試合レポート

習志野vs佐倉

2018.09.29

山内翔太の独り舞台!1安打完封&4安打の活躍でベスト8!

習志野vs佐倉 | 高校野球ドットコム
先発・山内翔太(習志野)

 習志野佐倉の一戦。佐倉千葉経大附を破り勢いに乗っているが、試合は習志野の試合巧者ぶりを発揮する。

 習志野に流れを呼び込んだのは先発左腕・山内翔太だった。ストレートはほぼ110キロ台、スライダーは100キロ台、カーブは100キロ以下と全く速くない。だから打てそうと思うだろう。だが、山内がうまいのはそこからである。投球はほぼ外角。ほとんど低めに集まり、フルスイングできる球がない。またスイングして若干芯を外すところに投げているので、ことごとく内野ゴロ。まずリズムよく三者凡退に打ち取ると、習志野は1回裏、2番小澤の二塁打からチャンスを作り、3番根本翔吾(2年)の中前適時打で1点を先制。さらに一死三塁となって、4番高橋一翔(2年)の内野ゴロの間に2点目。2回裏にも2番小澤の適時打で3点目を入れた。

 佐倉の先発左腕・齋藤正貴はこの時期の公立校左腕としてはなかなかの実力。左腕から投げ込む直球は常時125キロ~128キロとボールの角度もあり、回転数も高い。さらに120キロ前後のスライダー、100キロ台のカーブを投げ、スライダーを低めに集める。ピッチングの精度はかなり高いのだが、甘く入ったボールをしっかりとコンタクトする習志野の対応力は見事だった。齋藤は本調子ではなかったのか、3回で降板した。

 習志野は4回裏にも、スクイズで1点を追加して、4対0。5回裏には二死二塁から7番角田 勇斗(1年)の左前適時打で5点目を入れた。


習志野vs佐倉 | 高校野球ドットコム
先発・齋藤正貴(佐倉)も楽しみな左腕だ

 山内はすいすいと投げていき、スコアボードに0が刻まれていく。山内はとにかくピッチングのテンポが速い。捕手からボールを受け取ったら、4秒~6秒ぐらいで、投球動作に入る。こういう投手に対しては以下にリズムを崩させ、自分の間合いにさせないことが鉄則だが、佐倉打線は早打ちを繰り返し、得点ができなかった。山内は打者心理が分かっているのだろう。テンポの速いピッチングをする千葉県の投手の代表例といえば、侍ジャパンU-18代表の野尻幸輝木更津総合)だ。彼もこう語る。
「自分も打者だと、速いテンポの投手の方が打ちにくいし、守る側からしてもリズムが作りやすい」といっていたが、まさに山内のピッチングはそれを実践したピッチングだった。試合は7回裏、二死二、三塁の場面で打者は山内。山内は一塁強襲安打。二者生還し、7回コールド勝ちで習志野がベスト8進出を決めた。

 山内は7回を投げて1安打完封。さらに打っても4安打とまさに独り舞台だった。山内は広角に打ち分けるバットコントロールがうまく、さらに走塁もうまく将来性は完全に野手。これほど技巧を凝らしたピッチングを見ると、彼の野球センスの高さは一級品といえるだろう。

 また今年の習志野は打力自体は県内の中では、トップクラスとはいえないが、それを補うのがランナー二塁からのベースランニング。スタートが抜群に良く、ランナー二塁からのヒットはすべて生還していた。習志野の得点力が高いのはこの走塁にあるといえる。あとは素質だけはトップクラスといえる8番兼子の打撃がどれだけ磨かれるか。山内は3番根本など左の好打者が多い習志野の中では貴重な右のスラッガータイプ。スローイングタイムを見ても2.00秒前半で納める肩の強さを持った大型捕手なだけに大化けを期待したい。

 一方、佐倉は途中まで球際の強さを見せていたが、終盤まで乱れてしまったのが痛かった。それでもこれまでの彼らの健闘が色褪せることはない。習志野と対戦した経験を春に生かしてほしい。

(写真・河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.30

突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.06.30

【夏の甲子園・近畿地区好カード一覧】京都国際 vs.京都成章、市立和歌山vs.田辺! 初戦から激戦必至

2024.06.30

【夏の甲子園・四国地区好カード一覧】いきなりビッグ右腕対決!?徳島では阿南光と生光学園が2回戦で対戦か!?

2024.06.30

北海が道内29連勝!9大会連続46回目の南北海道大会出場を決める【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!