諦めずにつかんだエースの座 平尾奎太(大阪桐蔭出身-Honda鈴鹿)vol.2
今年のドラフトでは大阪桐蔭の根尾昂、藤原恭大の2人が注目されるが、大阪桐蔭OBとして指名を期待されるのが平尾奎太(Honda鈴鹿)である。高校時代は藤浪晋太郎(阪神)、澤田圭佑(オリックス)に続く大型左腕として春夏連覇を経験している。平尾は高校時代には難病を乗り越えて、社会人野球を代表する左腕までに成長した。そんな平尾の歩みを追っていく。
すごくなった藤浪、澤田に追いつきたい思いが今の原動力
平尾奎太(Honda鈴鹿)
――間近で見てきて実際に藤浪選手や澤田選手はすごくなっていましたか?
平尾奎太 投手(以下、平尾):やっぱり差は広げられたと感じます。
―― やっぱり何年かかけて2人に近づきたい思いになったのでしょうか?
平尾:藤浪は高校でプロ、澤田は大学からプロに入って、特に藤浪は、僕が大学1、2年の時に第一戦で活躍していたので、やっぱり追いつきたいなっていうのはずっと思いながらやってきました。2人の存在は良い刺激にもなりますし、追いつきたい思いが原動力となっています。
―― 同志社大学に進んだきっかけは何かあったんですか?
平尾:病気のこともあって関西の近くの大学に行った方が良いということで決断しました。
結果的にも大学に入ってからは入院もしていたので、関東に行くより、病院に行きつつ頑張ろうと思って。やっぱり勉強の方もすごいですし、野球もしっかり力を入れているところに行きたいと思っていたところが同志社でした。
同志社大学からも欲しいと言ってもらえて、縁があって学校の指定校推薦で行くことができました。
―― 同志社大に進んで2年間は治療をしていたとか?
平尾:完全に治るまでは野球は禁止という感じで、高校の時に主治医にお願いした時に約束したので。高校3年の8月までやる代わりに、それが終わったら完治するまでは先生の言うことをしっかり聞くようにと言われて、わかりましたと。 大学の野球部もそれを理解してくれて、僕を受け入れてくれたんですよね。
[page_break:大学野球では徐々に自分のピッチングを取り戻す]大学野球では徐々に自分のピッチングを取り戻す
キャッチボールをする平尾奎太(Honda鈴鹿)
―― 3年の春からピッチングを始めた感じですか?
平尾:3年生になる前の2月くらいからですね。ピッチングを始めて1ヶ月くらいで実践に使われてメンバーに入った感じですかね。
―― その時はまだ全然戻ってないんじゃないんですか?
平尾:戻ってないですね。全然戻ってないと言うか投げてないです。対外試合の1試合か2試合くらいしか投げずに急にリーグ戦が始まったので、すぐ入るぞと言われてもまだ全然自信もないですし、でも(ベンチに)入るんやっていう気持ちはありましたね。
―― 秋からはリーグ戦初先発でいきなり完投勝利でした。
平尾:関西学院大に完封ですね。たまたまです。
―― 4年になって完全に先発投手として活躍するわけですが、高校の時より良くなってきたんですか?
平尾:そうですね。大学4年の春には同じスピードに戻っていて、結構自信を持って投げれるようになっていましたね。
―― 秋では4勝をあげてベストナインに選ばれてますが、内容自体は良かったのでしょうか?
平尾:自分的にも調子も良かったので。結構納得のいく成績だと思います。
[page_break:[page_break:成長のポイントとなったフォームチェック 自信をつかんだ都市対抗のピッチング]成長のポイントとなったフォームチェック 自信をつかんだ都市対抗のピッチング
キャッチボールをする平尾奎太(Honda鈴鹿)
―― Honda鈴鹿に入ってみてどうですか?毎年レベルが高い選手が入ってくるイメージですけど。
平尾:実際に入ってみて、施設も選手のレベルもすごいですし、教えていただくことのレベルが高くて新たな発見があります。今まで野球をしてきた中でここまで詳しく教えてもらうことはなかったので、ピッチングフォームを見つめ直すことだったり、本当に初めてのこともあって、入れて良かったです。自分の成長にストレートに繋がっていくので本当に良かったなと思います。
―― ピッチングフォームはどういうところから教わったんですか?
平尾:どうしたら良くなるかというところで、自分のダメなところ、直さないとというところです。例えば投げ終わりの時がばらつくから、そこを直さないといけないと自分では考えていたんです。
でもHonda鈴鹿に入ってきて教えてもらったのは、最後にばらつくのは最後の前にダメなところがあるからで、最後を直そうとしてもその前を直さなければ安定はしないと言われました。例えば軸足で立った時にそこでばらついていたらそこからが全部ダメになるじゃないですか。
そこで「ピッチングを巻き戻せ」と教えてもらいました。自分のピッチングを巻き戻してる時に「コマドリ」し、10個のポイントを設定したとして、10が悪かったら9も悪いだろうし8も悪いだろうし、そのダメなポイントの初めの根源を見つけることがピッチングフォームを直す近道になると教えてもらっていました。
そうして自分の中でチェックポイントを13個くらい作ったんですけど、それを自分でビデオを見たり、スローで見たりして、「ここで少し開いているかな」とかを考えられるようになりました。それで自分のピッチングを知ることができるようになったので、ここにきて本当に良かったと思います。
―― それで掴んでから1年目の公式戦、大事な試合で、日本の社会人の中で東海地区は厳しいと思うんですけどそこの2次予選で投げられたっていうのはどうですか?
平尾:二次予選初戦(5月20日)のヤマハ戦に先発を任されたっていうのが本当に嬉しいですし、そこで9回1失点で完投できたのが、自分の中でターニングポイントだったというか、一気に自信が付いた試合だったなと思います。
ヤマハの都市対抗予選までの地方大会で公式戦初先発で完投勝利をしているんですけど、やっぱり地方大会は探り探りなのでそれにかけてきているわけではないチームが多いので、抑えたけど本気じゃないだろうという風に考えていたんですけど、多分都市対抗予選の初戦というのは絶対に全力でくるじゃないですか。
都市対抗を目標にしているのが当たり前だから、そこで本気の相手に本気で戦って抑えたっていうのが嬉しかったし、自信に繋がったのでヤマハ戦がすごい印象に残っています。
―― やっぱり二次予選は緊張しますか?
平尾:いえ、二次予選の時はあんまり緊張はしなくて、こんなに社会人野球は人が応援に来てくださるんだということで、すごいワクワクした感じで純粋に楽しめました!
―― そして1年目から都市対抗出場。初戦のきらやか銀行戦では、4回からリリーフで登板し、5回無失点の好投を見せました。
平尾:本戦の方が実は緊張していて、東京ドームで2万人くらいの歓声で投げるのがすごい緊張しました。
登板前にベンチ前でキャッチボールをしていたんですけど、同級生キャッチャーの上野 敦大とキャッチボールをしていたんですけど、緊張しすぎて「上野!ちょっと来て!俺めっちゃ緊張してるんやけど」って話をしたら上野が「絶対俺の方が緊張してるわ」ってふざけてきて、「いや、試合出てないやん!」「やかましいわ」というやり取りをして緊張をほぐしてくれたので、良いピッチングができたと思います。
いつもキャッチボールをしている相手なんですけど、色々喋ってくれたり、自分が緊張してそうだなと思ったらほぐしてくれたりとか、本当に観察力が優れた同級生のキャッチャーなんです。助けられて、結果的にノーヒットで抑えることができました。
文=河嶋宗一
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