試合レポート

神村学園vs鹿児島実

2017.10.07

ぶれない心で死闘制す!・神村学園

神村学園vs鹿児島実 | 高校野球ドットコム
15回表 神村学園・金城が勝ち越しのタイムリー

 神村学園鹿児島実。春の決勝でも対戦し、九州大会でも頂点を争った両巨頭の対戦は、最後の最後まで目の離せない死闘が4時間半も続いた。

 中盤までは神村学園が圧倒的優位に試合を進めていた。3回、4番・阿次富雄大(2年)の右中間を破る2点タイムリー三塁打に暴投で先制。4回に1点を返されたが、5回に3点を加える。

 無死一塁から2番・金城伶於(2年)がバントと見せかけたヒッティングで左中間を破り、捕逸、5番・渡邉陸(2年)のレフト前タイムリーで神村学園のワンサイドゲームになるかと思われた。

 7回、鹿児島実は一死二塁から8番・岩下丈(2年)のレフトオーバーのタイムリー二塁打で反撃の口火。1番・山下馨矢(2年)の打球はセカンドの正面でイレギュラーするラッキーなタイムリーとなり、代打・中島翔(2年)は左中間を破る2点タイムリー二塁打を放って、一気に1点差に追い上げた。

 8回二死二塁から8番・岩下がセンター前タイムリーを放ち、同点に追いつく。投げては5回途中からリリーフしたエース吉村陸矩(2年)が6回以降は神村学園打線に三塁を踏ませない力投で終盤は完全に鹿児島実ペースに引き込んだ。

 9回は先頭打者が出塁。10回は二死二塁、11回は二死満塁とサヨナラのチャンスがありながら、金城、中里琉星主将(2年)の継投の前にあと一本が出ない。

 回は15回を迎え、引き分け、再試合がちらつき始めたとき、神村学園が目覚める。二死満塁から2番・金城が執念の内野安打で勝ち越し。3番・羽月がライト前2点タイムリーを放ち、3点を勝ち越した。

 その裏、エラーとヒットで無死一、二塁と鹿児島実も最後の粘りをみせるが、9番・吉村のセンターフライで神村学園は見事な連係プレーで三塁へのタッチアップを阻止。最後は中里がレフトフライに打ち取って2季連続の優勝を決めた。


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延長15回を戦った両校ナイン

 終盤の劣勢を踏みとどまり、最後のワンチャンスに畳みかけた神村学園が劇的な勝利をものにした。小田大介監督は「一喜一憂しない。1つずつアウトを取っていく。ぶれない心で最後まで戦う。この3つを選手たちが最後までやり切ってくれた」と選手の頑張りをたたえた。

 中盤までは優位に進めていたが、7回に1点差まで詰め寄られたのは、暴投やエラーなどのミスが絡んだためだ。先発の金城、リリーフしたエース中里主将、夏の甲子園を経験した両右腕を交互に継投させながら、何とか反撃をかわそうとするも同点に追いつかれ、終盤の流れは完全に相手にあった。

「ミスが出るのは仕方がない。肝心なのは下を向かずに攻める気持ちを持てるかどうか」と小田監督。7回に悪送球したショート羽月だったが「みんながカバーしていこうと言ってくれて気持ちが切り替えられた」。エラーした後でも「自分の所に打たせろ!」と強い気持ちで投手に声を掛けることができた。その姿勢が15回の貴重な追加点となるタイムリーにつながり、その裏の守備でセンターフライからの中継プレーで三塁へ好送球し、二走の進塁を阻止して併殺を取るビッグプレーを生んだ。

「2017年の救世主」と小田監督が呼ぶ金城は15回表、それまで3三振と打てなかった鹿児島実のエース吉村から貴重な勝ち越し内野安打を打っている。スライダーに全くあっていなかったが「自分が打たなければ勝ちはない」追い詰められた状況で「周りの声が聞こえて、楽しめた」という。ファールで粘り、泥臭く三遊間深くに転がすことができた。

 延長11回裏、2度目のリリーフに上がった中里は二死満塁、絶体絶命のピンチだったが「怖がっていてもしょうがない」と好打者・原口大史(2年)をピッチャーフライで打ち取った。

 夏の甲子園の明豊(大分)戦、延長12回で3点勝ち越しながら、その裏二死からまさかの逆転負けを喫した敗戦の教訓が随所に生きているのを感じた。その時のマウンドにいた金城は「どんな展開でも0対0のつもり」でいることができたという。

 3点勝ち越した後の15回裏、「最後まで投球に集中できた」と中里主将。死闘を制し「自信になる勝ち方ができた」(中里主将)が「まだまだこんな野球では上で通用しない。もっと成長してまた甲子園で野球をしたい」(金城)と冷静に次を見据えていた。

(文=政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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