初戦で所沢中央に敗れるなどこの代は決して前評判の良いチームではなかった。だが、県大会初戦で聖望学園を破ると勢いに乗った。結果、右の太賀と前日浦和学院を完封した1年生左腕・和田と左右の二枚看板が誕生した投手力は充実している。問題は打線であろう。前日もこの日も3安打と湿っている。旧チームは3年生中心であっただけに、ある程度しょうがない部分もあるが、関東大会では投手陣が打ちこまれる可能性も拭えないだけに、特に上位打線の奮起に期待したい。

 一方の上尾だが、一方的に押していただけに痛恨の敗戦であろう。エース木村も連投で悪い流れの中良く投げていた。この試合残念だった点が2点ある。まず1点は、初回のサードコーチャーの判断だ。レフトが打球を取った時点でタイミングはレフトの送球が乱れればというかなりギャンブルに近いタイミングであった。まだ初回であり自重していれば、一死一、三塁で4番という状況であっただけに無理をする場面ではなかった。初回に1点を取っていれば、その後チャンスでも硬くならずスムーズな試合運びが出来ていた可能性があるだけに実に惜しい判断ミスであった。

 もう1点は7回表、一死一塁リプレーのような状況で、同じように犠打という選択をしたことだ。ベンチも送れば次打者・小川が歩かされることは重々承知であったはずだ。結果はどうあれあの場面はリスクをかけチャンスで小川という場面を作るべく別の選択肢を考えて欲しかった。とはいえ、上尾も新人戦で早大本庄にコールド負けを喫するなど決して前評判の高いチームではなかった。

 そんな中、木村の踏ん張りに、小川を中心とした打線も応えBシード・春日部共栄を破るなどこれまでの戦いぶりは見事であった。それだけに34年ぶりに逃した魚は大きい気もするが、とりあえず来春地区大会の免除と北埼玉県大会の上位シードも濃厚だ。今後二番手以降の投手の育成という課題は残るが、今夏の浦和戦敗戦のショックを払拭すべく古豪復活へ確かな足がかりは築けたのではなかろうか。

(文・写真=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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